- 2021/08/11 掲載
ハイブリッドワークとは何か?具体的な導入企業は?米国に学ぶ「新旧オフィスワーク」メリット・デメリット
米国のリモートワーク割合は減少傾向
ワクチン普及に伴い、米国ではリモートワーク比率は下落傾向にあった。人材会社Indeedのチーフエコノミスト、ジェド・コルコ氏が米労働統計局のデータをまとめたところでは、2020年5月にピークを迎えたリモートワークの割合は、2021年6月には半分以下まで下がっていることが判明した。
Another sign of some normalcy: working from home down by half from the peak.
— Jed Kolko (@JedKolko) July 2, 2021
Not just compositional shifts: down by more half in mgmt/prof jobs, too. pic.twitter.com/5G53hGT4w4
米労働者全体では、2020年5月のリモートワークの割合は35%だったが、2021年6月には14%まで下落。また、マネジメント/プロフェッショナル職でも57%から27%に下落している。
一方、デルタ株の登場により、ここにきてまた感染者数も増加しており、今後、行ったり来たりを繰り返すことになりそうだ。
ツイッター社などデジタルサービスを主力とするIT企業においては、永久的なリモートワークを導入するところがあり話題となったが、大半の企業ではオフィスワーク、またはリモートワークとのハイブリッドワークを採用するところが多いといわれている。GAFAの中では、アップルもオフィスワークへの復帰を推し進めている一社だ。
それでも、日本におけるリモートワークの割合が11.6%(日本生産性本部調べ、2021年7月発表)であることを鑑みれば、依然として米国の割合は高い。つまり、米国はオフィスワークへと回帰しようとしているものの、「働き方」や「オフィスの設計」において、日本の一周先を行く存在と言える。
旧オフィスワーク vs 新オフィスワーク
こうした変化が起こる中、今米国では「リモートワーク vs オフィスワーク」という議論から「旧オフィスワーク vs 新オフィスワーク」という議論に注目がシフトしている。旧オフィスワークの典型は、個別の部屋がなく仕切りのないオープンオフィスとフリーアドレスという働き方だろう。アフターコロナの働き方において、この旧オフィスワークには安全性と生産性の2つの点で改善が必須との声が高まっている。
旧オフィスワークに見られるオープンオフィスでの仕事やフリーアドレスという働き方が、コロナウイルスの感染リスクを高めるであろうことは想像に難くない。
豪メディアThe New Dailyが伝えたオーストラリア・ビクトリア州の最高健康責任者であるブレット・サットン氏の指摘によれば、屋内のコロナ感染の確率は屋外に比べ20倍高いという。
オープンオフィスやフリーアドレスという働き方では、コロナ感染リスクを下げることができないのは明白。感染を予防するためのレイアウトが必要となる。
新オフィスワークで変わる職場の風景
最もシンプルなソリューションは、オープンオフィス導入前に主流だった社員ごとに個別の部屋を与える「cell office plan」に戻ること。費用が高く安全性の面で完璧ではないことから、 全社レベルの実行は難しいと思われるが、個別の部屋を導入することで得られる利点の1つは、空気感染リスクを低減できる点だ。MITでの研究では、人のくしゃみで感染力を持つ飛沫が27フィート(約8.2メートル)飛ぶとの報告がなされている。
一方、個別の部屋でも、飛散した感染力のある飛沫が机や椅子に付着する場合は、その部屋に入る不特定多数の人が感染してしまうリスクが残ってしまう。この場合、マスク徹底などのほうがコストの観点からベターな施策といえる。
実際、オフィスデザインを手掛けるニューヨークの建築事務所Perkins and Willの内装デザイン責任者ブレント・カプロン氏もCNBCの取材で、雇用主や労働者の間でオフィスの安全性に対する意識は大きく変わってきているが、オープンオフィスはこの先も残るだろうと指摘している。
一方、カプロン氏は、リモートワークに慣れた人びとをオフィスに戻すには、企業のオフィスを変革する努力が必要になると語っている。たとえば、オープンオフィスを維持しつつも、静かな環境で働ける個別ブースや小型のオフィスを設置したり、図書館のような静けさを保つ空間などへの投資が必要という。
カプロン氏によると、換気システムの刷新や自然光を取り入れるオフィスデベロッパーが増えているとのこと。また、気候が許す場合、屋外スペースを有効活用するオフィスも登場しているという。
FastCompanyによると、屋外スペースの有効活用は、今米国のオフィス不動産開発界隈では注目のトレンドになっているとのことだ。
オフィスワークでのウェルビーイングや生産性の改善必須
コロナ感染リスク低減という観点からオフィスを刷新しようという動きが強まっているが、この流れに乗り、オフィスワークでの社員のウェルビーイングや生産性の改善も同時に達成しようという動きも見受けられる。オープンオフィスやフリーアドレスに代表される旧オフィスワークでは、社員の健康状態と生産性が損なわれる可能性があることが科学的に証明されつつあり、新オフィスワークの導入を後押ししているようだ。
そのような論文の1つとして挙げられるのが2021年6月14日に学術誌Journal of Management & Organizationに掲載された論文だ。
この論文では、オーストラリア・ボンド大学の研究者らがAIによる感情分析、心拍数や皮膚反応によるストレス分析手法などを用い、オープンオフィスにおける社員のストレス度合いを計測したところ、オフィスの雑音がストレスレベルを高めるという因果関係が明らかになった。
同論文の研究者らは、これまでのオフィスにおけるストレス分析では、ストレスレベルが被験者の自己申告によって測られており、正確な因果関係は分からなかったが、今回のように心拍数や皮膚反応分析を用いたことで、有意の因果関係を示すことができたと強調している。
2020年頃からリモートワークにおける生産性が高まったという調査報告が多数なされているが、おそらくオープンオフィスの雑音から開放されたことで、多くの人びとの生産性が高まったものと考えられる。
一方、自宅の雑音のほうがオフィスよりもひどい場合は、リモートワークでも生産性が低くなってしまう可能性があるということだ。
GAFAなど米テック大手では、フェイスブックやツイッターが一部でパーマネントリモートワークを導入する一方、アップルはオフィスワークへの復帰を推し進めるなど、業種業態によってそのアプローチは異なる模様。
上記で言及してきた「オープンオフィス」は、米国の建築家フランク・ロイド・ライトのデザインの影響により20世紀初期に米国で広がったものといわれている。
当初の意図はオフィスの壁をなくすことで、職場をデモクラタイズするというものだったが、時間が経つにつれ、オープンオフィスは1つの部屋に社員を詰め込むコスト削減の手段に変わっているという。コロナは、オフィスでの働き方を再考する良い機会となるはずだ。
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