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魅力度ランキングで低迷が続く茨城県だが、実はデジタル化やDXにおいては各都道府県の中でも先進的な取り組みを進めている。都道府県別のデジタル度を示すDCI(デジタル・ケイパビリティ・インデックス)では、福井県、東京都に次ぐ第3位(2022年)。こうしたデジタル化・DXを通して、魅力ある「新しい茨城県」の実現を目指している。そこで今回は、同県のDXに携わるキーパーソン4名に、その全貌について語ってもらった。
「新しい茨城」へDX基盤を整備
茨城県は、社会の変化に的確に対応し、県民一人ひとりが県の輝く未来を信じられるような「新しい茨城」づくりに挑戦していくため、茨城県総合計画(2018年度~2021年度)を策定。その基本理念は、2022年度から2025年度までの第2次茨城県総合計画に引き継がれ、「新しい豊かさ」「新しい安心安全」「新しい人財育成」「新しい夢・希望」という4つのチャレンジを通して、「活力があり、県民が日本一幸せな県」の実現に向けて挑戦を続けている。
この総合計画は、県政方針の基本となるものだが、施策展開を支える基盤の取り組みの1つとして、スマート自治体の実現に向けたDXや働き方改革を推進している。DXを進める組織体制の強化に、他の自治体よりもいち早く着手。まず2018年にRPA導入推進プロジェクトチームを発足させた。その後2021年に県庁DX推進プロジェクトチームに改組し、現在に至っている。
このプロジェクトチームは、行政経営課、総務課、管財課、税務課、情報システム課、会計管理課の6課に所属する課長補佐級以上の職員23名で構成。主に行政手続きや、業務のデジタル化、非接触・非対面による行政サービスの推進、AI・RPAなどのデジタル技術の積極活用といった各種施策を通して、県民サービスの向上と茨城県の発展のために真に必要な業務に職員が注力できる環境を整備している。
RPA活用で「7.5万時間」減、現在は「内製化」推進
前出のように、茨城県におけるDX推進の大きな柱の1つがRPAの導入推進だ。こちらは2018年にRPAツールの「UiPath」を活用し、導入に向けた実証実験を実施しており、当時の県庁で最も先行したDX施策であったという。
2023年で本格導入から5年目を迎えたRPAプロジェクトだが、すでに累計で80業務にRPAを活用している。計画として毎年20業務ずつRPAの導入を増やしているため、2023年度は累計100業務への導入を目指す意向だ。
その効果もすぐに表れ、同庁の働き方改革に大きく貢献。たとえば、2019年度~2022年度の4年間に開発した80業務では、年間約7.5万時間の削減効果が得られたという。
ただし、RPA自体は専門業者が開発するため、どうしても開発コストがかさんでしまうという課題があった。そこで全庁にわたって頻繁に使うような業務、たとえば財務会計や勤怠管理、旅費申請などのシステムで使える業務を中心にRPAの導入を進めてきた。
「個別の課での固有業務はコストの回収が難しいため、後回しになりがちでした。そこで2021年度から、庁内でRPAの内製化に取り組んでいます。RPAの開発を希望する職員には専門業者による3日間の研修を受けてもらい、その後に職員自らRPAを開発していただいています。これにより、開発コストが抑えられ、スピード感を持って対応できるようになってきています」と語るのは、RPAを担当する総務部 行政経営課の村田 太郎氏だ。
これまで委託開発したRPAは55業務あり、内製開発したRPAも25業務ある。今後は委託開発を減らし、内製化の割合を増やしていく方針だ。なお、2023年度の開発計画は、委託が3業務、内製が17業務で、内製化に向けた研修の受講者数は2021年度からの累計で40名となっている。
「RPAだけでなく業務改善のプロジェクトに共通しますが、業務のデジタル化を推進する際には、業務の中にどのような工程があり、どの工程においてデジタルを活用すれば効率化につながるのか? という課題を把握することが重要になります。その課題解決のためにどんなツールを使えば良いのか、業務プロセスの見直しも含めて検討するという流れで業務の効率化を進めています」(村田氏)。
そして、もう1つのDX推進の柱なのが電子契約サービスの導入開始だ。現在は土木・建設・工事関係の業務で多く使われており、行政側、民間側双方で大きなメリットを創出しているという。
【次ページ】都道府県“初導入”を実現、「立会人型電子契約」とは
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