0
会員になると、いいね!でマイページに保存できます。
日本市場を2019年に撤退した米国発のカジュアルブランド、フォーエバー21とアメリカンイーグル・アウトフィッターズ。くしくも時を同じくして日本市場に戻ってくる。しかし両社の経営状況は正反対で、フォーエバー21が低迷中なのに対し、アメリカンイーグルは好調だ。まったく異なる状況の中で日本に再進出するわけだが、実は今回の日本での戦略も真逆の姿勢を見せている。本稿では両社を評価・分析しつつ、日本再進出の成否を占う。
フォーエバー21:業績“低迷”中に3度目の日本進出
フォーエバー21は1984年に、韓国移民であるドン・チャン氏およびジン・スク・チャン夫妻がロサンゼルスで創業。2000年代にはファストファッションの流行の波に乗り、世界進出を果たした。日本では、2000年に三愛グループと提携して展開するも失敗。2009年に再進出し、「使い捨て感覚だがトレンディー」という路線が若年層に支持を集めるも、使い捨て感覚という品質面や日米でのサイズ差などの問題で顧客の心は次第に離れていった。
さらに世界的なサステナビリティ意識の高まりもあって、全体の業績は低迷。2019年には米国本社が米連邦破産法11条(日本の民事再生に相当)の適用を申請し、日本など海外市場からも撤退した。2020年、米ブランド管理会社オーセンティック・ブランズ・グループ(ABG)に買収されたことで、再建の道を歩み始めている。
こうした中今回、「3度目の正直」として日本へ再進出する。店舗中心の展開で失敗した前回の轍(てつ)を踏まぬよう、利益率の高いECを販売全体の6割とする計画を定めてマーケティングを行う。そのため、日本のカジュアル衣料企業であるアダストリア傘下のGate Winとライセンス契約を締結した。
まずは2023年2月から、アダストリアの自社ECサイト「ドットエスティ(.st)」で先行販売をスタート。4月下旬には、三井ショッピングパークららぽーと門真で1号店を開業し、店舗販売も開始する。
注目されるのが、商品構成だ。ABG側が提示するデザインのガイドラインに則り、日本で開発されたオリジナル企画を8割、米国企画を2割でスタートする。平均商品単価も4,000円と、以前の倍以上、ユニクロより少し高い単価にするという。この現地市場に合わせたローカライゼーション路線が受け入れられるかが、成否を占う鍵となろう。
アメリカンイーグル:業績“好調”の中での日本再進出
一方、アメリカンイーグルは破産したフォーエバー21とは異なり、米本社の業績は好調に推移。「豊かな自己表現で個性を引き立たせる」というテーマのカジュアルファッションが、主に10~20代から高い支持を得てきた。
米調査企業パイパーサンドラーの調査によると、15~25歳の年齢層においては、「ジーンズNo.1」の評価を得ており、同年齢層の女性が好みとするアパレルブランドで第2位、男性においても第3位である。特に、2014年に立ち上げたボディーポジティブ(外見や体型の多様性を肯定的に評価する)志向の下着ブランド「aerie(エアリー)」が好調だ。
日本では2010年に青山商事と住友物産の合弁会社がフランチャイズ権を獲得し、日本市場に進出。しかし「ユニクロ」という巨人との勝負に品質や価格で負け、2019年には合弁を解散して撤退した。
今回の再進出では、2022年10月に東京の池袋と渋谷で実店舗をオープン。特に渋谷の店舗は「渋谷フラッグシップストア」として、米本社直営の旗艦店と位置付ける。
品ぞろえはフォーエバー21のような大規模なローカライゼーションを行わないものの、日本人の好みや体形により一層留意するほか、日本市場向け限定デニムコレクション「AE77」を展開する。デニムは税込2万~2万5,000円程度と高価格帯に設定して収益増を狙う。
渋谷店にはLEDを組み込んだインフィニティミラーを設置し、セルフィーが撮れる「映え」コーナーを設けた。これにより、来店客が旗艦店の情報をSNSで発信してくれることを期待している。
なお、日本版公式ECは2021年7月にすでに再開しているが、ECと店舗の販売比率の目標は公表されていない。
日本再進出が話題を呼ぶフォーエバー21とアメリカンイーグル。それぞれの路線には特徴があり、今後の展開が興味深い。しかしどちらの日本事業とも、米本国でのマーケティングや人気、業績に左右されることは言うまでもない。ともに「米国発」のイメージがウリであるからだ。では、両社の米国におけるパフォーマンスはどのようなものだろうか。
【次ページ】フォーエバー21 vs アメリカンイーグル、日本事業はどちらに軍配?
関連タグ