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- 2017/06/26 掲載
マイクロ・インシュランスが「自動車保険のゲーム・チェンジャー」になる理由
シェアリングが先進国でのマイクロ・インシュランスを推進
マイクロ・インシュランスの自動車保険会社として最も有名なのは、サンフランシスコに本拠を置くメトロマイル社だろう。Uberがオフィシャルに採用している保険会社で、スマホを使って毎日の走行距離、ルートが報告され、走行距離に応じて保険額が決定する。米国の自動車保険の平均は2014年で866ドルあまりだが、メトロマイルの利用で平均で25%保険料が下がる、という。
その秘密は車のOBD-IIポートにメトロマイル・パルス(Metromile Pulse)と呼ばれるデバイスを接続することにある。OBD-IIは車のスモッグチェックなどを行う際に使われるポートだが、近年はこれを車内WiFiポートにする、などの利用が盛んになっている。
このデバイスにはGPSが内蔵されており、車の位置が逐一保険会社に送信される。その結果、1日の走行ルート、距離などが割り出される。利用者は月々のベース料金に加え、1ヶ月に走った分に応じた保険料金を支払う。ライドシェアサービスのドライバーをしている場合、客を乗せて走ったルート、保険料金が毎日集計できるため非常に便利だ。
メトロマイルは当初カリフォルニアのみで運営していたが、現在では全米7つの州に広がり、今後も拡大を目指す。このサービスのユニークな点は、車のコンピュータと直結することで車の不具合も感知し、スマホアプリで利用者に知らせる、あるいは駐車禁止区域に車を停めると「反則チケットを切られる」という注意を促す、などの機能もあることだ。
大手自動車保険会社もマイクロサービスを開始
メトロマイルの成功に刺激され、大手自動車保険会社も相次いでこうしたマイクロサービスに乗り出している。プログレッシブは「スナップショット」という似たようなサービスを開始しているし、ビタリティという会社では複数の大手保険会社と提携し、利用者が健康状態のデータを提供することで保険の割引に応じる、というサービスを提供。利用者はアップルウォッチのようなデバイスにより心拍数、運動の状況などのデータをビタリティが集めることに同意する。
要するにどの企業も利用者の個人情報を何らかの形で手に入れることになるが、それが今後の自動運転やIoTなどさまざまなビジネスに役立つビッグデータの一環となる。
こうした“企業側の旨味”もさることながら、利用者にとってマイクロ・インシュランスは非常に魅力的な商品でもある。自分の車の走行状態などをスマホ上に記録できるほか、さまざまな利用法が考えられる。
たとえば自分の車を使っていない時間帯に他人に貸すP2Pでは、貸し出す相手にマイクロ・インシュランスに入ってもらい、貸し出した期間のみの保障を受けることも可能だ。
P2Pの大きな障害は「事故が起こった時どちらが責任を負うべきか」という点だ。実際、貸し出した車に傷がついて戻ってきた、貸し出したまま盗まれた、という問題は後を絶たない。しかしGPS機能付きの保険ならば車両の場所を特定できるし、貸し出した期間のみをカバーする保険加入も可能となる。
【次ページ】マイクロ・インシュランスを待ち受ける「ビッグチャンス」
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