- 2011/06/30 掲載
グローバル時代におけるR&D環境へのニーズとシーズ、設計・開発・解析をつないでイノベーションを起こす(2/2)
プライベートクラウドを活用したCAD/CAE環境
従来、CAD/CAE環境はチーム分業のため、複数拠点にPCがあり、データの流れは煩雑だった。そのため設計・開発・解析の間での情報のやり取りがスムーズにいかないことも多かった。そこで山本氏が提案するのが、プライベートクラウド的に社内にデータセンターを立て、解析用PCを一極集中させ、ストレージも一括管理するというものだ。そこにクライアント側からシンクライアントでアクセスするという形になる。
さらなる進化形では、HP Blade Workstationのようなハードウェア・ラックに分散したPCの機能を集約し、仮想サーバ・プライベート環境を構築する手法がある。
一般的なCAE環境では、手元の環境で解析を行うが、大規模モデルや流体モデルなどの複雑な解析をするとCPUパワーが要求され、HPC(High Power Computing)のような高性能なサーバクラスター環境が必要になる。
そこで山本氏は、HPC環境、仮想サーバ・プライベートクラウド・Thinクライアント環境、仮想サーバ・プライベートクラウド・Thinクライアント環境+解析データ管理(Teamcenterを導入)の環境でメリット・デメリットを検討したうえで提案を行った。
実際にITインフラを構築する際には、リクエスト応答にかかる「レイテンシー(遅延時間)」や、データ転送時の「ネットワークバンド幅」、「クライアント/サーバの構成」が重要な要素(IT環境の未知数)となる。
このような観点を踏まえ、「CAD」「CAE」「Teamcenter」を使って、いくつかのオペレーションを用い、想定されるプライベート・クラウド環境における仮想サーバ/Thinクライアントの実測テストを試みたという。
RGSの操作感は遅延が大きくても(クラサバが遠く離れた場所にある)、ローカルと変わらずに快適に使えることが分かった。次にCAEのテストでは、同社のNX7.5.2/NX Nastran7.1を使用し、CAEに関わる操作スピードや、解析結果のFTP転送を行った。ファイルオープンはCADと同様の傾向で、RDTではRGSより倍以上も時間が掛った。CAE特有のテストとして、ポリゴンボディをCADモデルから作成する際には、RGSのほうがRTDよりトータルで10倍以上も速かった。またFTP転送テストは、データが大きいほど転送が遅くなるという結果が出た。Teamcenterを利用した計測では、2層構成は遅延の影響を受けやすく、4層構成は遅延の影響をほとんど受けないことが分かったという。
以上のテスト結果から、山本氏は「仮想サーバー・Thinクライアント環境ならば、リスク管理あるいはCAE作業環境の整理と効率アップに対する有効な手段になりえる」と結論づけた。
RGSでリモートアクセスやコラボレーションが高速化する理由
RGSには、HPが開発した高度な圧縮技術「HP3」が採用されている。転送データを170:1の高圧縮率で高速エンコードするため、HP Blade Workstationの処理とクライアントでのデータ表示にタイムラグがほとんどなく、3Dグラフィックス動画もオリジナルとほぼ同じ品質でストレスなく表示できるのだという。
また久保田氏は、RGS 5.4.5の新機能についても解説。海外への接続など、狭帯域ネットワーク環境においても活用できる「Ajust image quality」といった機能を採用し、モデル回転時に画質を落としたり、チューニングで遅延を改善している。
久保田氏は、グラフィックスの仮想化についても言及。HP Blade Workstationを導入しているユーザーの課題は「利用先が自社サイト内とは限らない」「リソースを効率よく利用したい」の2点だ。前者は画面転送プロトコルの改善で解決できる。後者はWorkstationの仮想化技術が必要だ。ただし、マイクロソフトのWindows Server 2008 R2/Windows 7 SP1の「Hyper-V」で追加された「RemotoFX」では、すでにグラフィックスの仮想化にも対応済みだ。たとえばHP WS460c-G6(ビデオメモリー1GB)上では最大4台の仮想Workstationを稼働でき、集約率が4倍になる。2枚のグラフィックカードを入れると、24VMまで稼働できるのだ。
このほかにも本セミナーでは、座屈、応力、構造解析、熱伝熱、流体、電磁気、振動、音響などの多様な分野で「有限要素法」(FEM)による解析が行える「NX Nastran」やシーメンスPLMソフトウェアの解析データを管理する「Teamcenter for Simulation」、従来のセキュリティレベルを保ちながらiPadで利用できる「Teamcenter Mobility」についても解説がなされ、次世代PLMコラボレーションの道筋が明かされた。
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