- 会員限定
- 2023/11/29 掲載
総務省に聞く、自治体DXは「本当に進んだ」のか?現在の課題やガバメントクラウド進捗
デジタル田園都市国家構想で押さえたい「3つ」のポイント
──岸田政権が掲げている「デジタル田園都市国家構想」はどのような概念なのか、そして同構想についてどのように捉えていらっしゃるかを教えてください。大野博堂氏(以下、大野氏):内閣官房で公表しているデジタル田園都市国家構想の定義は「高齢化や過疎化などの社会課題に直面する地方にこそ新たなデジタル技術の活用ニーズがあることに鑑み、デジタル技術の活用によって、地域の個性を生かしながら地方を活性化し、持続可能な経済社会を実現するもの」とされています。その上で以下の要件が3点ほど示されています。
- (1)地域の「暮らしや社会」「教育や研究開発」「産業や経済」をデジタル基盤の力により変革する
- (2)「大都市の利便性」と「地域の豊かさ」を融合した「デジタル田園都市」を構築する
- (3)「心豊かなくらし(ウェルビーイング)と「持続可能な環境・社会・経済」を実現する
国は、高齢化・過疎化に直面する地方にこそ、デジタルで解決可能な課題があると考えており、従来の自治体職員による現場力や地域コミュニケーションによる改革では限界が見えてきたと捉えています。そのため、デジタル技術を導入することで、社会課題の解決への活路を見出そうとしている、というのが「デジタル田園都市国家構想」が必要とされる背景にあると思います。
とはいえ、私の率直な感想としては、スマートシティや都市OSなど、類似するキーワードが多々あるため、それぞれのキーワードの本来の意味が自治体や地域事業者に伝わり切っていないように感じています。
現在、総務省も課題感を持ち、セミナーなどを通じて、こういったキーワードが本来意味するところと、補助金の具体的な要件などについて理解や意識の浸透に取り組んでいます。
また、人口ビジョンを踏まえた「地方版総合戦略」を自治体が数年おきに策定してきましたが、今般、デジタル田園都市国家構想を念頭に対処方針を打ち出すことが策定の要件に求められるようになりました。これは各自治体にとって非常にインパクトがあることで、今後は自治体のデジタル化について一気に意識啓発が進むと見ています。
デジタル田園都市国家構想と「地方創生」の関係とは
──総務省としてはデジタル田園都市国家構想をどう捉え、どう関わっているのかを教えてください。君塚明宏氏(以下、君塚氏):デジタル田園都市国家構想は、本質的には「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を抜本改訂するストーリーから来ているものです。同戦略は地方創生の文脈として続いており、総務省ではローカルスタートアップを全国で底上げする案件をつくったり、地域おこし協力隊に地方活性化を担ってもらっていました。そこにデジタルの力を活用して継承・発展させていくという考えのもとデジタル田園都市国家構想総合戦略が策定されたのです。
ですから、根底にある「仕事をつくる」「人の流れをつくる」という点は変わっていません。全国どこでも利便性を確保したり、自治体職員の業務を効率化したり、そこにデジタルの力が加わって、地方における社会課題の解決につなげていけるという文脈が入ってきたと受け止めています。
また、デジタル田園都市国家構想の推進においては、マイナンバーカードが普及してきたことも大きいと感じています。同構想の実現には、デジタルで本人確認を行う認証の仕組みが必要です。カード認証の環境が整い始めたことが、デジタル田園都市国家構想で全自治体がデジタルを生かした課題解決に踏み出す足掛かりとなったと考えています。
総務省の役割は、これらを実現する基盤づくりを整備することになります。たとえばネット環境を整え、光ファイバーの敷設やデータセンターの整備、ローカル5Gなどの新規格の研究などを進めることなどがベースになっています。
またそれ以外にも、デジタル人材の確保・育成や、地域おこし協力隊などの外部移住者と地域を結びつけるために、テレワークなどのデジタルツールを活用する取り組みなどの話も出てきています。 【次ページ】コロナ禍で自治体DXは本当に進んだのか?
関連コンテンツ
PR
PR
PR