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- 2023/08/01 掲載
アプリ開発者も不満爆発の「アップル税」、“お布施で稼いで急成長”はもう限界か?
連載:米国の動向から読み解くビジネス羅針盤
驚異の売上29%増を支える「3つのポイント」
アップルのアプリ経済圏が世界で急拡大を続けている。同社が市場調査専門家であるジュリエット・カミナード氏とジョナサン・ボーク氏に委託して実施し、5月下旬に発表したApp Store経済圏に関する年次報告書によると、App Storeエコシステムで創出されるゲームやコンテンツ配信、配車、料理宅配、アプリ内広告などの売上が2022年に全世界で合計1.1兆ドル(約156兆円)に達した(図1)。これは2021年の8,680億ドル(約123兆円)から29%もの伸びであり、2020年の6,430億ドル(約90兆円)、2019年の5,190億ドル(約72兆円)から驚異的な右肩上がりを続けている。パンデミック明けによる配車や旅行の回復に加え、ソーシャルメディアの広告が伸びた。
2008年に世界初のアプリストアとしてオープンしたApp Storeの15年の歴史を振り返ると、当初3200に過ぎなかったiOSゲームのタイトル数が2022年には22万に、350しかなかったビジネス系アプリが現在では19万に上るなど、その成長ぶりには目を見張るものがある(図2)。
高度成長を続けるアップルのアプリ経済圏を支えるのは、(1)競合のアンドロイドには見られない場合もある魅力的で高機能なアプリやサービスの存在、(2)危険なアプリや疑わしいサービスを許さない安心安全な「閉ざされた園」の厳格管理、(3)より裕福な「アップル信者」の消費者による気前の良さだ。ユーザーの信頼感が競合のアンドロイドよりも高いことが強みだと言える。
アナリストらはアップル経済圏がさらに拡大することを予測するが、本当にこの高成長は持続するのだろうか。そうした予想を立てる上で重要な要素だと思われるのが、多くのユーザーの信頼感の基礎である「閉ざされたエコシステム」をアップルが守れるか否かだ。
特に懸念されるのは、アプリを通したデジタル商品とサービスの売上から15~30%の「アップル税」と呼ばれる手数料を受け取っていることだ。報告書では「全体の売り上げの90%以上はアップルに手数料が支払われていない」と説明し、アプリ開発者らへの「貢献と共栄」を強調しているが、規制当局や政治家からはこの手数料が問題視されている。そして、エコシステムのセキュリティ管理が「反トラスト的慣行」として変更を迫られる可能性があり、それがブランドの安心感と高級感を失うことも懸念される。
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