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- 2016/03/29 掲載
Anyca(エニカ)大見周平氏に聞く、クルマのC2Cシェアリングが若者にウケる理由
モバイルやインターネットの強みを自動車業界に活かす
大見氏:2014年の夏頃から全社的な目線で新しい投資領域を決めようという動きがありました。投資ポートフォリオを既存事業と中長期的な新規事業領域に分けて、そこに集中的に5~10年のスパンで投資をしていこうと決まり、その中で、自動車業界が良さそうだとなりました。
なぜ自動車かといいますと、まず単純に市場規模が非常に大きいというのが挙げられます。また、国内の自家用車の台数は6000万台。これに対して、日本のレンタカーの数は53万4000台で、そのうち家庭用のレンタカーは28万3000台(いずれも国土交通省調査)です。1%が登録するだけで、既存のレンタカー市場を上回る計算になります。その一方で、我々の独自調査によると、自家用車の稼働率は1年で約3%に過ぎません。
また、モバイルとモビリティは語源を同じにする言葉です。動体という意味では性質が似ていて、DeNAが強みを持つインターネットを取り入れていきやすいと考えました。それにDeNAは消費者向けのサービスで一定の知名度を持っていますので、その領域でビジネスをやりたいとも思っていました。
既存の自動車流通における透明性の低さ、非効率性みたいなものを感じるユーザーもいたので、当時、海外で始まっていた「シェアリングエコノミー」という、いままで活かしきれていないアセットを活用してくというビジネスモデルに高いポテンシャルを感じて「Anyca」を考えました。自動車というアセットがなくても始められるというのも、C2Cならではのポイントです。
個人的にも、手軽にいろいろなクルマ、しかもTPOに合わせて使い分けができるというのは、クルマ離れが嘆かれている今の若者感覚にもすごくフィットするだろうと思いましたし、都心における自動車の維持費の高さを考えると、マイカー世代として育ってきた30代~40代の方々にも使っていただけるだろうと感じたので、このタイミングがチャンスだろうと考えました。
エニカの本質は、トランスポーテーションサービスではなく「マッチング」
大見氏:C2Cサービスを始めるうえで、借り手が先か貸し手が先かという議論がありますが、確実に貸し手が先です。そこで、最初はクルマのコミュニティなどに入っていって、10人程度の小規模の説明会や飲み会を何度も開催し、とにかくフェースtoフェースでお会いする機会をたくさん作りました。
なるべくユニークなクルマを持たれているオーナーさんのいるコミュニティを重視しましたが、当然、そういう方たちは思い入れも強いので、一般的なクルマのオーナーさんと比較すると「シェアしてもいいよ」という割合はかなり少なくなります。
ただ、クルマが好きな方は目線が高く、たとえば若者のクルマ離れにも漠然とした危機感を持っていて、クルマの良さをもっと伝えたい、自分が知っているクルマの良さを共有できる機会をもっと持ちたいとも考えていらっしゃるようでした。
精魂込めて整備していても、独り占めしているだけでは「楽しさ」に限界がありますよね。それを共有したときの楽しさが想像できると、「じゃあ運転がうまい人に限ってだけど、シェアしてもいいよ」と言っていただけるのです。普遍的な人間の欲求に根ざしている気はしますね。
──その辺はサービスにも仕掛けが盛り込まれているのでしょうか? 具体的なサービスの利用方法について教えてください。
大見氏:Anycaでの取引方法の基本は、対面での受け渡しです。予約と連動して保険加入を検討できる仕組みにはなってはいますが、あとは基本的に個人の方同士のやり取りに委ねています。
たとえば、誰がいつから使い始めて、いつ使い終えたかという細かい情報は我々が厳密に把握する必要はないと考えています。
いま1000台以上のクルマが登録されていて、累積で2500回くらいカーシェアリングがなされています。ものによって異なりますが、1回あたりの利用料は数千円から高くても2万円はいかないぐらいです。ミニマムの利用時間は12時間。仮に返却時間が1時間遅れても、オーナーさんによっては全然気にせずに、追加料金もなしという方もいます。
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