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多くの地方自治体が人口減少・少子高齢化といった厳しい現実と戦っている。東北地方で仙台に次いで第2位の経済規模を誇る福島県郡山市もその1つだ。同市では、待ち受ける働き手不足社会に備えるために、20年以上にわたって行政機関のデジタル改革に取り組んできた。その取り組みが今、少しずつ成果を出し始めている。長年にわたって同市のデジタル化施策に携わってきたキーパーソンに話を聞いた。
仙台に次ぐ東北を代表する拠点都市・郡山市
福島県の中央に位置し、同県を代表する商工業都市である郡山市は、東北地方では宮城県仙台市に次いで第2位の経済規模を持つ拠点都市である。
2022年4月、郡山市は同市におけるDX推進計画として、2022年度からの4カ年を計画期間とした「DX郡山推進計画」を策定し、戦略的な「アクションプラン」の策定・実行を進めている。
そのほか、2023年6月には日本マイクロソフトが中小企業などへのDX導入を支援する拠点を同市に開設したほか、2023年7月にはDXに取り組みたい中小企業・個人事業者を対象に専門家らが支援する「こおりやまDXプラットフォーム」への参加者の募集が開始されるなど、地域の企業のDX推進やDX人材育成も含めた取り組みを進めている。
「DX郡山推進計画」の狙いとは? 根本的な背景に少子高齢化
「DX郡山推進計画」は、2022年6月に日本政府の「デジタル田園都市国家構想」の基本方針が定められたことを受け、2023年3月に改定されたものだが、郡山市のデジタル化の取り組みは20年以上も前にさかのぼる。
1992年に郵政省(現・総務省)が提唱した地域情報化政策「テレトピア構想」のモデル都市に指定されて以降、2003年から2017年の間に第5次計画で進められた「郡山市高度情報化計画」を経て、2018年から2021年まで「郡山市デジタル市役所推進計画」を実施してきた。
さらに、市役所の中でデジタル化計画を推進する部署も変遷を遂げている。現計画は2021年に設置されたDX戦略課がその役割を担っているが、それ以前の部署名は「情報管理課」「情報政策課」「ソーシャルメディア推進課」と、時代と計画名とともに変更してきた。
郡山市は、具体的にどのような取り組みを進め、どのような成果を挙げているのだろうか。「郡山市高度情報化計画」の時期から長年にわたって同市のデジタル化に携わってきた、郡山市の政策開発部 DX戦略課 課長である二瓶浩之氏に話を聞いた。
DX郡山推進計画は、「ミッション」「ビジョン」「バリュー」の3体系に分かれている。
現在、スマートフォンは社会全体の約9割が利用する情報端末機であり、いわば共通のプラットフォームであることから、ミッションとして「誰もがデジタルの恩恵を受ける『こおりやま』の実現~てのひらの上のデジタル市役所~」を掲げている。
その下に位置するビジョンは「市民サービスの向上」「行政事務の効率化」「生活の質の向上」の3つが柱となっている。また、それぞれのビジョンの達成に向けた施策によって、施策実施のための共通の価値観(バリュー)を実現するという構成だ。
この「DX郡山推進計画」の核心にある大きな目的は、「少子高齢化対策」であると二瓶氏は明かす。
「郡山市役所の各課がそれぞれの専門性を生かして少子高齢化対策を進めています。私が所属するDX戦略課では、目の前に迫る、働き手不足の社会に備えるために、DXの観点から何ができるか、どう関われるかを常に考えて活動しています」(二瓶氏)
郡山市の新生児出生数は約10年間2000人台で推移していたが、2022年にはついに2000人を切った。将来的な働き手の不足を補うために、職員が注力すべき業務以外はなるべくデジタル技術の活用を目指しているという。二瓶氏は、同計画の推進は郡山市の中でもかなりのウエイトを占めていると明かす。
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