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- 2017/12/22 掲載
労働時間を減らすだけでは業績に悪影響、「業務の再配分」はどう進めればよいのか(2/2)
全体最適と個別最適のバランスはどう取ればよいのか
それでは次に、企業は業務改革に取り組むに当たって、何を課題として捉えているのだろうか。最も多く挙げられたのが、業務の効率化・コストを削減することで82.9%、次に働き方改革に対応することが57.2%、変化に対応できる経営体制を作ることが46.0%と続いている。
また業務改革の範囲として、2年前の実態調査ではグループや全社にまたがる取り組みだと回答した企業の割合が57.8%だったのに対し、今回は47.5%へと減少、一方で事業部門や機能別組織単位で独自に進めていると回答した企業の割合は、27.8%から41.0%へと増加した。
「業務改革の対象が、以前よりもより実務的になった。業務改革自体は全社レベルの取り組みとして進めても何ら差し支えないが、全社規模で行う業務の標準化はミドルオフィスやバックオフィスに関わるところ、たとえば請求書の発行業務など対象範囲は非常に限られてくる。より顧客サービス向上、付加価値向上などの効果を上げていくためには、やはりサービスごと、商品ごとのアプローチが必要だ。そうした領域にまで業務改革の対象が広がりつつあるというのが今回の結果だろう」
さらに横川氏は「ITを中心とした業務改革の取り組みは、往々にして全社規模になりがちだ」と注意を促す。
「たとえば全社共通のデータベースをきちんと作らなければならないという話になり、せっかく業務効率化のために作ってきた業務プロセスが共通化の罠にハマって、全然便利ではないプロセスに変わってしまったという事例は非常に多い。全体最適か、個別最適かのバランスは、BPMにとって究極のテーマ」
また業務改革の手法として、BPMやリーン生産方式、シックスシグマなど特定の手法を採用した企業が全体の18.6%あったが、特に採用しなかった企業の割合は69.5%で、各社各様のやり方が主流を占めているのが現状だ。
業務改革の成果としては、従業員間での業務知識や情報の共有化が進んだと答えた企業が32.7%で最も多く、次いで現場での問題解決や改善能力が向上したと答えた企業が21.1%で続いている。
「しかし、この結果には、忸怩たるものがある。というのも、利益貢献や売上向上、顧客満足度の向上といった業績貢献を示す項目が上位に上がってきていないからだ。業務改革がまだ本質的な活動になっていないことを感じている」
ちなみにITの活用場面として一番多いのは、受注・出荷などのSCM系と会計処理系を併せた80.8%で、一方、需要の変化に応じて販売促進や顧客サービスの内容とプロセスを調整する業務に活用している企業は11.9%と大きく下がっている。
「IT活用は依然として内部志向が強く、成長機会の創出や外部連携にまで活用できている企業はまだまだ少ないのが実情だ」
BPMを成功に導くための3つの条件
業務改革におけるBPMへの取り組み状況について、横川氏はまず「BPMに対する認知と取り組みは2年前に比べて増加しており、現在の普及率は2割」と紹介した。「具体的なBPMの対象プロセスとしては、調達・購買・外注が最も多く41.3%。これらの領域ではルーチンワーク化されている業務が非常に多く、そこにBPMを適用していくという流れだ。また人事・労務37.5%や会計・財務35.0%などの内部管理系も多い。しかし、いずれも“稼いでいるプロセス”とは言えない」
またBPMへの取り組みに際して専門の人材や組織を設置する企業は多く、それが成功要因にもなっているようだ。
一方で、BPMに取り組んだ時の苦労点としては、現場の協力を得ることが67.7%で最も多く、BPMに取り組まなかった理由では、取り組みのコストが高いこと33.3%と並んで、社内に導入・適用スキルがなかったこと33.3%が挙げられた。
次にBPMが業務改革にどう貢献したかについては、業務プロセスが可視化されて改善が進み、属人性の排除や負荷偏重が低減したという企業が全体の61.5%、業務プロセスをチームで共有できるようになり、連携が深まった企業も43.1%にのぼった。
「こうした業務改革への貢献内容は、働き方改革にも繋がるもの。言い方を変えれば、BPM活用や業務改革を推進する企業の狙いが働き方改革にあるということがよく分かる。ただしOBCOの事例に見られるような実績データによるモニタリングや、改善に活用するレベルには、多くの企業は至っていない。今後の大きな課題だ」
最後に横川氏は、BPMの成功条件として、大きく3つのポイントを提示した。
1つ目が、顧客起点でビジネスプロセスを可視化し、再設計することだ。
「BPMを活用してインパクトのある成果を出せなければいけない。それは内部志向ではなく、顧客起点であることが非常に重要だ。顧客起点で見た時には、意味のないプロセスや“野良プロセス”がいかに多いかが分かるだろう。そうしたプロセスをいくら効率化しても意味がない」
2つ目が、ビジネスプロセスの実行環境と、モニタリングの仕組みを作ることだ。
「BPMシステムをしっかりと作り込むことができれば実行環境は整う。しかし大前提となるのは、ビジネスプロセス自体が業務アプリケーション要件やモニタリング要件に耐え得る整ったプロセス設計になっていることが必要だ。このポイントを外してはならない」
そして3つ目が、プロセス、実行環境、モニタリング環境をエンジニアリングできる専門人材と組織を作ること。
「たとえば業務改革推進室というような組織があった時、そこが実際にビジネスプロセスをエンジニアリングできる集団かどうかが問題だ。その組織あるいはメンバーは内部志向ではなく顧客起点でプロセスを設計する。それが、今後BPMが業務改革あるいは働き方改革の牽引役になっていくための必須条件だ」
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