- 2025/04/19 掲載
AIが「生と死の概念」すら変える? 安野貴博氏が見据えるテクノロジーの未来(2/2)
核融合や再生医療…AIの進歩が与える影響範囲は想像以上か
AIが普及すればするほど電力が必要になるため、エネルギー源は重要な問題です。地球温暖化の観点からも、CO2を出さないといわれる再生可能エネルギーの発電効率がどれだけ上がるか、また、天候や時間帯に左右されやすい再生可能エネルギーの弱点を補完するための、蓄電池の容量とコストがどうなるかといったことは要注目のテーマです。
さらに核融合発電ができるかどうかで、人類社会の未来のシナリオが大きく変わってくるでしょう。
核融合は、軽い原子核同士を融合させて、より重い原子核をつくる際に、わずかに失われる質量が大量のエネルギーに変換されて放出される反応で、アインシュタインの特殊相対性理論の有名な公式「E=mc2」から導かれます。これが実現すると、太陽がほぼ無尽蔵のエネルギーを放出しているように、人類もわずかなコストでほぼ無尽蔵のエネルギーを手に入れることができます。これは人類発展の大きな岐路となる可能性を秘めているのです。
実はディープマインド社の研究などでは、この核融合の制御にAIの強化学習という分野を活用する研究が行なわれています。AIはエネルギー問題の解決の鍵も握っているかもしれません。
再生医療や遺伝子編集などのバイオテクノロジーの進化にも、AIが深く関わっています。
タンパク質の構造解析は、組み合わせが膨大すぎて大変手間がかかる作業でしたが、AIによってタンパク質の構造が予測できるようになったため、さまざまな化合物の探索が急速に進むようになりました。この研究は創薬研究などに活かせるもので、2024年にノーベル化学賞を受賞しています。近い将来には、AIがつくった薬は当たり前のものになっているでしょう。
ロボティクスもエネルギー問題もバイオテクノロジーも、AIの進歩によって恩恵を受ける分野です。AIの進歩は、これまでの想像以上に影響範囲が大きいと考えられます。
“永遠の生命”ともいえる? AIアバターの存在
SF的なところでは、AIは生死の概念にすら影響を及ぼすでしょう。都知事選の際に活用した「AIあんの」は、私のマニフェストを学習して、私の代わりに政策について回答できるようにしたAIです。
当時はマニフェストについての説明に特化したAIでしたが、このまま学習データを増やしていき、私の過去の言動のテキストデータや動画、音声ファイルなどを大量に学習させ、AIの性能も今よりももっと高まれば、どんどん本物の私の振る舞いを高精度に模倣できるようになるでしょう。
私がいかにも言いそうなことを、私の声色や話しぶりで発言できるようになれば、それが、私自身か、アバターなのかを見破ることは困難になります。
死者のアバターを残すこともできるようになるはずです。肉体は残らなくても、周囲の人は、その人の分身と話ができる。これは、形を変えた永遠の生命ともいえるかもしれません。
これは、ご遺族や生前関わった方からみると「死者への冒涜」という批判も出るかもしれません。死者が社会的影響力を持ち続けることが果たしてよいのかという議論も起きています。
AIの発展は、当たり前だと感じていた常識にも根本的な疑問を投げかけてきます。
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