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- 2019/10/30 掲載
GDPの成長鈍化はインターネットのせい?米FRB議長が経済指標に問題提起のワケ
無償サービスがGDPの足を引っ張っている?
インターネットによって無料化が進み、廃れつつあるビジネスは枚挙にいとまがない。電子メールは郵便の利益幅を大きく減少させ、インターネットニュースの出現で特に米国では大手新聞社も倒産に追い込まれている。音楽や映画のストリーミングサービスによりCDの売り上げは落ち、映画館の集客数も減った。その他さまざまな形でインターネットは現存するビジネスにとって脅威となっている。米FRBのパウエル議長は、米国の経済が長期間にわたり順調な成長を続けている中で、それに伴うGDPや生産性の上昇が見られないという「現代経済の謎」に言及し、「データこそが問題」という可能性を指摘した。
GDPというのは実際に売買されたモノやサービスの総額を指す。実質無償で提供されるインターネットサービスがこれに含まれないために、見た目のGDP成長が鈍っているように感じられる。パウエル議長が提起したのは、「この誤差を埋める方法はあるのか」という問いだ。
50ドルもらえれば「Facebookなし」生活でも良い
パウエル議長はスピーチの中で、マサチューセッツ工科大学教授 エリック・ブリンジョルフソン氏らの論文にも触れた。この論文は「Using massive online choice experiments to measure changes in well-being」と題されたもので「GDPは経済指標ではあるが、人々の生活の質の向上を測定するものではない」ということを議論している。そこで論文ではメジャーなデジタルサービスを金額に換算することで、GDPでは見えない人々の利益を計算している。論文はまず、米国人が2018年に平均で週に22.5時間をオンラインで過ごしていると指摘。FacebookとInstagramについては、アカウントを持つ人は平均で1日50分利用しているという。
研究では人々に対し、「Facebookを使用し続けるか、あるいは金銭を支払われることでFacebookを諦めるか」と問いかけ、統計を取る。その結果、Facebookを1か月諦めるために人々が望む支払額は40から50ドルだったという。当然のことながら、Facebookに費やす時間が多く、フレンドも多い人の方がFacebookにより高額の価値を見出している。
興味深いのは、YouTubeとInstagramを利用する人々は、利用していない人に比べてFacebookの価値を低く評価する傾向があることだという。
同様の調査は欧州でも行われ、WhatsApp、Facebook、携帯でのマップ機能について、1カ月これらのサービスを諦めるために求める金額はそれぞれ536、97、59ユーロだったという。興味深いのはWhatsAppの評価が非常に高いことだ。逆に評価が低かったのはSnapchat、Instagram、LinkedInで、Skype、Twitterはほぼ無価値という評価だった。
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