- 2012/03/30 掲載
【オバタカズユキ×沢田健太 対談】就活シーズンの今、資格取得は何のためかを考える!――ソー活、縁故採用、資格ビジネスの現実をどう読むか(3/3)
『資格図鑑!』オバタカズユキ氏×『大学キャリアセンターのぶっちゃけ話』沢田健太氏
縁故やソー活、学歴フィルター。2013年の就活はどうなる?
――最後に最新の就職活動事情についてお聞かせください。2013年卒業予定者の就職活動は、経団連が倫理憲章を改定し、広報開始時期を2か月遅い12月にしました。現状ではどのように推移していますか?沢田氏■まだ結果が出ていないので、例年より厳しいかどうかは今の段階では分かっていません。ただ、活動期間が実質的に短縮されたことで、すでに息切れしている学生が出てきてしまってはいます。「期間が長い方が息切れするのでは?」と思われるかもしれませんが、実は逆です。期間が短いからこそ短期で決めようと思って猛ダッシュする学生が多いんですね。
オバタ氏■企業選びに関して、「選択と集中」みたいな発想は出てきていないんですか?
沢田氏■まだまだ、「数打たなければ駄目」という恐怖心は、学生に根強くあります。ただ、合同説明会の動員は減っているようです。おそらくは、ゆっくり見て回る時間がないために個別説明会に直接参加して、採用ステップを圧縮しようとしているのでしょう。
――岩波書店による、いわゆる「縁故採用」が問題になった一方、ソーシャルメディアが普及し、「人脈力」が以前より必要になっているという指摘もあります。
オバタ氏■Facebookなどで社会人と繋がっているだけでは、果たして「人脈」と言えるかどうか疑問ですね。ただ、大学の先輩を探し、OB・OG訪問をお願いするツールとして使うことはできると思います。その程度のものだと割り切って使いこなせばいいんじゃないでしょうか。
「縁故採用」のほかでは、少し前に話題になったのが、大手企業が大学名によって企業説明会の予約の枠を別にして行っていた件です。ただ、大学階層別の「ターゲット採用」は実際にいくらでも存在するわけですし、就職と入試偏差値の連関性は確実にあると思います。もちろん、偏差値が低い大学にも優秀な学生は混じっていて、そういう人材を確保するためにも「MARCH(明治、青山、立教、中央、法政)未満は募集しない」なんていう不合理な採用活動はしないほうがいい。しかし、採用活動に手間と時間と金がかかっており、不況の影響で企業側にきめ細やかな選考を行う余裕がなくなっているのも事実です。
沢田氏■一方、人事部にとっては就職活動サイトでの募集によって、たくさんのエントリー数を確保し、実績にしたいという本音も強くあります。大手企業偏重の就職活動に対する批判もあり、昔よりは中小企業を受ける学生も増えてきてはいますが、「大手に落ちてから」と考えている学生が多いようです。いわゆる「就職のミスマッチ」をなくすためにも、企業は偏差値や大学名だけで絞るのではなく、実際の仕事の厳しさや求める人材の水準を明確に打ち出すことによって、学生をふるいにかけていく必要があると思います。
縁故の話で言うと、内定を取るための縁故についてあれこれ気にしても仕方がないので、学生はあくまで「その会社のことをより深く知るための縁故づくり」に励むことが必要。そこで得た生の声は、企業選びや面接での応対に生かすことができます。また、資格を取得するのでも、内定に有利な資格を持っているかより、その資格をなぜ取ろうと思ったのかを面接でしっかり語れることの方が大切だと感じています。
(執筆・構成:プレスラボ 宮崎智之)
1964年生まれ。上智大学文学部卒業。出版社勤務後、フリーライターになる。現在は、多ジャンルにわたってコラム執筆などを行なう。著書は、『何のために働くか』(幻冬舎文庫)、『だから女は大変だ』(扶桑社文庫)ほか。2006年からはライター業と並行して、コンテンツ企画・制作の(株)連結社を運営。プロジェクトごとにフリーランサーたちとチームを組み、さまざまな読み物作りに取り組んでいる。
●沢田健太(さわだ・けんた)
民間企業で営業職や人事職に従事。その後は、教育分野に転身。複数の大学(キャリアセンター)にて、キャリア支援に携わる。著書に『大学キャリアセンターのぶっちゃけ話』(ソフトバンク新書)がある。現在の主な関心事は、「就活と若者の不安」「正解を求めようとする就職活動生の意識」「大学におけるキャリア教育の今後」など。
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