- 2025/04/11 掲載
焦点:米経済、相互関税停止でもリスク変わらず FRBは警戒
米国の輸入の大半を占める中国、メキシコ、カナダへの大幅関税は維持されている。また、市民、投資家、FRBはいずれもあと3カ月間、関税を巡る議論の着地点が分からない不透明な状態に置かれる。
世界的に株価が乱高下し、米国債と米社債の利回りは上昇したが、FRB幹部らは、金融市場は円滑に機能し続けていると話している。
カンザスシティー地区連銀のシュミッド総裁は10日、「この混乱サイクルの中、われわれ中央銀行には流動性を注視する義務がある」とした上で、「市場は過去数週間の乱高下にうまく順応しているようだ。必要ならわれわれが動く」と語った。
トランプ氏の方針急転換により、FRB幹部の経済・物価認識は変わっていない。
シュミッド総裁は「インフレの上振れリスクが著しく高まると同時に、雇用と成長見通しの下振れリスクが上昇したようだ」と述べ、「物価上昇圧力が再燃しそうな以上、物価に関するFRBへの信任維持を脅かすような、いかなるリスクも冒したくない」と明言した。
ダラス地区連銀のローガン総裁も同様に「われわれの二重の責務(物価安定と雇用最大化)に基づく目標を持続的に達成するため、関税絡みの物価上昇が、より粘着的なインフレに発展しないようにすることが重要になる」との考えを示した。
シカゴ地区連銀のグールスビー総裁は、トランプ政権の関税政策によって物価安定と雇用最大化という二重目標を目指すFRBはジレンマに陥りかねないため、「中銀がどう対応すべきかについて、お決まりの脚本はない」と吐露した。
通常の状況であれば、中銀はインフレ率が上がれば金融引き締めを、失業が増えれば金融緩和を行う。しかしFRBは今後、一方の目標を犠牲にして、より重要だと考えるもう一方の目標達成を目指さざるを得なくなるかもしれない。
相互関税の停止により、金融市場が突然平常に戻ったわけでもない。
9、10日に実施された10年物および30年物の米国再入札は無難な結果となったものの、利回りはじりじりと上昇。一部のアナリストはこれを、米国の経済成長と米経済の「例外主義」に対する不信感拡大の兆しだとみている。米社債の発行は極端に減っており、停止してしまう恐れもある。
企業の借り入れコスト上昇と社債発行の減少は、今後の設備投資減少につながりかねない上、弱小企業が借り換えに苦心するようなら、市場でストレスが高まる恐れがある。
セントルイス地区連銀のムサレム総裁は今週、「私は金融環境、資金調達環境に大いに注目している。これらは相当タイト化している。この状況が続けば成長の逆風になりかねない」と警告を発した。
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