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  • 2018/09/14 掲載

ESG投資とは何か?企業に求められるものは?その本質や背景を経営学者が解説

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近年、「ESG投資」というキーワードを目にすることが多い。ESGとは環境(E)・社会(S)・ガバナンス(G)を意味しており、企業を評価する際に、これらESGへの取り組みが適切に行われているかどうかを重視するという投資方法だ。欧州から始まったこの投資の考え方は、日本でも広がっているとはいるものの、その本質を捉えている人はまだまだ少ない。ESG投資の本質とは何なのか。高崎経済大学 水口剛教授の解説を元にひもといていこう。
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高崎経済大学 水口剛教授

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ESG投資に注目が集まっている背景

 ESG投資というキーワードに今、なぜ注目が集まっているのか。ESG投資は2006年に責任投資原則(PRI)が国連の支援で策定されたことから始まる。2018年6月現在、世界1900以上の年金、保険、運用機関などがそれに署名しており、「その資金量は合わせて70兆ドル(7000兆円)超のお金が集まっている」と水口氏は説明する。

 ESG投資の方法論はダイベストメント(ESGに積極的でない企業を投資先から除外すること)やESGインデックスやESGレーティングの参照、エンゲージメント(株主としての行動)などさまざまだ。

 「昨今、日本でインパクトがあったのが、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がESG指数を採用したことです」と水口氏は指摘する。2017年7月には国内株式の3%程度(約1兆円)を組み入れたESG投資が始まっている。

 これに対して企業側の対応はどうなっているのか。

 「興味を持つ企業は確かに多いが、経営自体を変革するのではなく、現状の経営をそのままに、いかに報告するか考えがちだ。だがそれでは社会やESGが変化するたびに後追いをすることとなり、企業は右往左往することになる。一歩引いて、ESG投資の本質を捉えることが必要だ」(水口氏)

ESG投資が生まれた背景は、「資本主義の限界」

 ESG投資の本質の説明をするために、水口氏は魚が群れで泳いでいる写真を示す。1匹1匹の魚は企業や投資家などのプレイヤーで、その各プレイヤーにはそれぞれ意図や主張、見解、考え方、思惑、戦術がある。だがその魚群は大きな流れの中にある、つまり「各プレイヤーの背後の大きな流れの存在こそが、ESG投資の本質なのだ」と水口氏は言うのである。

 現象の背後にあるものとは、この流れを生み出している力であり、そこには時代的な背景、それが持っている意味がある。それが本質だという。

 ではなぜ、このような流れが生まれてきたのか。「ESG投資の背景にあるのは資本主義の限界から来る危機感だ」と水口氏は説明を続ける。

 まずは冷戦構造の終結、グローバル化が進み、低金利・ゼロ金利となり、資本が利益を生まない時代になった。「金融の短期主義化・投機的な経済が進んでいる。資本主義の終焉と言っていい」と水口氏。また、このことは結果的に経済格差の拡大をもたらし、資本主義は不平等を生みやすいシステムになっているという。

 その一方で、途上国では経済が発展。エネルギーの利用を増やしており、地球の環境の容量限界に行きつつある。「それが異常気象に表れている」と水口氏。7月に起こった西日本豪雨は多くの人たちの命や生活基盤を奪っただけではない。工場では部品が届かず、操業中止になるなど、企業にも大きな影響を及ぼした。このような状況が資本主義に対する不信感を生み出し、その不信感がポピュリズムを生み出していることを水口氏は示唆する。

「SDGs」と「パリ協定」によりESGの流れができた

「経済の基盤を失う危機感から、世界は2つの国際合意を行った」(水口氏)

 1つが2015年の国連持続可能な開発サミットで「持続可能な開発目標(SDGs)」を規定したこと、もう1つが2015年のパリ協定(温室効果ガスの排出について、2020年以降の各国の取り組みを定めたルール)への合意である。この2つの国際合意が目指すのは「環境が守られている」「貧困・不平等がない」「経済活動が安定する」社会だ。そして、このような社会を実現するには、「システムそのものを変えなければならない」と水口氏は話す。

 ではこの目標が企業にどう関わるのか。気候変動を例にとって説明しよう。現在のままの社会システムを継続していくと、今世紀が終わるぐらいには4℃気温が上昇すると言われている。それを+2℃までに押さえるためには、CO2の排出量の上限は1000ギガトンとなる。しかし2000年ごろまでにすでに500ギガトン輩出しているため、あと500ギガトンしか輩出できないことになる。

 この現状を踏まえ、「そもそも石油を使わない社会へと転換していくことが必要だ」と水口氏は語る。石油文明から転換するということは、経済の前提条件そのものが変わることでもある。

「実際、フランスやイギリスでは2040年以降、ガソリン車やディーゼル社の販売を禁止する方針を決めている」(水口氏)

 そうなるとどうなるか。エンジン周りの部品はいらなくなり、自動車関連機器メーカーは大きなビジネスリスクを負う。従来型のエネルギー産業も大きなリスクにさらされる。すでに風力や水力、太陽光などの再生エネルギーの発電コストは化石燃料と変わらなくなっているためだ。今、企業のビジネスモデルは大きな転換期を迎えているといえる。

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ESG投資で既存の資本主義システムを拡張する

  「投資家も動き始めている」と水口氏。2018年1月、ニューヨーク市の退職年金基金は化石燃料からのダイベストメントを発表した。世界で2番目に大きい機関投資家であるノルウェー政府年金基金は、沖縄電力や北海道電力、中国電力、四国電力などを含め、石炭に関わる企業を除外し始めている。だが、このようなダイベストメントには「社会全体の脱炭素化にはつながらない」という批判もある。

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