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- 2015/07/15 掲載
Dropboxが3億人のユーザーを獲得、「フリーミアムモデル」が成立するための3つの共通点(2/2)
フリーミアムモデルに共通する3つの特徴
フリーミアムモデルはDropboxだけではなく、多くの企業やサービスで採用されているビジネスモデルです。Dropboxを含めたクラウドストレージサービスのうち、大半のサービスが基本サービスを無料にし、一部の有料会員からサービスの対価として利用料金を得ています。また、同じく追加の支払いによって付加的な体験ができるという意味では、LINEの有料スタンプやソーシャルゲームのアイテム課金についても、フリーミアム・モデルの一種と言えます。
また、日本経済新聞のデジタルコンテンツ「日経電子版」やニュースアプリの「NewsPicks」は、コンテンツに対してフリーミアムモデルを採用。無料記事の他に有料の雑誌・新聞記事を提供しています。
さらに、消費者からはお金をとらず、ビジネス側から収益を上げるビジネスモデルもフリーミアムの一種と解釈できるでしょう。例えば、クレジットカードのように販売店に対して手数料課金をしたり、GoogleやFacebookのように広告から収入を上げたりする方法があります。
このように、フリーミアムモデルはいくつかに分類でき、Dropboxが採用した「基本サービスを無料にした」フリーミアムはその一部であるともいえます。
これらのフリーミアムモデルが成立するビジネスには、3つの共通点があります。
1. 限界費用がほとんどゼロ
ソフトウェアやWebサービスは、使用するユーザーが一人増えても、それを提供するコストは増えません。例えば、LINEの有料スタンプの場合、スタンプを制作して公開する初期コストはかかるものの、ユーザーが何人そのスタンプを使用しても、実態はデータのコピーでしかないため、発生する追加コストはゼロです。そのため大多数の無料ユーザーがいても、少数の有料ユーザーから初期コストを補うだけの収益が得られれば、ビジネスは成立します。
2. 「ファン」が新たなユーザーを呼ぶ
たとえ無料であっても、いや無料だからこそ優れた製品を提供しなければなりません。なぜなら、粗悪な無料版を利用した後に、有料プランに変更するユーザーはいないからです。優れた無料版をユーザーに提供することで、ユーザーは製品を広める広告塔として機能してくれます。
フリーミアムモデルでは、大規模な広告を投入するよりも、口コミや紹介を用いて低予算で効率的にユーザー数を増やすことが重要です。Dropboxでは、新規ユーザーを一人招待するごとに500MBの追加容量を得ることができます。このように特典を与えることでDropboxは少ない予算で急成長を遂げることができたといえるでしょう。
3. 無料ユーザーの声を製品改善に活用
新規事業を成功させるためには、顧客からのフィードバックを極力速く集めて、製品のブラッシュアップをしなければなりません。フリーミアムモデルを採用することで、多くの無料ユーザーを抱えることで、多くの意見を集めて、製品の不具合や改善案を収集できることが可能になります。
実際に、当初Dropboxでは「何回でもファイルを元に戻せる機能」を提供していましたが、「容量を圧迫するだけで、あまり利用されていない」という状況を無料ユーザーからのフィードバックを得て、製品を改善することができました。
有料ユーザーをいかにして増やすか?フリーミアムはマネタイズに課題
一方で、フリーミアムモデルには、有料会員への転換率が低く、マネタイズが難しいという課題があります。消費者の立場で考えれば、無料でも十分使用に耐えうる製品であるのに、さらに有料サービスに申し込むには強い動機が必要になるからです。フリーミアムモデルによって順調にユーザー数を伸ばしてきたDropboxですが、実は有料会員の比率は約4%程度で、残りの約96%の無料会員を支えていると言われています。
そこで同社では、収益性を高めるために、ビジネス向けのサービスを拡充させていくと見られています。日本では2015年4月にセキュリティや管理者機能を追加したビジネス向けのプランを発表。ソフトバンクグループと提携し、中小企業を中心に5年間で100万ユーザーを獲得することが目標に掲げています。
加えて、オンラインクラウドストレージ市場には多くの競合製品が存在しています。たとえば、企業向けのデータ保存サービスは既にBoxが展開しており、世界20万社にサービスを提供しています。IDC調べではファイル共有・同期サービスのシェアは、Dropboxが27%、Microsoftが17%、Boxが14%となっています。Microsoftだけではなく、AppleのiCloud、GoogleのGoogle Driveも競争相手となるでしょう。
フリーミアムモデルの代表例であるDropboxがいかに競争を勝ち抜き、ユーザー数だけではなく、売り上げ・利益の面でも成長を続けられるかが注目されています。
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