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  • 2020/11/24 掲載

AI技術の「エキスパートシステム」を解説、Watson(ワトソン)との意外な関係とは?

連載:図でわかる3分間AIキソ講座

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第1次人工知能(AI)ブームの中で、AIのさまざまな可能性が否定されたことでブームは終わり冬の時代を迎えます。しかし、すぐに第2次AIブームが始まりました。その要因はコンピューターの情報処理能力と記憶容量の飛躍的な向上です。急速に進歩するコンピューターによって、AIは新たな可能性を示すようになりました。
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第2次AIブームを語る上で、欠かせない「エキスパートシステム」とは何か(後ほど、詳しく解説します)


エキスパートシステムとは?何に使われている技術か

 「エキスパートシステム」とは、あらゆる専門家の知識を学習し、どんな質問にも答えられるようになったAIです。質問すればどんなことでも教えてくれる、いわば白雪姫に登場する「魔法の鏡」のような機械とも言えるでしょう。

 たとえば、病気の診断をするエキスパートシステムならば、「のどは痛いですか?」「血液検査の数値は?」などの質問にユーザーが答えると、エキスパートシステムが蓄積したデータベースを参照し、病名を提示してくれます。

 このように、「聞かれたことに答えていけば」もしくは「必要な情報を入力すれば」、何らかの答えを出してくれる、非常に画期的なシステムなのです。そして、答えを導くためにシステムが参照するデータベース自体が専門家の知見によって作られるため、比較的高度な質問にも答えられるのが強みです。

 実際、1970年代にスタンフォード大学が作った「Mycin」(マイシン)というエキスパートシステムは、細菌性の血液疾患に限った診断で69%の正答率を記録しています。専門医の80%よりは低いものの、小規模な病院では十分活躍できるレベルでした。

 ただ、第2次AIブームで登場したエキスパートシステムは、「もしAならB」といった、回答ルールを集めただけのシステムであり、AIとしては未熟なものでした。それでも、システムに入力する知識と回答ルールを増やしたり変えたりするだけで、AIを賢くでき活躍する領域を広げられるという点が注目されました。

 医療分野以外にも、リスク要因をデータ化した「危険予測」、現代のフィンテックへとつながる「金融アドバイジング」、最適ルートを算出する「行動最適化」などにも応用されました。また、チャットボットなど、各種トラブルシューティングやWeb上のQ&Aにも類似の仕組みが使われています。研究室の中だけの存在だったAIが、社会にも広がっていったのは大きな進歩でした。

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「エキスパートシステム」は、質問すればどんなことでも教えてくれる、いわば白雪姫に登場する「魔法の鏡」のようなもの?
(Photo/Getty Images)
 

エキスパートシステム誕生の時代背景

 第2次人工知能(AI)ブームに中心的技術となり、その後のAI研究大きく貢献したエキスパートシステムは、どのように登場したのでしょうか。その誕生には、計算能力や記憶容量の飛躍的な進歩が関係しているようです。エキスパートシステム誕生に関わる歴史を振り返ってみましょう。

 時代の大きな変化を作ったのが、1970年代のインテルによる「マイクロプロセッサ」の開発です。それまでコンピューターのCPU(計算処理装置)は、トランジスタと呼ばれる半導体スイッチを基盤上に大量に並べていました。このトランジスタを小型化して1つの部品の上に集めたものが「集積回路(IC)」です。

 当時、トランジスタの小型化は急速に進んでおり、集積回路上のトランジスタの個数は指数関数的に増えていきました。この現象は後に「ムーアの法則」とまで呼ばれるようになります。そして、膨大なトランジスタを内包する複数の集積回路を一箇所にまとめ、情報処理に必要な機能を持たせたものが「マイクロプロセッサ」でした。

 今ではCPUがマイクロプロセッサの代名詞になっているほど、当たり前の存在になっています。マイクロプロセッサの登場によりコンピューターの小型化が進み、個人で扱えるサイズのパーソナルコンピューターが誕生します。このときには第1次AIブームの1950年代に比べると、コンピューターの情報処理能力は数百倍になっていました。

【次ページ】AI研究の可能性を広げたハードの進化
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