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- 2016/06/30 掲載
コマツ流「本気の」地方創生が、苦境の創業地を救う
世界2位が石川県小松市で6次産業推進
未利用間伐材を使い、バイオマス発電を導入
導入した設備はバイオマスボイラー4基、蒸気コンプレッサー、蒸気式発電機2基など。投資額は約4億円で、年間150万キロワット時の購買電力削減効果を持つ。
コマツと石川県、石川県森林組合連合会が2014年に結んだ包括連携協定の第1弾として取り組んだ。燃料の木質チップは地元のかが森林組合が年間7,000トンの未利用間伐材を供給している。調達する間伐材は小松、白山、能美の3市産に限り、発電量もそれでまかなえる規模に設定した。
これまで山林に放置されてきた間伐材をコマツが毎日、安定して使うことで、林業者に収入が入り、森林の保全につながる間伐も進む。間伐せずに山林が荒廃すれば、イノシシなど野生動物がえさを求めて里へ迷い込むが、それも防止できる。まさに一石二鳥、三鳥の効果があるわけだ。
ただ、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度による売電はしていない。負担を国民に押し付けたくないという思いを持つからだ。その代わりに、燃料コストの削減と無駄のないエネルギー利用に徹底して取り組んだ。
木質チップの加工機器は協力会社に開発してもらい、従来使用してきたドイツ製より約3割も安くした。製造業のノウハウを惜しみなくつぎ込み、積み込み作業や加工機器への投入作業でも無駄を徹底的に省いてコストを抑えた。
バイオマスボイラーの蒸気による発電だけだと、エネルギー効率は20~25%程度。そこで、熱交換器を利用して排出された蒸気を冷温水に変え、冷暖房に使った。これにより、エネルギー効率も約70%まで上がった。
ものづくりの視点から地元の農業も積極的に支援
農業に対しても積極的に支援している。TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の時代を迎え、農業も否応なく、世界との競争を強いられるようになった。高齢化も深刻さを増している。製造業の視点からものづくりの原点ともいえる農業をサポートし、社会貢献したいと考えたからだ。営農法人などと連携し、トマトハウスなどの温室でバイオマス発電や地下水熱空調を利用して通年栽培を実現させようと計画している。小松市では温室栽培を半年間しか実施しないケースが多いが、低コストの暖房器具を使って通年栽培し、収穫量を倍増させようというわけだ。
石川県農業試験場と共同で米の直播栽培も研究している。そのためには農地の均平度(平らに地ならしすること)を上げなければならない。そこで、コマツの世界最小のブルドーザーD21に情報通信機器を搭載し、デコボコがなくなるよう農地をならしていく。
均平度が上がれば、害虫や雑草が減り、苗立ちの減少も防げる。収穫量が上がるとともに、味も良くなるといわれている。さらにコスト削減にも大いに役立つ。
小松市やJA小松市とは食品加工面での取り組みもスタートさせた。小松市は大麦やトマトがたくさん採れ、それらをピューレ状にして病院や学校、介護施設の給食に使用している。しかし、その際に使う遠心分離機や加熱機は非常に高価なものだ。
このため、コマツの生産技術者OBが投資額6分の1で能力6倍の装置を作ろうと、知恵を貸している。加工コストを圧縮することで採算の合う産業に育てるのが狙いだ。
【次ページ】コマツの地方創生の狙いは何か
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