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- 2017/08/02 掲載
アウディが自動運転「レベル3」搭載A8を発売、法整備すら待たず加熱する開発競争
連載:クルマの未来
運転の主体が「人」ではなく「システム」となるレベル3
「レベル3」の自動運転機能を搭載したクルマが早くも登場した。先頃発表されたアウディのフラッグシップ「A8」は、アルミ合金とマグネシウム合金、そしてカーボンファイバーと高張力鋼板というマルチマテリアルで車体を構成し、大柄な高級車でありながら車両重量はかなり抑えられているようだ(現時点で詳細は未発表)。その一方で、ドイツの高級ブランドの最上級車に相応しく、アクティブサスペンションやADAS(先進運転支援システム)などの安全装備、ふんだんと言っていいほどの快適装備が奢られている。
しかし、何よりも話題をさらったのは冒頭の通り、「レベル3の自動運転を実現している」という点だ。
レベル2が高速道路での同一車線を走行し続けることができる機能であるのに対し、レベル3は車線変更も伴う走行を可能にする。しかしそんな機能よりも、レベル2と3では根本的に異なる部分がある。それは運転の主権を誰が握るのか、という自動運転の根幹に関わることだ。
走行中は常に運転者が監視して、必要に応じて運転操作を行なうことで安全を担保するのがレベル2であり、レベル3では自動運転システムが走行中の主権を担うことになる。とはいえ実際にはレベル3でも、レベル2のドライバー主権に車線変更能力を追加した程度から、システム主権の自動運転まで技術や機能のレベルに幅があるのが現状だ。
アウディA8の場合、高速道路を60km/h以下の速度で走行している場合に限り、ドライバーに代わってアクセルとブレーキ、ステアリングの操作をコンピュータが行なう。車線変更や自動追い越しなどの機能は備えているらしい。しかしアウディ側の発表では、システムが運転することが困難になった場合、ドライバーに運転操作を促すようだ。つまりはレベル2.5とでも言うべき内容なのである。
各国の法規制によって、使える機能が制限されると言うが、高速道路において手放しのまま走行を続け、前方に低速走行している車両がいれば、追い越し車線の安全を確認した上で、車線変更をして追い抜きまで自動的に行なってくれるというのであれば、これは自動運転と言って差し支えないだろう。しかし実際にはドライバーは完全に運転をコンピュータに任せ切りにすることは難しく、後席や助手席の乗員と同じ感覚で乗車することは到底叶わない。どちらにせよレベル4の完全自動運転と比べれば、まだドライバーが監視している必要があり、利用出来る道路環境も限られるというのが最新の自動運転技術の現状なのである。
法整備が整う気配もない中、ホンダ、トヨタ、日産も続く
ホンダもレベル3の自動運転を搭載したクルマを2020年まで、またレベル4の自動運転車を2025年までに発売すると宣言しており、欧州勢と比べて立ち上がりが遅れた自動運転技術を急速に高めるべく、開発を急いでいる。もちろんトヨタも、そしてプロパイロットと呼ぶレベル2の自動運転をいち早く市販化した日産も、高級車でレベル3自動運転の実現を目指しているはずだ。まだ法整備も整う気配も見せない中で、自動車メーカーが開発を急ぐのは、法整備の難しさが背景にある。
法律は一度施行されれば、そう簡単に何度も変更されれば返って混乱が生じる。周知されて遵守され、効力によって社会に貢献できる法律でなければ意味がない。しかも相手は、これまで想定していなかったロボットカーである。慎重に成らざるをえないのは仕方のないことだが、技術の進歩は保守的な法整備の確定を待っているほど悠長なスピードではない。ここに日本の自動車メーカーの自動ブレーキや自動運転の開発が立ち遅れた原因の一端がある。
フォルクスワーゲングループの中でも一際先進的なイメージをもつブランドだけに、アウディは何としてもレベル3の自動運転搭載車の販売を他メーカーに先駆けて発表したかったと言う姿勢が感じられる。前述の法規制への合致を確認する関係もあって実際にレベル3の自動運転を提供出来るようになるのは2018年以降のようだが、クルマ自体は2017年中にデリバリーを開始する計画だ。
【次ページ】 レベル3がこのタイミングで登場したのは「想定の範囲内」?
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