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  • 2015/06/30 掲載

国内需要だけでは限界? M&Aのプロ三宅 卓氏が指南する「成功するアジアM&Aの法則」

日本M&Aセンター 三宅 卓氏

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アジアを抜きにして日本経済は考えられない――。多くの経済人は口を揃えて語る。過去、日本企業がアジアに進出する主な目的は、安価な労働力を手に入れるためだった。しかし、アジア諸国を取り巻く環境は大きく変化している。今では新たなビジネスの可能性を求めて、進出するケースが大半だ。その際に注目されているのが、M&Aによる現地の“足場固め”である。では、M&Aを活用してアジアに進出する際には、どのような点に留意すべきなのだろうか。日本M&Aセンターで代表取締役社長を務める三宅 卓氏がポイントを解説した。

国内需要に依存した成長戦略は終焉

 日本は2010年の1億2,806万人から人口が減少し続けており、2060年にはその67.7%にあたる8,674万人にまで減少すると予想されている。すでに就労人口は減少しはじめており、その影響はジワジワと表面化している。例えば、「ワタミグループ」は従業員不足が原因で、約60の飲食店舗を閉鎖し、規模縮小を余儀なくされた。

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日本M&Aセンター 代表取締役社長 三宅 卓氏
 中堅・中小企業のM&A(Mergers and Acquisition)を支援する日本M&Aセンターで代表取締役社長を務める三宅 卓氏は、「労働人口も購買人口も減少している日本は、もはや国内の需要だけでビジネスをするのは限界だ」と、警鐘を鳴らす。同氏は3月17日に開催された「アジア経営者ビジネスサミット2015」において、「友好的なM&Aを活用したアジア進出(移転・撤退)』をテーマに講演。企業経営の観点から、海外に目を向ける必要を説いた。

 冒頭、三宅氏は英国エコノミストの予測を紹介した。それによると、2050年における各地域の世界のGDPに占める割合は、日本が1.9%、北米が12.3%、アジア(現開発途上国)は48.1%になるという。

 「国内需要だけに依存した成長戦略を実現する時代は終焉した。今後は企業が国境を超え、お互いの強みと経営資源を補完しながら発展していく時代になる。そのような状況においてM&Aは、アジアでビジネスを展開する重要な手法となる」と三宅氏は指摘し、M&Aのメリットを以下のように説明する。

 「例えば、大阪の食品会社が、東北に進出する場合を考えてほしい。食文化も人との付き合い方も異なる東北で、いきなり大阪の商習慣を押しつけても成功しないだろう。新参者が信頼を得るのには、時間がかかる。コストや時間、(文化摩擦などの)安全性を考えれば、地元の食品問屋を買収したほうが商売は上手くいく。M&Aは『早い、安い、安全』の3つを網羅した経営手法だ」(三宅氏)

日本企業の現地法人を買収するか、現地企業を買収するか

 同氏は海外M&Aの方法として「日本企業の現地法人を買収する」と「ネイティブな現地企業を買収する」の2つがあるが、「前者のほうが件数も多く、成功している例が多い」と語る。その理由は、後継者がいない日本企業の急増だ。帝国データバンクの調査では、日本の中堅小規模企業の66%が、後継者不足に悩んでいることが明らかになっている。こうした企業の現地法人を買収するのが、安全性が高く、買収後のビジネスもスムーズに展開できるケースが多いという。

 一方、ネイティブな現地企業を買収するためには、買収対象企業の経営実態を把握し、問題点を確認する「DD(Due Diligence/精査・適正評価)」を詳細に行う必要がある。また、「PMI(Post Merger Integration/経営統合)」も高度な内容が要求される。文化や習慣の異なる企業と1つに融合し、相乗効果を上げることは、並大抵の労力ではない。その“苦労”を、三宅氏は次のように説明する。

 「例えば、財務保証書は日本企業と同じ視点で確認すると、その実態が把握できず、トラブルの種となる。また、新興国企業の決算書は粉飾が多い。裏金や不正(賄賂)があることも、考慮する必要がある。そうした事実を踏まえたうえで、日本のコンプライアンスと照らし合わせて折り合いを付けなくてはならない。もちろん、違法行為は一発でアウトだ。さらに、法人格の定義が日本と異なる場合もあり、買収しても会社登記ができない可能性もある。また、ようやく買収できたとしても、(現地企業の)優秀な人材が流出するリスクも考慮しなければならない」(三宅氏)

 実際、あるアパレル企業が現地の繊維専門企業を買収しようとしたところ、最終段階で白紙になったケースがあった。その理由は、同企業が使っていた染料が、日本の法律では禁止されている染料だったからだという。

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