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ここ数年、サーバ仮想化が大きく注目されている。社内システムやコマースシステムの機能増強やサービス拡充へのニーズは広がるばかりであり、増え続ける物理サーバの運用管理の負荷やコスト負担は限界に近づいている。この問題を抜本的に解決するサーバ仮想化のしくみとメリットについて、基本的なトピックスから見ていくことにしよう。
サーバ仮想化が注目される理由とは?
企業におけるITコストは、増大の一途を辿っている。中でも、サーバに対する運用負荷やコストの増大は著しい。企業規模や業態によって事情は異なるだろうが、大企業では、サーバルームに設置された無数のサーバ群、部門サーバなど、数百、数千台ものサーバが稼働している例も決して少なくはない。
このような大量のサーバを管理するだけでも、大変なコストと時間がかかり、サーバ・ハードウェアの故障などのリスクもサーバの台数が増えるほど増大する。さらに問題なのは、常時稼働している大量のサーバ全てが、有効活用されているかどうかわからない、ということだ。お金をかけて設置したサーバが100%近い稼働率で有効活用されていればいいが、現実には、ほぼ遊んだ状態になっているサーバも存在する可能性がある。
このような問題を抜本的に解決するキーテクノロジーとなるのが、サーバの仮想化である。サーバの仮想化とは、1台の物理サーバ上に複数の仮想サーバを稼働させるための技術である。たくさんの物理サーバを1台の物理サーバ上の仮想サーバで稼働させるように統合(サーバ統合)すれば、物理サーバの数を大幅に削減できる。
サーバ統合のメリットは、管理する物理サーバを削減することで、運用管理コストを削減できることだ。また、サーバを統合することで、稼働率の低いサーバの無駄を減らし、さまざまな業務システムやWebシステム、コマースシステムなど、さまざまなシステムの稼働負荷の変動にも柔軟に対応することが可能になる(
図1 )。
世界同時不況が進行する今日、サーバ仮想化によるIT運用経費削減の動きは大きく広がっており、即効性のあるソリューションとして大きく注目されているのだ。
図1 サーバ統合の基本的な考え方
サーバ仮想化を実現する技術
サーバ仮想化を実現する技術には、OSレベルの仮想化と、「ハイパーバイザ」というアーキテクチャを使った仮想化方法に大別される。OSレベルの仮想化は、物理サーバ上で稼働する1つのOS(ホストOS)の機能によって仮想化を実現する。このため、「ホストOS方式」と呼ばれる(
図2 )。ホストOS方式では、ホストOSがハードウェアリソースを分割したり、仮想サーバの制御を担当する。代表的な製品にはサン・マイクロシステムズの「Solaris Containers」やマイクロソフトの「Viturl Server 2005」(いずれも旧製品)などがある。
図2 OSレベルの仮想化のしくみ ホストOSを必要とし、その上位の仮想レイヤー上にゲストOSを動作させる
この方法は、パフォーマンスが比較的高く、コストも比較的低いのがメリットだが、ゲストOSとホストOSをまったく同じ種類にしなければ稼働できないなど、運用の柔軟性に欠ける。このため、現在は「ハイパーバイザ」による仮想化が主流となっている。今日では、サーバ仮想化と言えばハイパーバイザによるもの、と考えて差し支えないだろう。
ハイパーバイザによる仮想化方式には、2つの方式がある。1つは、ハイパーバイザ上に完全に独立した仮想マシンを置き、そこにサーバOSを組み込む「完全仮想化(フル・バーチャリゼーション)」アーキテクチャだ。このアーキテクチャでは、ハイパーバイザはハードウェアコントローラと周辺機器のアクセスを仲介し、どのような種類のOS(ゲストOS)も修正無しに組み込むことができ、仮想OSであることを意識せずに運用が可能である。
しかし、完全仮想化ではハイパーバイザは、ハードウェア上でホストOSとして機能し、大きな負荷がかかり、パフォーマンスに影響する場合がある。この負担を軽減するための手段として考え出されたのが、「疑似仮想化(パラ・バーチャリゼーション)」というアーキテクチャだ(
図3 )。
図3 ハイパーバイザによる仮想化のしくみ(完全仮想化と疑似仮想化) 完全仮想化では、完全な仮想マシン上にゲストOSを動作させることができる。疑似仮想化では、OSの修正が必須となる
疑似仮想化では、ゲストOSを修正してハイパーバイザと連携/協調するようにし、ゲストOSが仮想化環境を認識する形で動作する。このため、ハイパーバイザに負荷が集中する完全仮想化よりもパフォーマンスが向上する。BSD、Linux、Solarisといった、修正可能なオープンソースOSをゲストOSとして利用する場合に有効な方法だ。なお、ハイパーバイザ方式の仮想化製品のほとんどが、完全仮想化/疑似仮想化の双方に対応している。
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