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  • 2019/01/04 掲載

なぜ“プ女子”が生まれるのか? プロレス人気にみる「ファンマーケティングの本質」(2/2)

DDTプロレスリング 高木三四郎氏に聞く

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企業とのコラボでは「品位」のラインを見失わないことが大事

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多面的に視聴率を持つ著名人・芸能人・タレントとのコラボは、露出戦略としても有効だ

 こうしたプロレスの“NGナシ”の自由は発想は、コンテンツプラットフォームとしても重宝する。

「認知を広げるという意味で、動画配信やAbemaTVなどのインターネットテレビとの相性は非常にいいですね。かつてのテレビが大衆メディアとして普及したのも、プロレスというコンテンツが果たした役割は大きく、格闘技エンターテインメントは大衆メディアとの相性がいいです」(高木氏)

 芸能事務所のオスカーと提携も行っている。露出ニーズのある芸能人やタレントと、定期的なコンテンツ調達が求められるプラットフォームをつなぐ意味で、プロレスが切り口の一つになっているのだ。

「剛力彩芽さんがプロレスデビューしたときは、東スポさんに誘われるままに応えたのですが、あとでオスカーさんにひどく怒られました(笑)。今では、そのマネージャーさんがDDT総選挙に出るほどの仲になっていますが」(高木氏)

 一方で、ファンベースを安定的に維持・拡大するには、他業界とのコラボレーションを継続していくことも求められる。

 コーエーテクモのゲームソフト『信長の野望』とのコラボでは、戦国武将の衣装のままで試合を行った。また、ドン・キホーテでは、コラボ商品として「DDTオフィシャルエナジードリンク」の公式飲料の物販も展開した。タレント・アーティストのコラボも実にさまざまだ。

「中でも印象的なのは映画コメンテーターのLiLiCo(リリコ)さん。彼女はかつてプロレスラーになりたかった、とおっしゃっていましたが、本気で取り組んでくれましたね」(高木氏)

 擬人化したモノと人が対決する、男性プロレスラーを女体化するといったマニアックな企画もある。「こんな組み合わせは考えたことなかった」というようなものが続々と登場するのは、ファンだけでなく関わる制作担当者たちにとっても、エキサイティングな体験だ。

 「プロレスラーの確定申告」という企画も多いに注目を集めた。確定申告に興味がないファンにも興味を持ってもらえるよう「凶器は経費で落ちるのか」などという質問を考えたりもした。

「この企画を報じた記事はYahoo!ニュースのトップに出ました。広告換算すると大変なことです。いかに面白がって取り上げてもらえるか、そこも大事です」(高木氏)

 真面目な話をふざけてするから、おもしろがって“野次馬やニワカ”が集まってくる。それが認知のキッカケであることに善し悪しはない。しかし、面白がっているからこそ、悪意があってはいけない。その品位のギリギリのラインを踏まえることも、コンテンツ企画のポイントになるだろう。

ファンマーケティングは、関わる人の「愛」「誠意」が問われる

 このように名だたる有名企業とのマッチングを実現してきたDDT。基本的に選手を支援するクライアント企業に対する消費者の認知度は友好的なものだ。しかし、やり方によっては大きなアンチを抱えてしまうリスクも考慮しなければならない。

「会場の中にブースを出展し、クリアファイルをプレゼントしてアンケートをとるという施策は高い評価を得ています。結婚相談所の事例では、アンケートに答えた方からその場で入会者が8名いました。また、保険会社の事例では入会50%を超えたケースや、3,000万円のマンションが半年で3軒売れた不動産の事例もあります」(高木氏)

 これだけの結果が出るのも、プロレスを応援している協賛企業のイメージを上げるためにできることや、プロレスに対してファンが期待していること、常に相手の課題を解決することを考え、ソリューションを提供しているからだ。なんとなく目立つことをやって満足、即効性で刈り取って満足、という利己的な発想だけではどこかで限界はくる。

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ツッコミたくなる「タグ」や情報量が多ければいいというわけでもない

「レスラーが真剣に闘っている姿は、勝っても負けても共感を呼びます。リングの上とは違う表情がみられるオフショットでは親しみやすさが出る。クライアントにとってもファンにとっても親近感のあることをやり続けるのが大事だと思います」(高木氏)

 SNSでの拡散数も、ファンが多いレスラーを起用すれば一気に上がる。だからこそ、アンチを生むような一方的なアピールや利己的な取り組みではなく、ファンも関係者もコンテンツとして楽しめるかどうかが重要なのだ。ファンマーケティングを長く続く文化にするためには、即効性を求めるだけでなく、コンテンツと同様、愛や誠意をもって「育てる」ことが求められるのだ。

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