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- 2025/01/20 掲載
山口FGが挑む「融資抜本改革」、クラウドで事務作業を4~9割削減できたワケ
預金為替業務でDXを先行
山口FGは2022年度からの中期経営計画(中経)で、社のパーパス(存在意義)として「地域の豊かな未来を共創する」を掲げています。社員自らが付加価値を創出するべく、事務効率の向上や「情報武装」のためのIT戦略を定めてきました。銀行の役割には預けられた資金の管理や送金の仲介役を行う預金為替業務と、資金を貸し付ける融資渉外業務があります。山口FGではこのうち預金為替業務について、単純作業の電子化や集中化に取り組んできたのです。
融資渉外業務に関して2023年にはクラウドによる「銀行業務統合プラットフォームサービス」として顧客の住宅ローンの申し込みから審査、契約までをWeb上で完結できるサービスを構築すると発表。
案件の発掘から条件交渉、稟議申請、そして実行までいくつかの工程がありますが、従来はそれぞれが別システムで動いているため、データが分断され、システム間の連携作業に時間を取られるという課題を解決するとしていました。
いかにして一気通貫できるシステムを構築し、さまざまな部署が横断的かつ複雑に絡み合う工程を効率化していくかという問題は山口FGに限らず、多くの金融機関に共通の悩みといえるでしょう。
「今まで言えなかったけど欲しかった機能」が実装できたワケ
「抜本的な融資業務変革」のためのクラウド型システム構築はどのように進められたのでしょうか。「まずは社員体験を変えて、さらに顧客体験を変える。その掛け合わせで、競争優位性が生まれるのではないか」という考えの下、システム構築に着手してきました。
営業戦略部副部長の木本 智二郎氏は、「住宅ローンは事業者から書類をもらい、自社の申込システムに手入力して、審査に回しますが、結果が出ると、書類にいったん落として、融資を稟議する別のシステムに移し替える必要がありました。平均20種類ぐらいの書類を移し替えるのも手作業だったのです」と苦労を明かします。
事業者の申込時点からWebで操作できるクラウドシステムがあると知り、「行員の事務作業を減らし、お客さまと話し合う時間も作れる」と、プラットフォームの導入を決めました。
山口FGは次の5年後を見定めたアップデートをくり返すクラウドに魅力を感じたのが、採用に至った理由であるといいます。オンプレミスで要件を積み上げて改修をスタートしたシステムが、5年後に完成しても、その時にはさらにテクノロジーが進化していることは確実であるためです。
システムの入れ替えには、経営層の理解が欠かせません。DX戦略部主任調査役の栗原智史氏は、「約20年投資してきた融資システムを『使わない』と選択するには、相当の覚悟と根性が必要」と説明。「役員層が本気になれば、銀行の基幹業務である融資のシステムを抜本的に入れ替えることもできるのだ」と驚いたといいます。
「システムの入れ替えは『ハードウエアの更改が来るから、何とかしないといけない』と、本部が無理やり企画しているイメージ」だったと栗原氏。しかし、今回のクラウド型統合融資プラットフォームの導入では「『今まで言えなかったけど欲しかった機能』が盛り込まれ、現場の人ほど喜んでもらえた」(栗原氏)とのこと。
最終的には今回の導入により住宅ローンに関する事務作業が山口FGでは4割、営業店の事務作業を9割削減したとしました。 【次ページ】若手が活躍できる環境をどのように作り上げた?
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