- 2013/08/19 掲載
ソニー、個人情報を分離してクラウドに蓄積するシステム 電子お薬手帳サービスに活用
今回ソニーが新たに開発したシステムでは、個人情報とデータを分離し、データのみをクラウドに保存する。このため、仮にクラウド上のデータへの不正アクセスがあったとしても、個人情報が守られる構造を実現した。さらに、この仕組みを利用した最初のアプリケーションとして、電子お薬手帳を開発した。

そこで今回ソニーは、個人の調剤履歴の記録や管理向けに、FeliCaカードを利用した電子お薬手帳と、スマートフォン用アプリケーションを開発した。利用者は、FeliCaチップが埋め込まれたカードを薬局の端末にかざすだけで、調剤履歴の閲覧と調剤情報の記録を行うことができる。
さらにスマートフォン用アプリケーションをインストールすれば、モバイル端末からも情報閲覧できるほか、診察を受けた際の症状や、服薬後の副作用、アレルギーなどの記録も可能。 また、薬局は専用のソフトウェアをインストールしたパソコンおよびタブレット、並びにカードリーダーなどを用意することで、システムを構築できる。
このサービスでは、調剤履歴に加えて、利用者がスマートフォンで入力した症状、副作用、アレルギーなどに関する各種情報も薬局側で一元的に把握することができるため、薬剤師は利用者の状況をより効率よく的確に把握できるようになり、「リスクコミュニケーション」の促進にもつながるという。
ソニーでは、今回のサービスは、お薬手帳の単なる電子化の枠を超えて、薬剤師と利用者、また、利用者を取り巻く家族内でのコミュニケーションを充実させるソリューションとなると説明。将来的には、医師とのコミュニケーションをはじめ、高齢化社会における在宅医療や、お薬手帳に留まらない情報共有などのニーズに、このソリューションを活用することも可能にしていきたいという。

ソニーはこの新たなサービスの実証実験として、川崎市宮前区医師会および同市薬剤師会と協力して、五十嵐中特任助教(東京大学大学院薬学系研究科)監修の下、2011年11月より川崎市宮前区にある約20の薬局にシステムを提供していた。各薬局がこのシステムを用いたサービスを提供し、現在までに約1,000名の利用者に実際に利用されている。
この実証実験を通して利用者や薬局からいただいた各種のご要望や、それらを検討して蓄積した知見を活かし、2013年秋からは対象エリアを川崎市全域に拡大して、ソニー自ら試験サービスを展開していく。
今回ソニーが提案する電子お薬手帳サービスでは、氏名や生年月日等の個人情報を含まない形で調剤情報、副作用などの薬歴データをクラウドに蓄積することが可能となる。ソニーが新たに開発したシステムを用いたサービスでは、利用者の個人情報とデータを分離し、データのみをクラウド上のサーバに保存する。個人情報はクラウドには送信されず、利用者が所持するカード内に記録される。その上で、これらの情報を結びつけるための共通のIDを割り当てる。この仕組みにより、万一クラウド上のサーバへの不正アクセスがあった場合にも、個人情報とは結びつかずにすむという。

ソニーは、これら統計データを自治体に提供し、たとえばインフルエンザなどの感染症流行情報の発信を支援したり、また、統計データを製薬会社に提供し、服薬で生じる可能性のある有害事象の早期発見を支援するなど、利用者に有用な情報を還元する、社会に役立つ新しい情報活用の枠組みを提案していきたいとしている。

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