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  • 2017/07/07 掲載

クルーズコントロールが「完全自動運転のロードマップ」とは異なる理由

連載:クルマの未来

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クルマを一定速度で巡航させる装備、オートクルーズ・コントロール。日本ではクルーズコントロールは長い間、普及させることが難しかった。それは渋滞が多く、高速道路であっても交通量が慢性的に多い我が国では、一定の速度を維持して走行を続ける機会があまりにも少ないからである。ブレーキを踏むと解除されてしまい、再び設定し直さなければならない煩わしさから、輸入車には装備されていても使わないオーナーが圧倒的だったのだ。しかし、そんな使えない装備が突如、便利この上ない装備へと変貌を遂げた。エンジン、AT、ブレーキといった3つの機構を協調制御することにより、クルマは飛躍的に安全なクルージングを実現したのである。
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クルーズコントロールはステアリング上のスイッチにより設定と解除、速度の変更などが可能だ(写真は日産セレナのプロパイロット、ステアリングアシスト機能を持つ“自称”自動運転車)

日本では使えない装備だったクルーズコントロールの進化ぶり

 そもそも初期のクルーズコントロールは単純にアクセルワイヤーを固定するような乱暴な機構だった。これは燃料の供給装置などエンジンの制御系が単純な構造だったからで、それでも長い距離を淡々と走るような北米などでは重宝したに違いない。やがて80年代も後半に入る頃、ようやくクルーズコントロールは進化を始める。

 そこから速度を制御するようになっても加速要求は実現できても減速は制御不能だった。加速を止めただけでは減速する勢いは非常に緩やかで、速度を制御できているとは言えず、ドライバーがブレーキを踏むことで車速を落とすしか減速方法はなかったのだ。

 よほど空いている状況なら問題ないが、周辺にクルマが並走しているような状況では、常にクルマが設定速度を維持しようとするのは、かなりリスクのある走り方とも言える。それゆえ、クルーズコントロールを積極的に使おうとするドライバーは日本では希だった。

 それが操作を電気信号へと変換するバイワイヤー技術の実用化により、急速に問題解決へと革新的な進化を遂げるのだ。

 まずはアクセル・バイ・ワイヤー、量産車の世界では電子制御式スロットルバルブとも言われるデバイスは、そもそもアクセルを踏みすぎるユーザーの燃費対策のために導入されたものだった。

 つまりはカタログ燃費を引き出す燃費職人と、素人ドライバーの差を埋めるものだったのである。燃費向上のために開発されたデバイスが、今や安全性向上のキーデバイスへと成長したのだ。

運転の「無駄」を削減できるが、日本では利用シーンが限られていた

 電子制御式スロットルの作動プロセスを追ってみることにしよう。

 ドライバーはアクセルペダルを通じてクルマへと加速要求を伝える。それはアクセルの踏み込む量、すなわちアクセル開度だけでなくアクセルを踏み込む勢いを加速度として識別し、ドライバーの加速要求の強さを推測する。

 これによりECU(エンジンコントロールユニット)はどこまでスロットルバルブを開き、燃料の噴射量の増量をすべきか決定する。

 また点火時期やバルブタイミングの調整も行い、より力強い加速力を生み出すために最適な制御を行う。さらにアクセルを深く踏み込めば、ATであればキックダウンを促し、より強力な加速体制へと入る。電子制御スロットルはこのようにドライバーの意思を汲み取り、最適な加速を実現するための制御を行なうよう調整してくれるのである。

 しかしながら、一般のドライバーの中にはアクセル操作がラフで、大ざっぱな踏み込み具合で走らせようとする人もいる。時に必要以上に加速させてしまったり、加速を断続的に行うことでギクシャクとさせたり…。

 こうした運転の無駄は当然のことながら燃費を低下させる要因になる。電子制御スロットルは、こうしたドライバーの不作法もある程度許容して、大ざっぱなアクセル操作を適度なアクセル開度へと修正してエンジンを制御してくれる。

 クルーズコントロールは、この電子制御式スロットルの導入により洗練された。ECUの高度化により上り勾配など負荷が高まればスロットル開度を広げたり、燃料を加速増量させることで速度を維持しようと働くようにもなった。

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前走車と速度に応じた車間距離を保ちながら巡航するACC(写真は日産セレナのプロパイロット作動状態)

 けれども前述したように、道路上の車両密度が高い我が国では、依然としてクルーズコントロールの出番は少なく、よほど空いている状況の高速道路に遭遇した場合か、あるいはとにかくこうした快適装備を利用するのが好きなドライバーが条件が合う場合に使用する程度の装備に過ぎなかったのである。

【次ページ】「完全自動運転」とは何が違うのか
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