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- 2016/10/18 掲載
今年も「三セク」が続々と破綻する理由
赤字のツケは住民に
甘い収支予測が招いた駅前再開発ビルの債務超過
市議会の臨時会で同意されれば、31日付で辞職する。副市長2人は経営責任を取って既に辞職している。鹿内市長はアウガを公共施設化する方針を打ち出していたが、再生問題は次の市長に委ねられることになった。市長選には元国会議員、県議会議員、元官僚らが立候補を検討している。
アウガは2001年のオープン。JR青森駅前にある鉄筋コンクリート地下1階、地上9階建てで、総事業費は185億円に及ぶ。地下は食料品売り場と飲食店、1~4階に若者向け衣料、雑貨の商業テナント、4階の一部から9階までに市民図書館など公共施設が入った。まさに駅前にそびえ立つランドマークともいえる存在だ。
建設の狙いは将来の人口減少に備えたコンパクトシティの推進。アウガは中心商店街の集客拠点と位置づけられ、コンパクトシティの優等生ともてはやされたが、初年度の売り上げは当初予測52億円の半分にも満たない23億円。賃貸料収入も伸び悩み、慢性的な資金不足に陥った。
市は2008年、金融機関の債権23億円余りを買い取って三セク会社の金利負担を軽減する一方、2010年には2億円を融資するなど公金を投入して会社を維持してきた。それでも経営は改善せず、2015年度決算で約24億円の債務超過となっている。
2016年8月末現在の現預金額は実質残高が4,240万円。法的整理が時間の問題になり、4億円の修繕積立金から三セク会社の運転資金など1億1,920万円を取り崩す条例案が9月議会で可決された。
身の丈に合わない開発と甘い収支見通しが今の苦境を招いたとみられる。青森市中心市街地再生支援課は「今後は新市長の意向に沿って再生を進める」と苦しい胸の内を打ち明けた。
ずさんな計画から観光農園が7カ月で営業断念
山梨県南アルプス市では、観光農園「南アルプス完熟農園」を運営する市の三セク会社・南アルプスプロデュースが経営破綻し、甲府地裁で破産手続きが始まっている。負債は約7億4,000万円に及ぶという。観光農園は市が5億円を貸し付け、6次産業の拠点とする計画で2015年6月にオープンした。農産物の加工販売や農園カフェなどを打ち出したが、ありふれた内容のせいか客足が伸びず、開業当初から赤字が続いた。
市は2015年10月に5,000万円の緊急融資を実施、12月に社長を交代させる荒療治に出た。しかし、増収に転じることができず、三セク会社の資金繰りは悪化するばかり。2016年1月、開業からわずか7カ月で営業を断念した。パートを含む47人の従業員は全員が解雇されている。
甲府地裁ではこれまでに2回の債権者集会が開かれたが、現時点で店舗など不動産の売却先は未定のまま。破産管財人が民間企業を含む複数の相手に売却を打診しているという。
計画は中込博文前市長時代に作られた。9月市議会の特別委員会で答弁に立った金丸一元市長は「開業から3カ月で資金ショートしており、その時点で破綻してもおかしくなかった。ずさんな計画が無謀に運営された」と計画の甘さを認めた。
市は人口7万人余りの典型的な農山村地域で、2003年に山梨県西部の6町村が合併して誕生した。南アルプス市6次化拠点整備室は「地方で地域開発を民間に任せていたのでは何も生まれない。市が主導して6次産業化を進めたかった」と語った。
【次ページ】当事者意識欠く自治体と三セク会社
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