• 2025/04/05 掲載

あまりに愚かなトランプ関税「損をするのは米国民」のワケ、日本は対抗関税すべきか(2/2)

連載:小倉健一の最新ビジネストレンド

  • icon-mail
  • icon-print
  • icon-hatena
  • icon-line
  • icon-close-snsbtns
34
会員になると、いいね!でマイページに保存できます。

トランプ関税は米国の国益にかなっていない断言できる理由

 トランプ政権による一方的な関税の導入は、本当に米国のためになるのだろうか。経済の仕組みから考えると、非常に疑わしいと言わざるを得ない。

 関税は、輸入品の値段を上げることで、国内の同じような製品を作る産業を守る効果がある。関税による税収は政府の収入になる。トランプ政権は、関税によって国内の製造業をよみがえらせ、雇用を生み出し、貿易赤字を減らせると主張している。

 しかし、経済学の基本的な考え方や実際の研究結果は「関税が国全体の豊かさを低下させる可能性が高い」と示している。関税は輸入品だけでなく、輸入品を部品や原材料として使う国内製品の値段も押し上げる。

 これは、米国の消費者や企業にとって負担が増えることを意味する。特に世界的な部品調達の流れに組み込まれている産業は、コストが増えることで国際的な競争力を失うかもしれない。関税によって無理に守られた産業に、本来もっと効率的に使えたはずの労働力やお金が流れ込み、経済全体の効率が悪くなる危険もある。

 米国議会予算局(CBO)は、これまでの分析で関税が米国の物価上昇、企業の投資意欲低下、実質GDP(国の経済規模)の押し下げにつながると指摘してきた。

 関税収入というプラス面はあるが、経済全体へのマイナス影響がそれを上回る可能性が高い。ピーターソン国際経済研究所の研究者らが発表した論文「The Return to Protectionism」(Fajgelbaum et al., 2019)は、2018年の米国の関税措置による負担の大部分が米国国内の消費者と企業にかかり、国全体の豊かさが低下したと結論付けている。

 つまり、関税は米国国内に「得する人」(守られる産業)と「損する人」(消費者、輸入を利用する企業)を生み出すだけで、国全体として見れば損をもたらす愚かな政策である。

トランプ関税に日本が「報復関税すべきではない」ワケ

 では、米国の関税措置に対して、日本は対抗して関税をかけるべきだろうか。腹立たしい気持ちから、やり返したいと思うかもしれない。

 筆者は、国際的な公平性や主権の問題として対抗措置を是とする考え方があることを理解する。米国に対して日本が思い切って対抗手段に出ることを否定しない。相手国が友好国であったとしても、倫理感のない振る舞いをしたのなら、それなりに対抗しておくこともまた正しい道であると思うからだ。

 しかし、純粋に経済的な損得だけを考えれば、対抗関税は自分たちの国の経済にもさらに悪い影響を与える。

 対抗関税を発動すれば、米国からの輸入品の値段が上がり、日本の消費者や米国製品を利用する企業の負担が増える。物価が上がる要因となり、国内経済の足を引っ張ることになる。日本の輸出産業が、米国によるさらなる報復措置のターゲットになる危険も高まる。関税のかけ合い、つまり貿易戦争は、世界全体の貿易を縮小させ、関係する国々どちらにも深刻な損害を与える。

 これは、WTOやIMF(国際通貨基金)、世界銀行といった国際機関が繰り返し警告していることである。標準的な国際経済学の教科書(たとえば Paul Krugman, Maurice Obstfeld, Marc Melitz 著 “International Economics: Theory and Policy”)も、関税が通常、かけた国自身にムダな損失を生じさせることを説明している。

 報復関税も同じである。Mary Amitiらによる研究「The Impact of the 2018 Trade War on U.S. Prices and Welfare」(2019)は、米国が他国へかけた関税の負担がほぼ完全に米国国内に跳ね返ってきたことを示した。

 同じように、日本が対抗関税をかけた場合、その負担の多くは日本国内の消費者や企業が負うことになるだろう。理論上、大きな国が貿易での有利不利の度合い(交易条件)を自分に有利にするために「最適関税」を使う可能性は議論されている(Krugman, 1991, “Strategic Trade Policy and the New International Economics”)。

 しかし、それがうまくいく条件は非常に限られており、やり返される危険を考えれば現実的ではない。純粋な経済的な損得勘定から見れば、対抗関税は自国経済へのダメージをさらに大きくする選択肢だ。

 トランプ政権による自分勝手な関税措置は、経済的な合理性を欠いている。関税は米国国内の消費者や企業に負担を押し付け、国全体の豊かさを損なう可能性が高い。Fajgelbaumらの研究が示すように、関税で得をするのは一部の産業だけで、損は広い範囲に及ぶ。米国自身にとっても、賢いやり方とは言えない。

 というか、米国がこれで偉大になるなどと考えているのだとしたら、よほどの……。米国はトランプ大統領の任期中に、競争力を落とすことになる。関税は実質的に自国民への増税であり、輸入に対する規制強化という側面を持つ。増税と規制で経済発展などした国はない。

評価する

いいね!でぜひ著者を応援してください

  • 34

会員になると、いいね!でマイページに保存できます。

共有する

  • 1

  • 2

  • 0

  • 1

  • 0

  • 0

  • icon-mail
  • icon-print
  • icon-hatena
  • icon-line
関連タグ タグをフォローすると最新情報が表示されます
あなたの投稿

    PR

    PR

    PR

処理に失敗しました

人気のタグ

投稿したコメントを
削除しますか?

あなたの投稿コメント編集

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

通報

このコメントについて、
問題の詳細をお知らせください。

ビジネス+ITルール違反についてはこちらをご覧ください。

通報

報告が完了しました

コメントを投稿することにより自身の基本情報
本メディアサイトに公開されます

必要な会員情報が不足しています。

必要な会員情報をすべてご登録いただくまでは、以下のサービスがご利用いただけません。

  • 記事閲覧数の制限なし

  • [お気に入り]ボタンでの記事取り置き

  • タグフォロー

  • おすすめコンテンツの表示

詳細情報を入力して
会員限定機能を使いこなしましょう!

詳細はこちら 詳細情報の入力へ進む
報告が完了しました

」さんのブロックを解除しますか?

ブロックを解除するとお互いにフォローすることができるようになります。

ブロック

さんはあなたをフォローしたりあなたのコメントにいいねできなくなります。また、さんからの通知は表示されなくなります。

さんをブロックしますか?

ブロック

ブロックが完了しました

ブロック解除

ブロック解除が完了しました

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

ユーザーをフォローすることにより自身の基本情報
お相手に公開されます