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清本鐵工は、旭化成の企業城下町として有名な宮崎県・延岡市に位置し、地場のミニ重工会社として名を馳せる企業だ。橋梁や発電などのインフラから、船舶などの大型部品、食品機械など、唯一無二の製品をつくり、複合的・多角的な事業で社会に貢献している。「グッドカンパニー大賞」(中小企業研究センター選出)の優秀企業賞も受賞している同社は今後どのような戦略を立てているのか、代表取締役社長 清本邦夫氏に話を聞いた。コロナウイルスの影響も小さくない中、宮崎の地から始めるDX(デジタルトランスフォーメーション)とは。
「鉄でつくれるもの」なら何でも。宮崎の総合メーカー
──事業内容や成り立ちを教えていただけますか?
清本邦夫氏(以下、清本氏):
1937年に宮崎県延岡市の小さな町工場から始まりました。延岡市と言えば旭化成の企業城下町として知られますが、我々はもともと、鉱山機械の修理などの事業からスタートしたと聞いています。
終戦後、地元の延岡市でナンバーワン企業になるために、創業期から続くプラント保守から、配管など設計・施工まで対応できる体制を整え、やがて「鉄でつくれるものなら何でも」つくれる多角的な企業へ成長しました。
現在、グループ企業は14社あり、従業員は1000名超、年商が約320億円の企業となっています。橋梁や、水力・火力発電所の部品など、プラントのメンテナンス事業、社会インフラ事業、工場機械、食品機械、鋳鋼事業など、幅広い産業分野へ展開しています。
清本氏:
我々の特徴は、グループ全体でいわば「ミニ重工会社」のような形態になっていることです。我々しか手掛けていない国内製品も多くあります。たとえば、飴をインジェクションで成型する製菓専用機械や、中大型船舶用の大型アンカー「AC-14アンカー」などで高シェアを誇っています。
この錨(アンカー)は商船向けとして作られ、1隻の船に2~3基ほど搭載されます。巨大な船を固定するため、1基の重量は約8トンにも及びます。現在このような大型の錨を製造できる鋳鋼メーカーは国内に2社しかなく、皆様の生活に役立っていることを誇りに思っています。
ただ、我々としては、そういった唯一無二の製品よりも、高品質な製品の設計から製作、施工までを、お客さまにワンストップで提供できる総合体制を強みと捉えています。大手プラントメーカーから一手に案件を受注し、完成品を提供できるため、手離れが良く、安心して任せていただけるという印象があるのではないでしょうか。
大型食品加工機械のパイオニアとして確固たる地位
──清本鐵工の独自技術を活用した製品はありますか?
清本氏:
食品機械分野のパイオニアとして、大型加熱蒸気調理器などを製造しています。いわゆる「スーパーオーブン」(SO)と呼ばれる製品で、水蒸気を加熱した過熱蒸気(スチーム)を利用して、食品製造ラインに設置して調理する大型設備です。調理時間の大幅な短縮化と歩留まり向上による経済性に優れ、酸化が少なくジューシーな食感が得られる美味しい食材を提供できます。
また、真空下で低温度・短時間にフライを行うことで、素材の味や風味をそのまま残せる「真空フライヤー」も海外向けに製造しています。減圧装置で油の沸点を下げ、ジャガイモなどの食物を乾燥させながら、サクサクした加熱処理が行える機械です。
食品機械関係では、ほかにも肥料・飼料として付加価値の高い肉骨粉や骨油を製造できる「レンダリングクッカー」のシェアも全国1位です。畜肉加工場や水産加工場から出る不可食部位や骨などを処理できる装置で、これらプラント設備の設計・製造から現地据え付け工事まで一括で対応しています。
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