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- 2015/09/11 掲載
サントリー、東急、伊藤忠が取り組むメセナ(文化事業)マーケットの可能性
地方創生で注目のビジネスに!
文化施設を民間活力で活性化する「国家的課題」
民間活力の導入「官民パートナーシップ」(PPP/Public-Private Partnership)と言えば、都市再開発などで民間資金を活用した大規模なプロジェクトPFI(Private Finance Initiative)が注目されるが、公共施設の運営を民間に委託する「指定管理者制度」も2003年に新たに導入された後、全国的にひろく行われて、成果をあげている。
そんな「公的資産マネジメント」の対象の公共施設には、美術館、劇場、音楽ホールのような文化施設も含まれる。かつてのバブル経済の時代には「ふるさと振興」の旗印のもと、「住民が一流の芸術に触れる機会を増やし、文化的水準の高い風土をつくりあげたい」と、全国の地方自治体が公立の文化施設の建設を競った。だが、その目的は立派でも、いったん建ててしまうと利用率が低迷し「宝の持ち腐れ」になっている“ハコモノ”は少なくない。
所蔵する美術品が少なく「常設展だけでは空き展示室ばかり」の美術館。著名な音楽家が「音響効果がすばらしい」と絶賛しながら、音楽イベントは年に10回も開かれないホール。そして、建設から20年以上が経過して老朽化が進み、大規模修繕を控えて「自治体のお荷物」と化している文化施設もある。
地方創生の『総合戦略』も、「地方公共団体において、所有する公共施設・公的不動産(PRE)の有効活用に係る体制整備が不十分といった課題がある」と、はっきり指摘している。そして「真に必要なインフラの整備・維持管理・更新と財政健全化の両立のために、民間の資金・ノウハウの活用が急務となっている」と、民間活力の導入を強く促している。利用が低迷する文化施設を民間活力で活性化するのは、地方創生にかかわる「国家的課題」になっている。
メセナに取り組んできた企業は自治体の最良のパートナー
しかし、文化施設の運営には、公園やスポーツ施設など他の施設とはまた異なる難しさがある。たとえば地方の美術館で、美術雑誌で紹介されて話題になるような企画展を開きたければ、それなりの企画力と美術界の人脈が必要だ。地方の音楽ホールで、一流の演奏家を呼んでファンが遠くからわざわざやって来るような音楽イベントを開きたければ、やはりそれなりの企画力と音楽界の人脈が必要となる。「人を呼べるイベント」を企画し、成功させるには、民間企業でもただの「施設運営のプロ」であるだけでは、十分とは言えない。
求められているのは「文化イベントの企画・運営のプロ」の民間企業である。とは言っても、たとえばアートイベントの企画会社や音楽プロモーターでは、企画力や人脈は豊富でも“ハコモノ”自体の運営の経験は乏しいのがふつうで、帯に短し、たすきに長し。
それよりも適しているのは、社会貢献の一環として「メセナ(文化事業)」に取り組み、自ら美術館、劇場、音楽ホールなどを開設・運営した経験があり、メセナ専門の部署、関連会社、財団などを設けて文化事業の専門家を採用・育成している企業と言える。
そんな企業には、自社保有の“ハコモノ”の運営経験も、人を呼べるような美術展や音楽イベントの企画力も、美術界や音楽界の豊富な人脈も兼ね備わっている。商品のデザインや広告宣伝活動を通じて培ったクリエイターやアーチストの人脈も、物を言うことだろう。
「地方創生」で文化施設の活性化を迫られた地方自治体にとって、そのようにメセナに積極的に取り組んできた企業は最良のパートナーになりうる。すでに、自治体の指定管理者制度でもPFIでも、そんな企業の参加が始まっている。
【次ページ】サントリー、東急、伊藤忠が自治体の文化施設を活性化
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