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- 2022/12/06 掲載
SHEINやアマゾンもフル活用の「ポップアップストア」、景気低迷でも店舗“爆増”の謎
連載:米国の動向から読み解くビジネス羅針盤
ポップアップストア爆誕、その背景とは
米小売業界において、ポップアップストアが大手企業に採用されるようになったのは1990年代後半だ。「突然現れて、突然消える」ポップアップストアがファッションの都である南カリフォルニアで流行し、やがて世界に広まった。流行した背景の1つに広告戦略の変化がある。1990年代後半の当時は、ハイウェイ沿いの看板広告やテレビCMが効果を上げ、現在のように広告が「邪魔もの」「嫌われもの」になっていなかった。しかし、インターネットの普及に伴い、従来型の広告は影響力を失い始め、大手ブランドは消費者に訴求する新たな方法を模索した。その1つの手段がポップアップストアだったわけだ。
近年ではポップアップストアに求める狙いにも変化が見られ、従来のようなブランドの浸透や新商品のプロモーションだけでなく、ポップアップストアを顧客データの収集ツールとして展開する傾向が顕著となっている。
これらの先駆けとなったのが、アパレル大手の米ギャップによる2009年の事例である。バスの内装を簡易ポップアップストアに仕立てて、その改造バスを全米に送り出した。1960年代のレトロなファッションをそろえ、若年層に圧倒的な支持を得たことで、ブランド再生と新規顧客開拓に成功している。
またアマゾンも、自社デバイスや売れ筋商品を展示する60店舗以上のポップアップストアや、「出張販売」を行うAmazon Treasureトラックを全米各地で運営。オンラインでは得られない実店舗ならではのデータを、プライム会員(有料会員)向けのマーケティングに活用していた。しかしこれらの役割を終えたとして、2022年までにいずれも廃止されている。
SHEINやネットフリックスら出店、日米の動向は?
このようにポップアップストアは先述の顧客データ収集といった狙いから、多くの企業によって採用され始めた。企業成長に奏功した成功事例も増えており、たとえばSHEINはポップアップストアを活用して急成長を遂げることのできた1社と言えるだろう。同社は自社のEC専門ブランドを肌で感じてもらおうと、2019年6月にアジア系人口の多いサンフランシスコで3日間限定のポップアップストアを開いた。サマーコレクションが披露され、訪問客は普段ネット上でしか見られない商品の試着もでき、好評であったという。
SHEIN側としては非ECの売れ筋や顧客層のデータを蓄積できた上、来店者によるSNSでの発信や口コミの効果もあったのか、同社の最大市場となった米国での売上は右肩上がりで増加している。パンデミック中も人気歌手のケイティ・ペリーや人気ラッパーのリル・ナズ・Xをブランド大使に起用するなどして、2021年には全世界の売上が少なくとも160億ドル(約2兆3,402億円)、全米でも有数のEC業者に上り詰めた。
また、会員数の純減といった成長の頭打ちが懸念されるネットフリックスも、2022年10月にロサンゼルスで、ストリーミング作品のグッズを販売する約920平方メートルの大型ポップアップストアをオープンした。韓国発ドラマ「イカゲーム」の大型ヨンヒ人形や米国発ドラマ「ブリジャートン家」の関連グッズを販売し、多数の来訪者を集めたという。
このポップアップストアがユニークな点は、「ネットフリックス Hub」のプロモーションを兼ねていることだ。このネットフリックス Hubは、小売世界最大手である米ウォルマートと連携して2021年10月に開設したオンラインストア。好評につき、近い将来に2400の実店舗にも販売スペースを設ける計画だ。
ウォルマートの集客装置として機能する一方、上記のようなネットフリックスグッズや、ネットフリックスサブスク・ギフトカードなどを販売し、本業の動画ストリーミングの成長鈍化を補う役割も果たしている。
日本においても、ポップアップストアが続々とオープンしている。SHEINは日本市場の拡大を図ろうと、2022年10月に大阪・心斎橋でポップアップストアをオープン。そのほか、米ラグジュアリーブランドのティファニーも同年11月に東京・表参道で出店した。
この店舗ではカフェを併設したり、先行販売の商品や日本限定の商品を用意したりするなど、ポップアップストアとしての特別感がより際立つように演出している。
【次ページ】ポップアップストア“爆増”の時は「景気後退」の時と言えるワケ
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