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  • 2023/12/13 掲載

なぜ“AI活用”が進まない? 生成AIブームの裏で悶絶してる「地方自治体の切実事情」

連載:地方自治体のリアル~理想と現実を考える~

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ChatGPTを始めとした生成AIは世界的なブームとも言える状況となった。市場競争を勝ち抜くために世界中の企業が積極的なAI活用に取り組む一方、市場競争とは無縁と思える日本の地方自治体においても、今やAI活用は重要な課題となっている。事実、「AI導入済み」の自治体はわずか5年で大きく数を伸ばした。だがその実態は、DX全般と同様に、「取り組みが進んでいる」とは言い難い状況だ。それはなぜなのか。そのいくつかの理由について、自治体の実情とともに考えてみる。
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全国の自治体でAI導入が大きく進んでいるようにみえるが、その内実を見ると…
(出典:総務省、後ほど詳しく解説します)

栃木県・相模原市・宮崎県都城市の「生成AI活用」先進事例

生成AIで1分にまとめた動画
 全国の地方自治体ではどれぐらいAIの活用が進んでおり、またAI活用においてどのような課題を感じているのかを考えるに当たり、まずは、AI活用に積極的な先進自治体のケースを見てみよう。ChatGPTなどの生成AIにおいては、今まさに世界中の企業がビジネスへの利活用に注力しているが、ここに来て自治体においても導入事例は増えてきている。

 たとえば栃木県では、職員が業務でChatGPTを利用できる環境を構築し、2023年9月8日より本格的な運用を開始した。同県では今後、情報漏えいや著作権等の侵害などに注意を払いつつ、業務への積極的な生成系AIの活用を進めることで、県民サービスの質のさらなる向上を目指すとしている。

 また相模原市では2023年10月、全国の自治体で初めて、国産生成AIの共同検証を、開発元であるNECとともに開始すると発表した。同市では、6月よりChatGPTを一部の業務で活用する実証実験を実施。職員へのアンケートでは「活用できる」との回答が82%にも達していた一方、個人情報の漏えいリスクの不安や、回答の具体性を向上させるためには行政文書といった市の独自情報の活用が必要という声も寄せられていたという。

 そこで、日本語に特化した仕組みや専門用語への対応等による回答精度の向上や、個人情報・機密情報などの情報漏えい対策といった観点から、国産生成AIの活用に踏み出したのである。今後同市では、自治体行政分野に特化した生成AIの実現可能性の検証や、自治体に適した安全で利便性の高い生成AI利用環境の構築に向けた検討を進めていく。

 また、同市の担当者も、「どのような自治体関連の文章を学習させると効果が高いのか、これから試行錯誤が必要だろう。情報の機密性に十分に留意しながら、検証を行っていきたい」とコメントしている。

 さらに、宮崎県都城市では、ChatGPTをLGWAN(行政機関専用のネットワーク)環境で活用できるシステム「自治体AI zevo」を民間企業と共同開発し、運用している。10月4日からは、全国の自治体に先駆けて、自治体AI zevoの新機能である「自治体独自AI」の実証実験を開始した

 この機能は、自治体ごとに独自の情報をChatGPTと連携するサーバに登録することができるというもの。これにより、各自治体の登録情報を踏まえた回答を生成する独自のAIとして、ChatGPTを活用することができるようになる。そして自治体において特に重要な点なのが、登録情報はCatGPT本体には学習されないため、外部に登録情報が出ていくことはないということだ。

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自治体独自AIの利用イメージ
(出典:宮崎県都城市 リリース

 同市では、さまざまな仕組みやシステム等を運用しており、膨大なマニュアル等が存在しているが、そうしたマニュアル等を順次このAIに登録することで、職員向けの統合FAQを構築し、業務効率化を図っていくとしている。

大注目は「埼玉県戸田市」

 こうした事例の中でも、生成AIの活用を検討している自治体にとって大いに参考となりそうなのが、埼玉県戸田市が作成・公表している「自治体におけるChatGPT等の生成AI活用ガイド」だ。このガイドには、自然言語型の生成AIであるChatGPTなどを自治体の業務に活用するための方法などがまとめられている。

 同市では、自治体の業務における生成AIの活用方法を検討するとともに、リスク・危険性を把握し、安全に利用する方法を検証することで、自治体における業務改革の促進に寄与することを目的として「ChatGPTに関する調査研究事業」を実施している。同調査研究事業の成果は他の行政機関においても応用可能な知見となることが期待されるため、今回のガイドとしてまとめられた。

 同ガイドは、ChatGPTをはじめとした生成AIの活用に取り組みたいと考えている自治体の職員を主な対象としている。本編と事例・資料編の2部構成となっており、本編では自治体がChatGPT等の生成AIを活用する際に必要となる情報がまとめられている。また、事例・資料編は、調査研究会で使用した資料やハッカソンの成果発表資料をまとめた内容となっている。

 これまで挙げたのは、日本国内47都道府県と1718の市町村の中でもAI活用の最先端を走る自治体である。では、他の多くの自治体はどのような状況にあるのだろうか。ここでは、総務省が実施した「地方自治体におけるAI・RPAの実証実験・導入状況等調査」をひも解いてみたい。

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次のページ以降では、自治体におけるAIの導入状況を見つつ、その内実や課題に迫る
【次ページ】AI導入済みは「5年で8倍」、だがその内実は…
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