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  • 2018/02/24 掲載

乗客数はピークの4割、地方バス「赤字路線の廃止届」は当然だ

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岡山県を中心にバス事業などを営む両備ホールディングスが、グループ2社の赤字31路線廃止を国土交通省中国運輸局に届け出た。格安運賃を掲げる他社が両備グループの黒字路線に参入するのを国交省が認めようとしていたことに抗議するためで、地域の公共交通維持へ議論の場を設けようとしない岡山市に対する不満もぶつけた形だ。島根県立大総合政策学部の西藤真一准教授(交通政策論)は「対立する利害を調整し、公共交通維持に向けて将来像を描くのが自治体の役割」と指摘するが、この役割が機能しているとはいいにくい。人口減少が進む中、地方路線を自由競争に任せて維持できるのだろうか。
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JR岡山駅前のバスターミナルに到着した岡電バス。両備グループは岡電バス、両備バスの計31路線廃止を届け出た
(写真:筆者撮影)

両備、岡電バスの31路線廃止、影響は岡山など4市に

 岡山市北区のJR岡山駅東口バスターミナル。両備グループの両備バス、岡電バスなど民間バス事業者の路線バスがひっきりなしにやってくる。行き先は岡山市内だけでなく、倉敷市など市外へ向かう路線も。到着したバスは乗客が乗り込むと、目的地に向かって次々に発車していた。

 岡山県南部はJR西日本の鉄道、岡山電気軌道の路面電車が走っているが、カバーしきれない地域の足は路線バスになる。中でも、岡山市は西日本有数の路線バス激戦地で、限られたパイを奪い合うように8社が運行している。

 そんな中、岡山市で一律100~200円の循環バスを運行する八晃運輸が、両備グループの基幹路線になる西大寺線への参入を決めた。運賃は両備グループより3割から5割ほど安く設定している。八晃運輸の新規参入は両備グループの廃止届が出た日に認可された。

 両備バスは3割の黒字路線で7割の赤字路線、岡電バスは4割の黒字路線で6割の赤字路線を支えてきた。ドル箱路線に格安路線が参入すると、経営に大きな影響を受け、赤字路線を維持できなくなるとしている。

 このため、両備ホールディングスは2017年6月、国交省に対し、八晃運輸の新規参入が地域公共交通維持に与える影響を指摘する文書を提出したが、受け入れられそうもないことから、赤字路線の廃止を届け出た。

 廃止されるのは両備グループ78路線のうち、両備バス18路線、岡電バス13路線。20路線は9月末、11路線は2018年3月末で廃止としている。運行区域は岡山市のほか、倉敷市、瀬戸内市、玉野市に及ぶ。岡山県県民生活交通課は「県民に対する影響が大きい。関係自治体と対応を協議したい」と戸惑いを隠さない。

規制緩和一辺倒の国交省と調整役果たさぬ岡山市に一石

 両備ホールディングスの小嶋光信会長はバスと路面電車で岡山県の公共交通を支えてきただけでなく、経営危機に陥った広島県東部の中国バスを再建、南海電鉄が廃止の意向を示していた和歌山県の貴志川線を受け継いで和歌山電鉄として再生している。いわば地方公共交通の再生請負人だ。

 そんな小嶋会長がなぜ、足元の岡山県で路線廃止を打ち上げたのか。その背景には2002年の道路運送法改正以来、規制緩和一辺倒の国交省の姿勢と、公共交通の将来像を描くための調整役を果たさない岡山市に対するいら立ちが見える。

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赤字路線廃止を発表する両備ホールディングスの小嶋光信会長。国土交通省の規制緩和や法定協議会を設置しない岡山市への不満が込められている
(写真:両備ホールディングス提供)

 道路運送法の改正では、供給輸送力が需要量に対して不均衡とならないよう調整する需要調整規則が廃止され、新規参入や路線開設が免許制から許可制となった。公共交通が自由競争の荒波に飲み込まれたわけで、両備ホールディングスは首都圏なら自由競争が利用者の利益につながるかもしれないが、地方では逆効果になるとみている。

 ただ、状況が変われば、廃止届を取り下げることも示唆した。小嶋会長は「新規参入の認可は地域公共交通破壊の前例になりかねない。これを阻止し、地域公共交通の実態を知ってもらうため、あえて路線廃止を届け出た」と真意を説明している。

【次ページ】姫路市や山形市で中心市街地の核店舗が消失
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