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- 2014/06/11 掲載
リクルート出身、東京大学卒――なぜ「人」にブランドが備わるのか?
【IT×ブランド戦略(24)】
不確実な未来に対する葛藤を「断ち切る」
「不確実な未来に対する葛藤」に対して、「意思決定の結果を先取りさせること」がブランドの持つ本質的な力である。しかし、前回の連載(第23回)で、マッチングプラットフォームという存在との対比を通して考察した結果、ブランドにはもっと積極的な定義がふさわしいということが見えてきた。そのポイントは、マッチングプラットフォームも確かに意思決定の結果を「先取りさせる」ことを可能にするものではあるが、不確実な未来に対する葛藤そのものを「断ち切る」力にはなり得ない、という点だ。
例えば、第21回で紹介した通り、リクルートには数々のマッチングプラットフォームがある。しかし、考えてみてもらいたい。「リクナビで紹介されているから良い企業に違いない」とか「じゃらんに掲載されたあの温泉は、間違いなし」「さすがカーセンサー、今日もいい品揃えだな」とは、人は思わないものであって、ただ仕組みとして効率的に取引相手を探索するという「機能」だけが期待されているのである。
マッチングプラットフォームは、何らかの世界観に基づく価値発信をするものではなく、ただひたすら透明なシステムとして存在することが本分なのだ。
ブランドの本分とはその世界観であり、「存在感を示さない透明なブランド」などありえない。この点を踏まえると、マッチングプラットフォームとブランドはいよいよもって対極的な存在だということがわかる。そのマッチングプラットフォームは、“プラットフォーム”というだけあって、それ自体が品質保障をするというよりはむしろ、できるだけ透明で、存在感を示さないことがよしとされるものである。
「リクルート出身」というブランド
消費者にとっての認知度が高いブランドを有する企業は、単純に採用活動における宣伝費だけをとっても、大いにメリットを享受できる。ディズニーランドを経営している会社だからオリエンタルランドに、あるいは旅行の際にサービスを使ったことがあるからHISに就職したい、これらは直感的に納得しやすい話である。
一方、BtoBの事業を行っている会社は、企業名が一般の学生に知られていないので、BtoCのそれらと比較すると新卒就職市場における立場は不利である。リクルートも、創業当初は事業や商品を通して学生との良質な接点を持っているとは言えなかった。にも関わらず、いまやリクルートは対学生への認知度が高く、就職ランキングでも上位にある。
その理由は何か?それは、「起業を目指すのであれば、あの会社は修行の場として最高」「常に新たな事業を生み出し続けるDNA」「若いうちから卒業(退職)し、独立もよし、転職もよしで、既存の枠にとらわれずに、自分のスタイルで活躍できる」というイメージに支えられているからである。
かの企業の生み出した唯一のブランドは、「リクルート出身」という謎のブランドなのであった。というわけで、今回からは「人材」にまつわるブランドを取り上げたい。
【次ページ】「人」にブランドが備わるという不思議
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