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「平成30年度グッドカンパニー大賞」(中小企業研究センター)で新技術事業化推進賞を受けたヘルスケアシステムズは、「健康行動のエビデンスを検証し、生活習慣のミスマッチをゼロにすること」を目指す名古屋大発のヘルスケア・ベンチャーだ。これまでアカデミアで数万円もしたヘルスケアに関わる検査を、一般に向けた郵送キットで数千円レベルまで抑えることに成功している。同社はヘルスケアの世界にどんな影響を与えようとしているのか、代表取締役 瀧本陽介氏に話をうかがった。
評判や直感で選ばれる今のヘルスケアを変える
──起業のきっかけはなんでしょうか。
名古屋大学 農学部 大澤俊彦教授(現 名誉教授)の技術シーズ、バイオマーカーの事業化に向けて2009年に起業しました。バイオマーカーは病気になる前の未病状態や病気の進行を調べる指標のことで、代表的なものとして、生活習慣病のバイオマーカー、血糖値やコレステロール値などが挙げられます。
事業には2つの大きな柱があります。1つ目の柱は、バイオマーカーを手軽に一般人に使ってもらう「郵送検査事業」です。食生活や生活習慣を見える化するため、身近な食品が持つ健康機能性に着目し、美容や老化など誰もが関心のあるテーマに結び付いた郵送検査キットを開発しています。いずれも尿や便など日常的なものを検体とし、痛みを伴わない検査が特徴になっています。
2つ目の柱は、いわゆる食品の機能性効果を確かめるための「臨床試験事業」です。ここでは、信頼できるエビデンスとして、ヒトを対象とした有効性の検証や、機能性食品の開発支援を行っています。消費者の状態を見える化し、本当に良い食品をマッチングできる展開を考えています。
──なぜこの取り組みを行っているのですか?
我々のミッションは「生活習慣のミスマッチをゼロにすること」です。
病気になったときは、必ず客観的なデータに基づいて、医師の診断が行われ、正しい薬が処方されます。ところがヘルスケアの世界では、サプリメントにしても化粧品にしても「これは良いかも」という評判をもとに直感的に選ばれています。
そのため、いくら臨床試験で良い結果が出た商品であっても、ユーザーとマッチングせずに長続きしないのです。そこで我々の検査が「生活習慣のものさし」となり、自分のカラダの状態を知ってもらい、生活習慣とのミスマッチをなくしたいと考えているのです。
計15種類の検査キットに加え、タンパク質の摂取量を調べる製品も
──郵送検査キットについて教えてください。どのような特徴がありますか?
検査キットについては、健康保険組合だけに提供したり、医療機関の自由診療で使うクローズドなものもあります。それらを含めて、主力のキットとしてストレス、腸内フローラ、食塩摂取量など、全部で15種類のラインアップがあります。
直近では「フレミーチェック」というキットをリリースしました。これはタンパク質の摂取量を調べる検査キットです。糖質ダイエットやプロテインで体作りをしている人にももちろん有用ですが、65歳以上の高齢者にメインで使ってほしいと思っています。
高齢者になると「ロコモ」(運動器の障害により要介護になるリスクの高い状態になること)や「フレイル」(健常から要介護へ移行する中間で、身体的機能や認知機能の低下が見られる状態)を気にしなければいけません。
運動不足とタンパク質の摂取量が減ると、筋力が低下し、活動レベルが落ちるため、高齢者の疾患の副次的な原因になっています。今年から後期高齢者に対して「フレイル検診」が始まりましたが、我々はこのフレイル検診の項目に含まれないタンパク質の量を、尿から判断できる検査キットを開発したのです。
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