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  • 2021/09/13 掲載

グリーンスローモビリティとは?「脱炭素」だけじゃない、全国に広がっている理由

連載:MaaS時代の明日の都市

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環境保護に加えて人口減少や高齢化などの対策として、国土交通省が2018年に提案した「グリーンスローモビリティ」が少しずつ全国に広まっている。グリーンスローモビリティ(グリスロ)とは、時速20km未満の電気自動車を活用した移動サービスのこと。世界的な潮流である「脱炭素社会」「EVシフト」「自動運転化」にも一役買う存在といえる。制度を解説するとともに、いくつかの現場を回り、導入にも関わった筆者が、グリーンスローモビリティの現状とこれからの課題に迫る。
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グリーンスローモビリティの事例の1つである、池袋駅周辺を回遊する「IKEBUS(イケバス)」。使用されている車両は、シンクトゥギャザーが開発した低速電動コミュニティバス「eCOM-10」
(写真:筆者撮影)


ゆっくり走ることのメリット

 「グリーンスローモビリティ」という言葉を初めて聞く人もいるだろう。これは2018年6月に国土交通省が提案したもので、従来は低速電動車などと呼ばれていた、最高速度が時速20km未満の電気自動車を使う公共交通のことだ。最近は「グリスロ」と略して呼ばれることが多いので、ここでもこの言葉を使わせていただく。国交省のオフィシャルサイトにも、導入と活用のための手引きなどが紹介されているので、そちらも見ていただくと理解しやすいと思っている。

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グリーンスローモビリティとは、時速20km未満で公道を走ることができる電動車を活用した移動サービス
(出典:国交省)

 このカテゴリーが生まれたきっかけの1つは、2015年の国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)で採択されたパリ協定だ。これを契機に世界各地で自動車の電動化の動きが起こっている。乗用車だけでなく、移動サービスについても電動車を活用して環境に優しい存在にしていくことが重要になる。


 さらに環境を考えれば、速度も控えめとするほうが望ましいし、スピードが遅ければ重大事故の発生を抑えられ、生活道路に乗り入れても住民に不安を抱かせないうえに、地域住民が運転手として活躍の場を得やすいというメリットもある。

 加えて、ゆっくり走るので周囲の景色を堪能できるし、車内や沿道とのコミュニケーションが弾むので乗って楽しい。地域コミュニティの盛り上げにつながるので、運営する側にとってもありがたいはずだ。

 単なる「低速」ではなく、「時速20km未満」という具体的な数字を出しているのは、道路運送車両の保安基準で、最高時速20km未満の車両は窓ガラスやシートベルトなどの装着が免除されるという緩和項目があるためだ。その分コストを抑えることができる。

 車両は運転手を含めて4人乗りの軽自動車、5~7人乗りの小型乗用車、10人乗り以上の普通乗用車がある。コミュニティを育むという観点から、前面以外窓がない車両が多い。高齢者の利用が多く想定されることから、低床設計などにより、乗り降りのしやすさに配慮していることもポイントだ。

 運用の方法としては、通常のバスやタクシーのように走らせるほか、自家用有償旅客運送制度の活用、無料での運行がある。自家用有償旅客運送とは、バスやタクシーのような緑ナンバーの営業用車ではなく、白ナンバーの自家用車を用い、利用者から運賃を取って輸送するもので、市町村やNPOの運営、福祉目的あるいは交通空白地での運用に限るなど、いくつかの条件がある。

原点となった2つの事例、地方の挑戦が全国に発展

 グリスロには、ルーツと呼べる事例が2つある。1つは石川県、もう1つは群馬県と、いずれも地方が出発点になっている。

 石川県では輪島市の輪島商工会議所が、ゴルフ場などで使用しているヤマハ発動機の電動カートに目をつけ、ナンバー登録に成功すると、2014年から「WA-MO(ワーモ)」の名で地域輸送や観光輸送に活用していた。

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輪島市を走る「WA-MO」
(写真:筆者撮影)

 群馬県では桐生市に本社を置くシンクトゥギャザーが8輪の低速電動コミュニティバスを開発し、2013年から同市や富山県黒部市の宇奈月温泉で走らせていた。

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シンクトゥギャザーが開発した「eCOM-4」
(写真:筆者撮影)

 つまりグリスロとは、国交省がゼロから考え出したカテゴリーではなく、地方における先駆的な挑戦に国交省が注目し、全国に向けて提案したものである。日本のモビリティ革命の1つが地方から生まれたことに注目していただきたい。

【次ページ】実証実験後に住民の7割が導入希望、福山市では有償事業化
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