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- 2011/11/14 掲載
日本M&Aセンター 分林保弘会長に聞く、中堅中小企業のM&A動向と成功法則
後継者不足と先行き不安で中堅中小企業のM&A急増
さらに深刻さを増す中堅中小企業の後継者問題
非常に深刻です。この会社を立ち上げた20年前、出生率は1.4人くらいでした。当時の日経新聞の一面に「あなたの会社の後継“社”を探します」というコピーで広告を打ったところ、1週間で400件もの電話が全国からかかってきました。当時から後継者問題に悩む経営者は多く、M&Aにも関心はあったものの、どこに相談していいかわからない経営者が多かったのです。現在出生率はさらに低下し、2社に1社は後継者がいないといわれています。
また、30年前は中堅中小企業の社長の平均年齢は約52歳でしたが、現在は約59歳です。後継者がいないため、いつまでもずるずる続けざるをえない状況なのです。今から10年後には、3社に2社は後継者がいない状態になるともいわれています。
──後継者問題以外で、中堅中小企業をM&Aに向かわせる要因はありますか。
先行き不安です。今後、日本の人口は減り続け、2050年には現在よりも3割近く減ると言われています。それだけ内需が減るということです。日本を代表するような内需型企業でさえ、いまや海外の売上が40数%に上るといわれています。今後、その数値はさらに上昇するでしょう。
最近は大企業のM&Aも活発化しています。キリンビールや東芝、武田薬品工業などは、海外企業の買収に積極的です。大企業は、将来の生き残りをかけてM&Aを実施し、集中化とグローバル化を進めているのです。
中堅中小企業も、こうした動きと無関係ではありません。大企業が海外に出て行くのに合わせて、下請けの中堅中小企業も一緒に出て行く構図は、もはや当たり前になっています。
──日本で産業の空洞化が起きているということでしょうか?
産業の空洞化という言い方には私は否定的です。高齢化に伴って、経営者だけでなく、日本の労働力も不足しており、それをそのまま空洞化と言い切るのは早計ではないでしょうか。中堅中小企業の後継者問題を見ていると、それが一層強く感じられます。
もともと企業の合従連衡は多様な業界で起きていることで、医薬品卸業界では、約40年前に400社ぐらいがひしめいていたものが、今ではほぼ4社に集約されました。しかし、ほぼどこもほとんど潰れることなく、4社のどこかのグループに加わっています。
日本の中堅中小企業に対するM&A意欲は今も旺盛で、今後も業界再編を行いながら、生き残っていく企業も多いのではないでしょうか。
【次ページ】M&A成功のポイントは?
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