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  • 2014/01/14 掲載

【IT×ブランド戦略(19)】観客の無意識に語りかけ、人々にリーチする宮崎駿の革新力

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宮崎駿監督最後の作品「風立ちぬ」は興行収入が120億円を超えたにも関わらず、まだ赤字だという。それだけの投資判断を行わせたことが最大の「宮崎アニメ」ブランドのなせる業であるが、映画作品というジャンルで100億という規模のビジネスを成立させる理由は一体何なのか。それは、ブランド研究にとってどのような意味があるのだろうか。

「作家性と興行の両立」という永遠の課題

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 宮崎駿監督最後の作品「風立ちぬ」は興行収入が120億円を超えたにも関わらず、まだ赤字だという。

 あるテレビ番組で、プロデューサーの鈴木敏夫氏がそう発言したそうだ。多少はパフォーマンスの意味もあるだろうけれど、制作費として100億円規模の出費があったということはそれなりに本当のことなのだろう。

 通常のビジネス感覚では、これだけの資金を投資しようという意思決定は、なかなかできない。ある意味で、これこそが「宮崎アニメ」ブランドのなせる業だ、とも言えるが。

 前回指摘した通り、ジブリの制作スタンスとは「みんなが期待する予定調和的な作品を、それなりのクオリティで、安定的に生み出す」というものではない。むしろ、「監督自身が自らの作家性を存分に追求し、人々の予想の範疇に収まるのではなく、予想を超えて何かを問いかける作品づくり」を目指してきた。

 これが結果的に人に受け入れられるかどうかということは、誰にも事前に検証できないので、本質的にはギャンブルのような話だ。安定して50億円の成績を叩き出すポケモン映画とは随分様相が違う。

 映画産業は、現代アートの世界とは違うし、まして自費出版の詩集の世界とも違う。多くの人の支持を得て、お金を出して観てもらって、企業として利益を生み出すことが求められる。

 この、「作家性と興行が両立する」という話は、創作を業とするあらゆる人間の願望でもある。もちろん監督自身に「好きなように作品が作れて、いいですね」なんて言ったら「私がどれだけのしがらみにがんじがらめになって監督をやってると思ってるんだ」と、烈火のごとく怒られるだろうけれど、それでもやはり、「作家性と興行が両立する」という基準で宮崎駿監督以上の結果を出している人は、世界的に見ても数えるほどしかいない。

 いったい宮崎アニメの裏側では、どのような力学が働いているのだろうか?

【次ページ】観客の無意識に語りかける、宮崎駿のディレクション
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