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スマホにはSiriやGoogleアシスタント、アマゾンのスマートスピーカーにはAlexa、WindowsにはCortanaといったように、「AIアシスタント」はあらゆるところで導入されており、音声で簡単な作業を機械に依頼するというのは、すでに当たり前のことになりました。そのほかにも、LINEやTwitter上で簡単な会話ができるチャットボットも普及し、誰でも簡単にコミュニケーションが取れるAIが作れるようになっています。今回は、対話を可能にするAIの仕組みについて簡単に解説していきます。
「ルールベース方式」とは
アシスタントAIやチャットボットに採用されている手法には、「機械学習の方式」と「ルールベースの方式」などがあります。
このうち、一般的なのがルールベースの方式です。これは、昔ながらの手法の延長線上にあるもので、「Aと言われたらBと返しなさい」「Cと尋ねられたらDと答えなさい」といったように、事前に決められたパターンにしたがって会話をするものです。
基本原理自体は60年以上前から存在しており、古くはElizaやParryと呼ばれる原始的なチャットボットから始まりました。日本ではこうしたチャットボットを知性があるように見えて知性のないことを揶揄するニュアンスで「人工無能」と呼ぶこともあります。
原始的な方式ではありますが、ツールの発達によって「簡単に会話パターンを作れるようになったこと」やビッグデータの登場によって「例外的なパターンを検索によって補えるようになったこと」で、実用的なレベルに達しました。
高度なもので言えばIBMのAIである「Watson」などが良い例でしょう。基本原理はシンプルでもより複雑なパターンに対応し、膨大なデータベースを参照できるという点で、従来のプログラムとは実用性の面で大きな違いが生まれます。
ただ、それ以上にチャットボットに大きな影響を与えたのが音声認識の発達です。これまでは、チャット画面を開いてキーボードを叩くことでコンピューターに必要な命令を出していました。それが音声入力に対応できるようになったため、声が届く範囲に端末があれば、指示を実行できるようになったのです。
料理を作りながら、ベッドに寝転がりながら、身支度を整えながら、機械に指示を与えたり、情報を得たりすることができるようになりました。
これがチャットボットの実用面において大きな影響を与えます。音声認識によって、チャットボットはただのオモチャという段階から実用的なアシスタントツールへと進化しました。
「機械学習方式」とは
とはいえ、事前に決められたパターンに沿って応答するだけの原始的な方式による会話は、「コミュニケーション」とは呼べません。音声認識の登場以外で近年チャットボットが注目されるようになった理由は機械学習を応用した統計ベースの会話手法です。
ディープラーニングをはじめとする機械学習は人間からあらゆることを学びます。それは会話パターンも同様です。AIはSNS・映画・ドラマ・小説・議事録をはじめとする、あらゆる会話データを参考に「人間はAという言葉に対してBと反応する」といった会話パターンを学んでいきます。
これによって人間がパターンを設定しなくとも、統計的に「自然な会話の流れ」を見つけ出し、そのパターンに応じた応答をするようになります。日本語では「りんな」、英語では「Tay」というチャットボットがマイクロソフトによって開発されました。
これらの機械学習型のチャットボットは実際の会話を通して「会話パターンを教える」ことが可能であるため、会話を通して新しい会話パターンを増やしていくことができるという特徴を持ちます。そのため、新しいトピックに対しても上手に返答したり、最初はぎこちないながらも学習を経て徐々に自然な会話ができるようになっていきます。
しかし、差別や偏見を含むような不適切な会話パターンを学ぶことも可能なため、開発側は「どういうことを学ばせるか」という点に留意する必要があります。
【次ページ】チャットボットがアシスタントAIになるまで
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