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- 2017/11/27 掲載
ユニコーン候補のFiNCが「予防ヘルスケア×AI」で実現しようとしている世界
臨床現場での“気づき”と人工知能(AI)の関係
「ユニコーン企業」の候補として爆発的な成長が期待されるテックベンチャーの中でも、2012年に創設されたFiNCの放つ存在感はとてもユニークだ。同社はヘルステック事業を中心に展開しており、約240名(インターン等含)在籍するスタッフのうち、およそ1/3がトレーナーや管理栄養士などの専門スキルを持つという。残り1/3がエンジニア、それ以外がビジネススタッフと、学生から60代の経営層まで、経歴やバックグラウンドも多種多様な面々がそろう。すべての人がターゲットとなり得るその事業ドメインの特性からすれば当然のことかもしれないが、エンジニアばかりに注目されがちなテックベンチャーにおいては珍しい構成だ。
さらに面白いのは、たとえば管理栄養士からプロダクトマネージャーやエステティシャンになる、トレーナーを経験した後にコンテンツの企画をする、といった多面的なキャリアを持つスタッフが少なくないことだ。実際、どのような想いで日々の業務にあたっているのか。FiNC マーケティング戦略本部プロモーション室マネジャー・行木 宏枝氏に話を訊いた。
自分が経験したことや考えていることを、実際のプロダクトに反映したいというモチベーションを社内でフックアップしていく空気がある。これはFiNC社長・溝口 勇児氏自身が、学生時代にトレーナーをしていた経験を、実際のサービスやプロダクトに落とし込んできた経緯が大きいという。
スマートフォンが出てきた時にも、これなら時間や場所の制約に捉われず、自分たちのノウハウをもっと広げられるのではないかと考えた。そこで着目したのが人工知能(AI)を“パーソナルトレーナー”に見立てたプログラムだ。
「たとえば、トレーナーとして、いろんな悩みやコンプレックスを抱えている人を実際に見ていると、『通院治療だけではなくて家にいるときも何かケアができる方がもっと悩みが軽減したり解決したりするのにな』という思いが出てくる。それをどう解決すればいいのか、というように現場での“気づき”を事業としてどんどん形にしているんです」(行木氏)
人工知能を“パーソナルトレーナー”に
インターフェイスは、ユーザーがスマートフォンで接する頻度の高いサービスに近い。友達とコミュニケーションする感覚で“パーソナルトレーナーAI(名称:フィンクちゃん)”からチャットを通してアドバイスをもらう。これはジムやエステサロンなどで受ける、問診やカウンセリングのイメージにも近いインタラクション設計だ。
エクササイズ・ストレッチ・ヘルシーレシピ・ヨガなどをテーマに、動画を交えたハウツー記事を読むこともできる。
体重・歩数・食事・睡眠・生理の記録といった基本数値データの管理だけでなく、どんなコンテンツを閲覧しているか、どんなタイミングでアプリを起動しているか、といったサービス全体におけるアクティビティデータもAIに学習させAIからアドバイスしている。これはその人の“生活習慣”や“趣味嗜好”といった傾向を知ることも、予防医療においては重要だからだ。
サービスを使い続けていくうち、20万件にもおよぶ食品データベースや栄養・運動プログラムから、パーソナルトレーナーAIが選ぶレコメンドもより正確になる。
近年、特に健康・美容を扱うヘルスケア領域では、コンプライアンスや情報の正確性についてセンシティブになっている。FiNCも非常に厳格な管理体制を整えている。社内には法務に特化したスタッフが常駐、その他にも専門家によるエビデンスチェックを通過しないとあらゆるサービスは提供には至らない。
原点にある“体験”が共感を呼び、縁を呼ぶ
多くのさまざまな専門家が在籍し、プロのプライドをかけて徹底的に品質管理を行う。これは“原点”体験に、スタッフそれぞれが強い想いを持っているからこそ出来ることだろう。
「在籍エステティシャンの中にも、管理栄養士の資格を持っている方がいます。あまり知られていないのですが、資格取得のハードルの高さに対して、実際の活躍の場は想像以上に限定されているんですね。かつては給食センターや福祉施設、病院で勤務していたが、もっと多くの人にノウハウを伝えたい、キャリアを横に拡げたいという動機で入社される方も多いんです」(行木氏)
また、社外にはFiNCの“伝道師”となって活躍するアンバサダーチームも存在する。アンバサダーのアサインにはタレントやキャスティング事務所とやり取りをすることもあるが、社内の担当者がインスタグラムやSNSを介して気になる人に直接コンタクトして会いにいくなど、地道なネットワーキングにも注力している。
FiNCとのエンゲージメントが高い人がさらに人を呼ぶ、というスクリーニングが利いた状態の体制づくりに舵を切ったことで、アンバサダーネットワークは着実に組織として回り始めているという。
【次ページ】 予防医療のカルチャーを広めるためのFiNCの戦略とは?
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