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2021年1月に、DX推進部を発足させたライオン。DX推進部の立ち上げ初期段階から、フリーランスのデータサイエンティスト梁木(はりき)俊冴氏がジョインしている。大手企業では特に、セキュリティや守秘義務などの面でフリーランスはまだまだ敬遠されがちだ。その中で、どのような経緯でフリーランス人材の活用に至ったのか。同社DX推進部長 黒川博史氏と梁木氏に、大企業がフリーランス人材と組むメリットなどについて、お互いの視点から話してもらった。
執筆:フリーライター 山岸裕一、編集:編集部 渡邉聡一郎
執筆:フリーライター 山岸裕一、編集:編集部 渡邉聡一郎
決め手は知識や技術力よりも、「コミュニケーション力」
前編では、ライオンの中でのDX推進部の位置づけと、DX推進部長に就任した黒川氏の展望などを聞いた。同社のDX推進部はライオン全社を横ぐしでさし、基幹システムの刷新や商品開発におけるAI活用など、ライオンのデジタル化と新規事業の創出に貢献している。
ライオンの未来を担うこの重要な部署において、フリーランス人材である梁木氏は、初期メンバーとして部署の立ち上げから参画している。スタートアップにフリーランスがジョインすることは珍しくないが、規制も多い大企業の中で、黒川氏は一体どのようにこのフリーランス人材が活躍する土壌を作っていったのか。
同氏は梁木氏を招くにあたり「どうしても一緒に仕事がしたかったので、さまざまな課題をクリアしながら参画してもらいました」と振り返る。
「2017年、とある展示会で初めて知り合った当時の梁木君はまだ学生でしたが、こんな優秀な若い人材が日本にいたのか、と驚きました。当時の彼は学生インターンとしてデータ分析の会社にジョインしていました。大学院でデータサイエンスを専門に学んでおり、知識も豊富。会話を重ねる中で、人間的にも本当に信頼できる人だと感じました」
一方で、梁木氏を誘った一番の決め手は、実は知識や技術力はもちろんのこと、実は「コミュニケーション力」だったという。
「課題感を伝えるとピンポイントですぐに答えてくれる。そんな人はなかなかいません。加えて、梁木君なら、当社のメンバーの中でディスカッションしながら、自然に溶け込んで働いてもらえるイメージが持てたのです。ダイバーシティの観点でも、社内に新しい風を吹かせてくれそうだと感じました。梁木君のスキルがピカイチだというのは、参画してもらった後に改めて確信したぐらいです」(黒川氏)
フリーランスの登用にこだわったというよりも、梁木氏と一緒に働きたいという想いがまずあったのだという。梁木氏が大学院を卒業して個人事業主になった後、(DX推進部の前身である)データサイエンス研究室の即戦力メンバーとして2019年に声をかけ、ジョインしてもらっている。
前例のない環境整備に四苦八苦、信頼関係でカバーした
梁木氏も、黒川氏には信頼を寄せる。梁木氏が社員にならずにフリーランスとして働いているのは「色々なことをやりたいから」だというが、それでもリソースの多くをライオンに注ぎ込んでいるのも、黒川氏の人柄によるところが大きいそうだ。
「組織に入った、という自覚はあまりありません。それよりも、黒川さんについてきた感覚。黒川さんなら、新しいことに取り組んでいった際に、大きな組織の中でも前進していくという確信が持てた。それで自分も参画を決めました」(梁木氏)
ただ、フリーランスと組んで迎え入れることは、ライオン社内で前例がなかった。「環境整備は大変でした」と笑いながら黒川氏は振り返る。
「当初は、上長や社内メンバーに相談をしても、反対されるというよりもルールがないために判断が付かない、といった反応でした。ただ、私の仕事は前例なき道を切り拓くことなので、さまざまな人を説得して回りました。最終的には『黒川がそこまで言うならやってごらん』と理解を得られたのです」(黒川氏)
とはいえ、梁木氏の入社後もセキュリティがかせとなり、タスクが進まないこともあったという。梁木氏は苦笑いしつつ、「このままでは仕事ができないと、私もかなりワガママを言いました(笑)。でも今は黒川さんが社内ツールへのアクセス権限など色々と整えてくれたおかげで、とてもスムーズにタスクを進められています」と話す。
「フリーランスだからここまで」のような線引きはしない。線引きした途端に壁ができてしまう、というのがその理由だ。「そのスタンスに対して梁木君も仕事で返そうと思ってくれている。そんな良好な関係、環境を作れなくなったらダメだと思っています」と黒川氏は話す。
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