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高齢化が著しく労働力不足が懸念されている日本の農業には今後、農業×ITであるアグリテック(アグテック)の導入が必至となるだろう。AI、IoT、ロボティクスなどの最先端テクノロジーを農業に応用し農業の効率化を図る。本稿では、数あるアグリテック企業の中から、J-Startup選定企業およびデロイト トーマツ イノベーションサミット参加企業などをもとに注目すべきスタートアップを8社ピックアップし、その事業内容や創業者の経歴などとともに紹介する。
Claro Energy Private Limited:低コストで地球にやさしい灌漑ソリューション
太陽光発電駆動のポンプを使用する農業用灌漑(かんがい)ソリューションを開発・提供している企業だ。創業者のKartik Wahi氏は大学院を卒業し起業アイデアを探している際に母国インドの農業に着目した。インドでは人口の6割が農村部に住んでおり農業が主要産業となっている。灌漑農業の普及が進んでいるが、太陽光発電駆動のポンプを使った灌漑ソリューションを提供するプレーヤーが不在だった。そこで、太陽光発電駆動の灌漑ソリューションを使用するClaro Energyを設立。
Claro Energyは太陽光発電駆動のポンプなのでディーゼル燃料費は不要だ。農家の経済的負担を軽減する。さらに汚染物質や二酸化炭素の排出量を低く抑えることにもなる。農家は灌漑ソリューションを搭載した車をスマホで簡単に呼ぶことができ、スマホ上で支払いすることも可能である。
http://claroenergy.in/
DropChain Pte.Ltd.:ブロックチェーンによりサプライチェーンを透明化
ブロックチェーンを活用して飲食料品のサプライチェーンを透明化するソリューションを提供している企業。創業者のBilly Chan氏はカナダ出身。マイクロソフトをはじめIT企業でソフトウェアエンジニアとして勤務。その後、自ら飲料を配達するスタートアップも立ち上げた。2010年に中国に旅行に行った際に、自らが口にする食べ物が本物なのかどうか信用できなかった。同時にこれがビジネスチャンスでもあると気づいた。
従来、品物は工場から出荷された後、複数のディストリビューターを経由して販売店にたどり着く。この物流工程において品物が偽物とすり替えられるリスクもある。しかも、問題が起きても全ての物流工程をさかのぼって確認することは非常に困難だ。
そこで品物に関わっている事業者、品物の価格、日付、位置情報、品質などサプライチェーンの管理に必要な情報を全てブロックチェーンに登録。これによって不正を防ぎ、問題のあった時には物流工程をさかのぼって問題が起きた地点を確認できるようにする。
http://www.dropchainproject.com/
Farmship Inc.:日本やインドネシアで植物工場運営
植物工場運営に取り組んでいる企業。創業者の北島 正裕氏と安田 瑞希氏は共に農家生まれで明治大学農学部で知り合った。卒業後、北島氏は大学院でバイオテクノロジーを勉強した後に金融業界へ、安田氏は米国で農業経営を学んだ後、公認会計士として働いた。その後北島氏は植物工場長としての経験を経て、植物工場における生産販売一体型の事業運営に可能性を感じ、安田氏と共にファームシップを創業。LEDを使用した水耕栽培による植物工場を運営している。
植物工場によるメリットは大きく2つあり、第一に、露地農業よりも圧倒的に土地生産性が高いことで、露地農業の60~70倍と言われている。植物工場においては多段式で促成栽培であるため少ない農地で大量生産が可能となる。第二に、安全かつ安定した植物生産が可能であることだ。栽培環境を制御できるため害虫や菌が入ってきにくいため、無農薬で安定した植物生産が可能となる。
同社は2018年6月には三菱ガス化学と合弁契約を結び植物工場で野菜の生産・販売事業を行う合弁会社MGCファーミックスを設立している。また、日本国内のみならずインドネシアにおいても植物工場の事業を開始している。
http://farmship.co.jp/
アグリホールディングス:日本食材のバリューチェーンを築く
日本の食材を海外に輸出するバリューチェーンを構築し、日本の農業の産業化を目指している企業。創業者の前田一成氏は一橋大学商学部在学中の2006年からアジアで急成長するベンチャー企業10社以上への投資、事業構築やアドバイザリーを行ってきた。その後、2010年より電通とクララオンラインの合弁会社、スポーツITソリューションの代表取締役を務めた。2011年からはクララオンラインの中国現地社長を務め2013年に日本に帰国。帰国後には日本の農業を産業化し活性化すべく2014年にアグリホールディングスを設立した。
同社は、農業の産業化の皮切りとして日本米の生産・流通・輸出、海外における物流網構築と店舗展開まで川上から川下を一気通貫するバリューチェーンを築く事業「SAMURICE」を展開。日本米のおにぎりと弁当を販売する店舗をシンガポールとニューヨークで展開している。さらに、弁当普及を研究する「BENTO LABO」を運営し、世界基準の弁当レシピの開発(アレルギー、宗教別対応等)、弁当の調理・保存方法の開発、弁当の新たな購買体験の開発(無人店舗・デリバリーなど)に取り組む。
これまでに小橋工業、ロート製薬、日本ユニシスなどの企業から1億円以上の資金調達を実施している。
http://agri-hd.com/
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