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Googleは、2016年6月14日、15日の2日間にわたって「Google Atmosphere Tokyo 2016」を開催した。これは「働き方」をテーマに、Googleが毎年開催しているイベントだ。今年のテーマは「『働く』に、無限の可能性を。」。基調講演では、元ヴイエムウェアの共同創立者兼CEOであり、Googleのクラウドビジネス統括責任者になったばかりのダイアン グリーン氏も登壇し、Googleの今後のエンタープライズ戦略をうかがう意味でも注目が集まった。
Google ダイアン・グリーン氏:クラウドとAIの進化が新しい分析を実現
今回の基調講演で最も注目を集めたのがダイアン・グリーン氏の講演だ。元ヴイエムウェアの共同創立者兼CEOであり、現在の仮想化市場を作り上げた立役者である同氏は、2015年12月、米Googleのクラウドビジネス統括責任者に就任。そのグリーン氏は、現在のデジタル革命について言及する。
「いまや、クラウドにより、さまざまなデバイスを使って、どこからでも会社の情報にアクセスできる。そして、その情報はだれとでも共有できる。さらに、クラウドとAIの進化によって、これまでは考えられなかった新しい分析も可能になった」(グリーン氏)
そして、Google Apps、Google Cloud Platformなどへの投資を通じて、デジタル革命という大きいうねりの中で顧客の成功を支援するとし、「今こそ、グーグルがエンタープライズで活躍するタイミング」と強調した。
また、ChromebookとGoogle Glassについて、注目すべき発言もあった。Chromebookについては、「2016年第一四半期、米国におけるChromebookの販売台数は、はじめてMacを上回った。管理が容易でセキュアで、エンタープライズ用の機能を持ち、起動も速い。タッチにも対応し、Androidのアプリも利用できる」(グリーン氏)と、今後も企業や教育機関を対象に普及に力を入れていく考えを示した。
Google Glassについては、製造業の組み立て作業での可能性について触れ、「市場導入するにはパートナーが必要」とコメント。コンシューマ向けとしては失速したGoogle Glassだが、企業向けには、今後もパートナーと連携しながら展開されることになりそうだ。
その他にも、マシンラーニング、画像認識、音声認識、Google Mapsなどを活用してビジネス展開している企業の事例をあげ、「ぜひ、エンタープライズの世界で、我々の技術を活用してほしい」と強調した。
セキュリティについては、「毎日、セキュリティだけを専任で担当しているエキスパートを約600名抱えています」と、600名という具体的な数値が挙げられたのが興味深かった。
また、すでに発表はされているが、改めて年内に東京にデータセンターが開設されることが強調されるなど、Googleのエンタープライズ分野への進出が日本においてもいよいよ本格化することが、強く印象づけられたセッションとなった。
フジテック 友岡賢二執行役員:ワークスタイル変革をリードする人材とは
フジテックは、エレベータやエスカレータの研究開発・製造・販売・保守を行っている企業だ。同社は、24時間365日、エレベータ、エスカレータを使っている顧客にサービスを提供している。そこで同社は、Google Apps for Workを導入して、常に顧客とつながる環境を構築した。ただし、友岡氏は、Google Apps for Workの1つ1つのツールが、すぐに課題を解決するわけではないと、次のように説明した。
「左手には常に現場の課題があり、毎日、さまざまな課題が生まれている。そして、右手にはGoogle Appsのようなさまざまなツールがある。右手にのった瞬間は、その使い方がわからないが、あるとき、課題とツールがピタリと合う瞬間がある」(友岡氏)
それには、現場に足を運び、現場の痛みや苦しみが自分化して、課題を解決しようと、常に考えることか重要だと説く。そして、自らの手でソリューションを考え、現場に適用する。すると、失敗する。再び考えて、現場に適用する。このサイクルを高速に何回も回すと、あるとき、ツールがビジネスソリューションになるのだと説明する。
では、Googleの個々のツールの使い方はどうやって勉強すればいいのか。友岡氏は「ユーザー会だ。答えは会社の中にはない。コミュニティに参加してほしい」と語り、ワークスタイル変革におけるコミュニティの重要性を強調した。
「コミュニティに参加する。コミュニティから学ぶ。コミュニティに貢献する。こうした働き方こそが、企業のワークスタイル変革をリードする人に求められるスキルではないか」(友岡氏)
最後に「従来の基幹システムはそのままで、人の肌に触れるところをGoogleに変えることで、システムがモダンになる」(友岡氏)と述べて、セッションを終了した。
PwC:Googleを戦略パートナーとして選び、Google Apps for Workを導入した理由
プライスウォーターハウスクーパース(以下、PwC)は、世界最大級のコンサルティングファームである。そのPwCがGoogleとの協業を発表したのは、2014年10月のこと。この協業により新しいジョイントビジネスを展開するだけでなく、PwC自身もGoogleのプラットフォームを導入することになった。
今井氏のセッションでは、協業の背景とコンサルティング業界でいま何が起きているのかが語られた。まず、現在のITについて、今井氏は次のような認識を示した。
「ここ数年間の技術の進化はディスラプティブ(破壊的)だ。たとえば、ビッグデータ解析によるコンシューマビヘイビアの分析により、メーカーと消費者との距離はものすごい勢いで縮まっている。その結果、20年間続いてきた流通と製造との産業構造が大きく変わりつつある。また、3Dプリンタにより、自分の新しいアイデアを新しい事業に転換できる可能性も出てきた。フィンテックも新しいうねりだろう。フィンテックにより、金融業はもはや特別な業種ではなくなるかもしれない」(今井氏)
では、PwCが属するコンサルティング業界はどうなのか。最もプロフェッショナル性を求められると考えられるが、ITの進化、特にAIの進化と無縁ではない。今井氏は「たとえば税務、会計監査、内部監査などの業務は、かなりの部分をAIにリプレースされるのではないかと思う」と危機感を語った。
ただし、それを否定するのではなく、積極的に取り込む姿勢を示し、そのために、既存のレガシープラットフォームを切り離し、Google Apps for Workに切り替えたのだという。
Googleを選んだ理由としては、Googleがコンシューマ起点の新しい技術を豊富に持っている点、コスト、グローバル対応、セキュリティなどを挙げ、アメリカ、カナダ、ブラジル、オーストラリア、ノルウェーなどの拠点で、すでにGoogle Apps for Workを活用され、日本でも7月から本格的に導入されると述べた。
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