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  • 2016/05/20 掲載

小島プレス工業が推進する金融EDIの標準化は、日本版インダストリー4.0の先を行く

インダストリー4.0の先に見える「ソサエティー5.0」

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製造業の支援を目的としたIoTの取り組みが世界的に加速する中で、日本もその流れに遅れまいと第四次産業革命「インダストリー4.0」への新たなチャレンジが始まっている。日本政府は中堅・中小企業の生産性を高めるため、成長戦略2016に盛り込まれる予定の「ソサエティー5.0」という概念を目指して、ITを駆使した次世代型の「スマート工場」の導入を支援すると発表し、2020年までにスマート工場を全国50カ所に広げようとしている。こうした中で、愛知県の自動車部品メーカー小島プレス工業は、中小企業におけるEDI(Electronic Data Interchange:電子データ交換)の共通化に着手し、スマート工場を実現するための基盤整備を行っている。日本版インダストリー4.0、そして、さらにその先にあるソサエティー5.0を目指した同社の取り組みについて話を聞いた。
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小島プレス工業


トヨタの代名詞「かんばん方式」 初実験は小島プレス工業で実施

 小島プレス工業は鉄板プレスから、樹脂、電子・通信部品など幅広く事業を展開し、1万2000種ものコンポーネントを供給する愛知県豊田市の自動車部品メーカーだ。中堅規模のグループ企業を数多く形成し、先進的な取り込みに挑んでいる。

 トヨタ系一次サプライヤーである同社は、これまでユニークな取り組みを続けてきた。その最たる例が、モノづくり「造るものをつくる」という考え方のもと、ショットガン方式という新しい仕事の進め方を生みだした。ショットガン方式とは、生産準備において、ロスを極小化するしくみで、これにより従来発生していた手戻りを約90%削減できた。

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金型を縦に積み上げることにより、ワンショットで3工程を完了させる「ちょうちんプレス機」。このマシンは生産技術分野で権威のある「大河内記念生産特賞」に選ばれた

 小島プレス工業 総務部 参事 兼 IVI 幹事 兼子 邦彦氏は同社の強みについて次のように語る。

「我々の強みはグループ経営にあります。小島グループは現在、関連会社および団体が30社を数え、社員数も7500人を超える規模となっています。各社が分離独立し、専門部品を生産・管理する経営手法が展開できるため、実証実験を行いやすい環境が整っているのです。実はトヨタのかんばん方式が始まった際も、我々が最初の実証実験の会社になりました。その意味ではモノづくりに対するこだわりには大変強いものがあります」

 また、「物を大切にする、生かす」という観点から、工場再生紙による独自のトイレットペーパー製造機、工場内の水エネルギーを活用した水力発電機など、ユニークな装置を開発。また山形のベンチャー、Spiberと共同で「Xpiber」(エクスパイバー)を設立し、鋼鉄の4倍以上の性能を有する新素材「QMONOS」の量産化も検討している。

中小企業こそ必要なMES、まずは共通EDIで企業間の工場を連携

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 小島プレス工業のこだわりは、製造現場である工場における効率的な生産システムにも表れている。インダストリー4.0というキーワードが話題になる中で、同社は製造現場の変革にいち早く取り組んできた。

 そのひとつが、IVIのワーキンググループ「企業を超えて連携する自律型MES(製造実行システム)」での取り組みだ。同社がファシリテーターとなりMESの実証実験を進めているのだ。

「本当にMESが必要なのは中小企業なのです。また業界によっては、ほとんど何も進んでいない分野もあり、付加価値の高い製品を効率よく生産できていません。自動車産業を手本にして、生産性を高めたいという思いもあるのです」(兼子氏)

 いま国内の中小企業では、MESの導入や自動化が遅れ、ほとんどの業務を人手で行っているのが実情だ。発注企業への生産指示や調整・進捗管理などは人海戦術だ。また発注企業の状況をリアルタイムに把握できないため、何かトラブルが発生すれば、最終的に人が調整を行わなければならない。

 そもそも現場のIT化もバラバラで、受発注・見積り・決済・出入荷などの電子データを企業間で交換するEDI(Electronic Data Interchange:電子データ交換)の整備もできていない。情報共有は台帳・電話・FAX・メールなどに頼り、効率が悪いという課題を抱えている。

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中小企業の生産現場では、MESの導入や自動化が遅れており、大半の業務を人が行っている
(出典:IVI)


 この課題を解決するために、小島プレス工業ではまずトヨタ系の二次・三次受け企業に対して、共通EDI(GREEN-EDI)を開発してきた。トヨタ系の一次系企業は、独自のEDIを使っており、その下の企業は300種類もの異なる画面に対応しなければならなかった。さらに三次受けの協力企業では、納品書なども手書き伝票を使うことが普通だ。グループ企業の多い同社は、誰もが使いやすい共通EDIの必要性を痛切に感じていた。

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トヨタ系の一次系企業は、独自のWebEDIを使っており、その下の企業は多くの異なる画面を強いられていた。さらに三次受けの協力企業は手書き伝票も当たり前で、中小企業こそEDIが必要だった

 同社では、この共通EDIをクラウド型サービスにして破格の料金で使用できるようにしたそうだ。クラウド型EDIサービスにした理由は、2011年にタイで大洪水に見舞われたことがきっかけだ。タイに進出した日系中小企業も大被害に遭い、潜水士が唯一の金型を水中からサルベージしていた。「しかし我々はショットガン方式を使い、製品と同時に金型も製作していました。タイにあった金型情報も手元にあり、すぐに金型をつくり、日本で代替生産して現地へ部品を送れたのです」(兼子氏)

 同氏は「現時点でトヨタ系一次企業・二次企業の約1000拠点に、この共通EDIが使われています。最終的には5万5000社すべてのトヨタ系企業に導入していただく予定です。もともと共通EDIは、経済産業省・中小企業庁の委託事業として開発したもので、自動車産業だけでなく、他産業にも広めようという考えがあるのです」と強調する。

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小島プレス工業が二次・三次受け企業に対して開発した共通EDI(GREEN-EDI)。これはモジュールを導入することで、自動車部品業界だけでなく、他の業界にも利用できるような構造になっている

 そこで同社では、共通EDIをベースに、企業を超えて工場同士をつなげ、生産指示情報を共有することで、発注企業から受注企業に向けてタイムリーに対応できる仕組みを構築しようとしているのだ。

【次ページ】「金融EDI」は日本版インダストリー4.0のベースになるか
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