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- 2015/03/06 掲載
「VIVIA.com.gh」共同創始者 大山 知春氏が語る、ガーナでECサイトを立ち上げた理由
世界のフリーランス: 「VIVIA.com.gh」 共同創始者 大山 知春氏
金融コンサルタントから起業を決意した理由とは
大山 知春氏(以下、大山氏)■女性が自立して生活できる「食いっぱくれない」仕事として、まず、“金融”の道に入ったんですよ。私の母は、子供のために離婚せずに、何個もパートを掛け持ちしながら、自分のためには一切お金を使わない人でした。そんな母の姿を見て育ったことが大きかったと思います。 ファイナンシャル・コンサルタントとして小さな会社で自己完結型の仕事をして、20代後半で自分が目標としていた年収を稼げるようになりました。
仕事は好きだったんですが、リーマンショックの頃、大きなロスを抱える投資家を目の当たりにして、「もっとコンサルタントとして賢明な判断、アドバイスを行えるようになりたい」と思う気持ちが強くなったんです。同時に“金融”という”実業”とは離れた仕事に少し“空しさ”を感じていました。学ぶ機会の少ない環境に閉塞感を感じて「知見を広めたい!」と考えるようになって、次の目標に目が行くようになって…。 そんな時にビジネススクールの存在を知りました。ビジネススクールで何を勉強できるかなんて全然知らずに、直感で「これだ!」と思い、飛び込こんでしまったんです(笑)
そして、オランダのNyenrode Business Universityに留学しました。ここを選んだのは…一目惚れです。 「ビジネス界との結びつきが強いな」ってすごく感じたのもありますね。
1年間、世界19カ国から集まった39名の学生たちと、同じキャンパス内の寮で家族のように暮らしました。そんな中で、 特にアフリカ出身者の同僚たちとは気が合って、自然と仲良くなっていきました。時おり「自己中心的だな」と感じる個人主義の欧米人と比べると、周囲との協調や調和を大事に考えるアジア人と通じるところがあったように思います。みんな、教養が高くて、自国の歴史や文化に精通していて、それでいて気張ったところもなく、オープンで…これまで関心がなかったアフリカに好感を持つきっかけになりましたね。
経済成長著しいガーナに、ECサイトが存在していなかったと知る
大山氏■ガーナは近年、商業用オイル生産が始まったこともあり、経済成長が特に目覚ましい国だったんです。それなのに色々なビジネスの話をしている中で、ガーナにはまだ(当時)、オンラインショッピングサイトがないと知ったんです。 その頃の日本ではオンラインショッピングの急成長モデルがありました。それを目の当たりにしていた私には「ガーナは大きなビジネスチャンスの場だ!」って映ったんですよね。
そして、クラスの中でも極めて優秀だったガーナ人(現在の同僚)と共に起業を目指し、プランニングを始めました。2013年はじめのことです。 2013年7月に卒業論文を兼ね、現地で1ヶ月以上マーケットリサーチを行って好感触が得られたので、その最中に会社登記を行いました。まだ、資本金の目処などは全くついてなかったんですけどね。
そんな私の様子をブログに書いていると、前職でお世話になっていた日本人投資家の方が「アフリカでやりたいことがあるならばやってみたら良いよ」と、シードファンドを投資して下さると申し出てくれたんです。大きな責任を感じると共に、「これは流れが向いている!」と感じて、その瞬間、迷わず私もガーナに行って働くことを決断しました。
――ガーナで働く時に抑えておくべきルール・文化について、日本と異なる価値観やビジネスルールはありますか?
大山氏■一言で言えば「日本の真逆」といったところですね。時間通りにミーティングが始まることはまずありません。2、3時間ずれるのは良い方で、ミーティング日が変更になることもよくあるんです。1週間前にミーティング約束なんてしようものなら、必ず忘れられるので、前日のリマインダーは必須ですよ。納期も同じ。Emailを送って、返信があるという方が稀かもしれませんね。電話ですら取らない会社もあって、“会って初めて物事が進む”っていうスローな国なんです。 その代わり、アポなしで飛び込んでいっても、大抵、嫌な顔をせずに会ってもらえます。フレンドリーな人が多くて、突然の訪問にも迷惑がられることはありませんね。
文化として覚えておきたいのは、「物の受け渡し、握手は、右手で行う」というのが“礼儀”ということです。“身だしなみ”も重要です。ガーナ人はピシッと身体にフィットするものを好み、フォーマルにドレスアップします。靴の汚れを気にするビジネスマンも多いですよ。
一方で、日本と似ているところもあります。多くの会社は封建的ですし、上司・年配者が絶対です。日本人のように、ガーナ人も「No」と言えない方が多いです。
ただし、日本人のように謙遜することはなく、悪気はないのですが(まあ、だから厄介なのですが)、楽観的すぎて自分のキャパシティー判断を誤り、「できる」と約束したことができないということが往々にしてあります。これはマネージメントをする上で、頭を抱えるところですね。
つまり、日本そのままのビジネス習慣を持ち込むと、何もできず、大きなストレスになります。 幸い、私の場合、ビジネススクールでの異文化交流が良い下準備となり、助けてくれましたが、それでも閉口することは多くありましたね。
――ガーナにフリーランスの方はいるんでしょうか?
大山氏■ガーナのビジネスを一口でまとめて語ることは難しいです。まずは“フォーマルセクター”、“インフォーマルセクター”と分けて考える必要があるんです。だいだい銀行口座を持つ人は、人口の3割と言われていて、この層が“フォーマルセクター”に属する会社員になります。つまり会社員という職種は、人口全体で見れば少ないんです。
では、その他の“インフォーマルセクター”とはどういう人たちなのかというと、 大工、電気工、車の修理工などの職人、農家、漁師、小さなコンテナなどで売店を営む人、頭に物を乗せて、路上で売る行商人など、専門的で個人的な商売をしている人たちです。 ガーナは渋滞が酷いのですが、渋滞で止まっている間に、色々な物売りがやってきて、つま楊枝、ティッシュペーパーなどの日用品から、子供のおもちゃ、果物、軽食、飲み物、新聞まで買うことができるんですよ。それが“インフォーマルセクター”の人たちの仕事なんです。
【次ページ】ガーナのインフラ、物価・給与水準は?
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