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中東の産油国カタールが、石油輸出国機構(OPEC)からの脱退を決めた。アラブの産油国がOPECから撤退するのは初めてのことであり、OPECの求心力低下は避けられそうにない。日本などエネルギーを輸入する先進国にとってはある意味でチャンスとなるが、同時に中東情勢の不安定化というリスクも抱える。
かつては欧米の石油メジャーが市場を支配していた
カタールは対イラン政策をめぐってサウジアラビアと政治的に対立し、両国は2017年6月、国交を断絶するという事態になった。その後も関係は修復されず、カタールはOPECを脱退する方針を表明。強固な結束力を見せてきたOPECは大きな転換点を迎えることになった。
これまでOPECは世界の石油市場に対して絶大な影響力を行使してきた。OPECは1960年に設立された団体だが、それ以前の石油市場は、米欧を中心とする石油メジャー(国際石油資本)と呼ばれる企業が支配していた。中東の産油国に価格交渉力はなく、石油メジャーに安く原油を供給するしかなかった。
こうした状況を打破するため、中東の産油国が中心となって設立したのがOPECである。当初は、イラン、イラク、クウェート、サウジアラビア、ベネズエラの5カ国だったが、加盟する産油国が増え、現在では15カ国がメンバーとなっている。
OPECの力を世界にまざまざと見せつけたのは、1970年代に発生したオイルショックである。
OPEC参加国は一斉に原油価格の引き上げを実施。石油を大量に消費する先進国を大混乱に陥れた。特に日本人の狼狽ぶりは尋常ではなく「トイレットペーパーがなくなる」といって、買い物客が殺到し、店頭からほとんどのトイレットペーパーが消えるという異常事態になった。
その後、先進国はOPECとの対話を重視するようになり、原油価格は安定したが、価格の主導権は石油メジャーからOPECへとシフトした。
米国がサウジを抜き原油産出量でトップに
ところがここ数年、OPECの影響力が徐々に低下したことで、OPECの価格戦略も変化している。最大の理由は中東以外の産油国が原油市場で台頭してきたことである。
2017年における全世界の1日あたり原油産出量は9265万バレルとなっており、このうちOPEC加盟国は3944万バレルを生産している。全世界の生産量に占めるOPECのシェアは42.6%だが、かつてOPECは50%以上のシェアを持っていた時代もあった。
OPECのシェアが低下したのは、中東以外の原油産出量が増加したからであり、特に顕著となっているのがロシアと米国である。
ロシアは近年、石油開発に力を入れており、過去20年で原油の産出量は2倍近くに増加した。現在では世界で第3位の生産量を誇るまでになっている。だが何と言ってもOPECにとって大打撃となったのは、米国のシェールガス開発だろう。
米国でシェールガスの開発が進んだことで、ロシアと同様、米国も原油の産出量が急増。2014年にはこれまでトップだったサウジアラビアを抜いて、原油生産で世界1位に躍り出た。超大国である米国が原油生産でもトップに立ったことで、OPECの影響力低下は必至の状況となった。
OPECは中東の産油国を中心に構成されているが、OPEC内部におけるサウジアラビアの産出量は突出しており、同国は事実上、OPECの盟主として振る舞ってきた。カタールは原油生産量ではサウジアラビアの6分の1しかないため、OPEC内部での発言力は低いままであった。
【次ページ】なぜ中東では小国に過ぎないカタールが、強気でサウジと対峙できるのか?
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