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- 2021/01/21 掲載
再び緊急事態宣言、2度目の現金給付は本当にないのか?どうなる政府の財政出動
政府による財政支援を求める声が高まっている
政府は2020年12月、追加経済対策を実施するため3度目となる補正予算案を閣議決定した。一般会計の総額は19.2兆円で、1次補正(25.7兆円)、2次補正(31.9兆円)に次ぐ規模となっており、2020年度予算の総額は175兆円に達する。財源のほとんどは国債増発なので、2020年度末における国債発行残高は1,290兆円を超える見込みとなっており、とうとう1,300兆円台が視野に入った。政府はかねてから2025年度における基礎的財政収支(プライマリー・バランス)の黒字化を公約として掲げてきた。この公約が実現できないことは以前からほぼ確定的だったが、コロナ危機に伴う支出増大でほぼ100%達成は不可能となった。
今回の緊急事態宣言は、休業要請対象が事実上、飲食店に限定されており、前回と比較すると緩やかな内容にとどまっている。それでも宣言が出た影響は大きく、今後、消費が低迷するのは確実だろう。こうした状況を受けてツイッターでは「#二回目の現金一律給付を求めます」がトレンド入りするなど、政府による支援強化を求める声が高まっている。
財政支出に否定的な声も
一方で、日本の財政支出が急激に膨張していることから、これ以上の支援については否定的な声も聞かれる。特に政府内部では慎重論が根強く、財政の責任者である麻生太郎財務相は1月19日、定額給付金の追加支給について「やるつもりはありません」と発言。生活困窮世帯に限定した給付についても「考えにくいでしょうね」と一蹴している。財政の基本として、過度な政府債務を抑制するのは当然のことだが、大災害や戦争、深刻な感染症など、経済に対する極めて大きなショックが発生する状況においては、躊躇せず大規模な財政出動を決断すべきであり、国債というのはこうした目的のために存在している。逆に言えば、平時において、景気を良くしたいからという理由だけでむやみに発行すべきものではない。
長期的な経済成長の原動力は、資本ストックの増加や全要素生産性の上昇(つまりイノベーション)など、供給側の要因が大きい。つまり本気で経済成長を実現したいのであれば、需要サイドではなく供給サイドに働きかける必要があり、政府が需要を作り出すだけでは持続的な成長は実現できない。
これは筆者独自の見解ではなく、経済・財政における一般常識と言って良いだろう。
通常は、その年に徴収する税金のみで財政支出を賄うのが原理原則(単年度主義)であり、それが難しい時に初めて国債発行という手段が用いられる。ドイツは財政健全化を進め、国債発行額をゼロにしたが、今回のコロナ危機では躊躇せずに国債を再発行し、コロナ対策に大盤振る舞いした。これが本来の財政のあり方であり、この基本ルールが徹底されていれば、非常時に思い切った支出を行っても財政が極度に悪化することはない。
【次ページ】経済・財政の原理原則を重視すべき理由とは
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