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人口減少社会の経済懸念に対しさまざまな施策が取り組まれる“地方創生”や“まちおこし”。自然、施設、文化行事など観光資産の活用はもとより、そこでしか得られない“個々の体験”にも注目が集まる。実際にはどういうものが求められているのか、生活者や来日旅行客の行動履歴データ分析から潜在ニーズを捉えようとする動きも出てきた。先日開催された体験型マーケティングにフォーカスをあてたカンファレンス「BACKSTAGE17」では、データビークル・西内 啓氏が登壇し、地方創生におけるデータマーケティングの現状や、エリアマーケティングを推進する「くまもとDMC」との取り組みを通じ、地方都市がもっと稼ぐために必要な具体策を語った。
人口減より案ずるは“現場の意思決定と実行力”
経済成長が見込めないのであれば、貧しさの中で慎ましやかに暮らすという選択もある──そんな声が有識者の中からも漏れ聞こえていることが少し残念だ、と冒頭で語った西内氏。少子高齢化や人口減少はたしかに進んでいる。しかし、一概に比較できるものではないが、国民一人あたりのGDPで見ると日本より人口が少なくても暮らしの豊かな国はある。“儲かるために何をするか”という考え方がもっとあってもいいのではないか。
西内氏の元にも、地方創生の戦略立案におけるマーケティングデータ分析の相談は増える一方だが、実際にヒアリングしてみると、プロジェクトがどういうゴールを描こうとしているのか、どういうデータが必要とされているのか、収集データを精査する以前の課題も多いという。スタッフだけでも自走できる体制作りのためには、マネジメントの抜本的な見直しが必要なケースもある。
「最も重要なのは、責任者の意思決定です。せっかくデータが取れているのに、上手く使えないのは、分析した情報が組織のどこかで止まってしまって、次のステップに進まないから。優良顧客のデータ、売れ筋の予測がついただけでは意味がないんです」(西内氏)
たとえば、観光に来てくれる人と来てくれない人の違いは何か、売れる産品とそうでない産品の違いはどこかを知りたいのなら、どういうデータを集めなくてはいけないのか。収集するデータによって何を目指すのかをハッキリさせないと、データ量ばかり闇雲に膨れ上がってしまう。
西内氏が提唱する“リサーチデザイン”においては「ゴール」を明確にする。どういった項目を、どうしたいのかという「アウトカム」を定義するのだ。出てきた結果に対して、何が要因でそうなっているのか、データより分析していくという。
「土地独自のカルチャーや背景を分からないまま、外部からコンサルを連れてきてデータを掘り下げたところで、望むような結果は生まれない。“仕事を増やされたくない”という現場の想いがあると、現実が進まないということも有り得ます」(西内氏)
データ分析の結果が出た時、ボスがGOサインを出したら、誰がそのデータを活かして実現化に動くのか。もっと言えばIT基幹システムは誰がどう管理しているのか、ベンダーの選定にまで西内氏の仕事は及ぶ。
一度始めたら現場は運用を続け、常に新しいサイクルで結果が求められる。そうなるとやはり「どうにかしたい」という根本的なところでの想いがあるかないか。データマーケティングのROIは、プロジェクトの“熱量”によって左右される部分も大きいようだ。
より「稼げる観光」を目指すくまもとDMCのデータサイエンス
日本で初めて地域銀行と自治体が出資し設立された「日本版DMO(Destination Management Organization=目的地型観光振興会社)」である、くまもとDMC。日本版DMOには一般社団法人が多い一方で、同社は「DMC(Destination Management Company)」つまり株式会社であることを強く意識した取り組みを行う。熊本県の出資比率は4%程度。より「稼げる観光」の実現に向け、県内の旅行消費額の増加を目指す方針を示している。
くまもとDMCはデータビークル社と、2016年末より“データサイエンス分野”での取り組みを進めている。道路地図やガイドブックの出版でお馴染みの昭文社「MAPPLE」が所持するMapple IDと経路検索「NAVITIME」の検索履歴データマイニングからは、どういう行動特性のある人が、どのエリアや商業施設に行きがちなのか、全体的な傾向を探る施策を行った。
また、POSデータベース「TRUE DATA」が所持するJANコードから、食品や日用雑貨などの商品データがわかる「eBASE」で売れ筋商品のスペックや特徴を調べ、ロングヒット商品、急上昇人気商品は、どういうところがヒットするポイントなのかも探った。
「履歴データから浮かび上がるというのはなかなか面白いもので、こういうのが好きな人は確かにこういう所へ行きそうだよね、とうなずくところも、意外性もあります。なぜ売れてるのか、原材料、栄養、成分、容器のデザイン、さまざまな切り口で分析していくとデータから見えてくるものは必ずある」(西内氏)
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