- 2012/03/30 掲載
【オバタカズユキ×沢田健太 対談】就活シーズンの今、資格取得は何のためかを考える!――ソー活、縁故採用、資格ビジネスの現実をどう読むか
『資格図鑑!』オバタカズユキ氏×『大学キャリアセンターのぶっちゃけ話』沢田健太氏
大学の生き残り競争が激化……資格取得には奨励金も!
――『資格図鑑!』シリーズが刊行され始めてから10年が経ちます。その間、資格を取り巻く状況はどのような変化していますか?オバタカズユキ氏(以下、オバタ氏)■初代の『資格図鑑!』(2004年度版)が出版されたのは転職ブームとも言われていた時期ですが、すでにITバブルがはじけた後で、バブルのときのようなイケイケという雰囲気ではありませんでした。「会社が頼れないなら資格ぐらいは持っとかなきゃ……」と考えて取得する人が多かったように思います。ほぼ同時期にイラクで日本人の人質事件がおき、「自己責任」という言葉が流行っていましたが、あれはよく時代の気分を表していました。終身雇用・年功序列を柱とする日本的雇用制度に守られて働くのは時代遅れで、自己責任でキャリアを切り開いていく者だけが生き残れる時代になる、みたいな強迫観念に近いものが多くの若者を駆り立てていました。
その当時、転職で特に注目されていたのは外資系の企業で、2004年度版では「MBA(経営学修士)」、「USCPA (米国公認会計士)」、「EA(米国税理士)」、「BATIC(国際会計検定)」、「TOEIC(国際コミュニケーション英語能力テスト)」をひとまとめにした「国際ビジネス系資格」というカテゴリーを設けていました。後で詳しく述べますが、これらの中には今ではまったく耳にしなくなった資格もあり、『資格図鑑!』では数年前からカテゴリー自体をなくしてしまっています。
沢田健太氏(以下、沢田氏)■2004年以前からも学生への支援を行っていましたが、確かに『資格図鑑!』が出始めたころから、資格取得講座のコースを拡充するなど力を入れ出した大学が増えた印象はありますね。
オバタ氏■『大学キャリアセンターのぶっちゃけ話』を読むと、従来の就職課が1999年からキャリアセンターへ改組され始め、2004年あたりから急増していることがわかります。当時は資格スクール「TAC」に通う大学生を指す「タッカー」という俗語もあり、「資格でも取っていなければ生き残れない」というような雰囲気はキャンパス内でも感じられましたよね。それが、大学にキャリアセンターが設立された時期と重なっていることは興味深いことです。
沢田氏■そもそも、大学の生き残り競争が激化したことを背景にし、資格支援が充実され始めたという流れがあります。例えば、「TOEIC」の講座なんかは、表向き「社会がグローバル化している」みたいな文脈で語られていますけど、実際には「我が大学に入れば英語ができるようになる」と学生や保護者、そして企業に対してPRしたいのが本音でしょう。
――資格支援について、大学の取り組みとしてはどのようなものがあるのでしょうか?
沢田氏■大学が資格支援に力を入れる方法は大きく2つあって、1つ目は先ほども触れた取得講座コースの拡充。2つ目は、資格を取得した学生に奨励金を支給する制度です。
オバタ氏■えっ? 資格を取得するとお金が出るんですか?
沢田氏■はい、金額設定はさまざまですが、例えば難関資格を取ると数万円もらえるケースなどもあり、わりとスタンダードな制度になっていますよ。具体的には、パソコン資格の「MOS(マイクロソフト オフィス スペシャリスト)」を取ると3000円なんて大学もありました。大学の予算として組むことは問題があるので、後援会が支援する形にしているところがほとんどです。卒業生が在校生を支援すると言えば聞こえも良いですし。難関大学では「国家公務員総合職(旧・国家Ⅰ種)」の合格者に万単位の奨励金を出すケースもあります。
オバタ氏■私は『大学図鑑!』という年刊本も手掛けていているので大学の最新情報もいろいろ調べているのですが、奨励金制度がそんなに一般的だとは知りませんでした。資格取得講座の手法としては、大手の資格学校と組んで実施しているケースが多いのでしょうか?
沢田氏■そうですね。資格学校が大学内で講座を開くか、学生が資格学校に行って授業を受けるかのどちらかです。もちろん、フリーランスの講師と契約することもあります。
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