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新型コロナウイルスの感染拡大を受け、政府が緊急経済対策として決めた全国民に対する一律10万円の給付(特別定額給付金)がスムーズに進んでいない。たとえば、給付をPC上で申請するためには、「マインナンバーカードの保有」と「カードリーダー(マイナンバーカードに記録された電子情報を読み取る機器。読み取りに対応したスマートフォンがある場合にはカードリーダーは不要)の準備」が必要となるが、そもそもマイナンバーカードを保有していない国民が多く、そのため役所の窓口はマイナンバーカードの交付手続きを求める人で大混雑するなど、まさに本末転倒な状況となっている。こうした問題の背景となっているのは、マイナンバー制度の不備である。
申請手続きにトラブル続出、理由はマイナンバーカード?
政府が決定した10万円の給付金を受け取るには、申請書の到着を待って郵送で申請する方法と、オンラインで申請する方法の2つがある。
小規模な自治体の場合には、住民に対する申請書の郵送作業も簡単だが、大規模な自治体では住民のリストアップにも時間がかかるため、給付作業は順調に進んでいない。一方、オンライン申請の場合、ネット上で申し込むだけで完結するので、給付金を早く受け取りたい人がオンライン申請に殺到している。
ところが給付金をオンラインで申請するには、マイナンバーカードを保有していることが条件となっており、しかもPCでの申請を行う場合にはカードリーダー(マイナンバーカードに記録された電子情報を読み取る機器)を購入しなければならない(読み取りに対応したスマホがあればリーダーは不要)。また、マイナンバーを読み取る際に入力するパスワードを連続5回間違えると受け付けを拒否されてしまう。
こうした状況から、マイナンバーカードに関する問い合わせやパスワードの変更などで役所の窓口を訪れる人が急増し、役所は大混乱となっている(パスワードの変更は窓口でしかできない)。朝一番に並んでも数時間待ちというケースもあるようで、逆に「3密」を誘発しかねない状況だ。もちろん今は行列にならないような工夫をしている自治体も多いが、それでも発行の依頼から実際に発行してもらうまでにはかなりの日数を要するのが現実である。
オンライン申請と郵送手続き、早く受け取れるのはどちらか
しかも、マイナンバーカードを使ったオンライン申請は実は本当の意味でのオンライン申請ではなかった。Webで入力された情報を役所の職員が2人1組で内容を確認し、実際の手続きは職員が手作業で行っているという。
職員の負荷があまりにも大きく、役所としては、本当はオンライン申請をして欲しくないというのが実状だった。自治体の中には、香川県高松市のようにオンライン申請を中止するところも出てきている。
新規でマイナンバーカードを申請した場合、通常でも1カ月以上時間がかかり、今回は窓口が混雑していることから、さらに時間がかかると予想される。結局のところ自治体から送られてくる申請書を待ち、郵送で手続きをする方が処理が早いという状況だ。
これでは何のためのオンライン申請なのかということになるわけだが、こうした問題を引き起こした元凶は、やはりマイナンバーカードということになるだろう。
10万円給付における、“政府の判断ミス”とは何か
「マイナンバーカード」は希望した住民に対して無料で付与される身分証明書として利用できるカードで、各人に送付されているマイナンバーの「通知カード」とは別である。マイナンバーの通知カードは、自分の番号を確認するために送られるものであり、それ自体をID(身分証)として用いることはできない。
今回の騒動ではマイナンバーカードとマイナンバーの通知カードを混同した人も多かったと考えられるほか、一部ではマイナンバーカードを持っていないと給付自体が受けられないと誤解した可能性もある。
現時点で、マイナンバーカードは1900万枚しか交付されておらず、多くの国民はカードを保有していない。緊急時で混乱が予想される中、国民にほとんど普及していないカードを用いたオンライン申請を設定し、しかも、その処理をシステムではなく人力で実施するというのは、大きな判断ミスだったといわざるを得ない。
途上国でも急ピッチで行政のデジタル化が進んでいる今の時代において、まさかWebサイトの先に職員が2名座っていて、電子的に提出した書類の確認を手作業で行っているなど誰も想像できなかったはずだ。
【次ページ】マイナンバー制度が抱える最大の問題とは
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