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- 2022/09/26 掲載
医療以外の労働者が1200万人も減少…2040年に迎える日本経済の“絶望的な”末路とは
連載:野口悠紀雄のデジタルイノベーションの本質
医療以外の就業者が「今の製造業」より多い1238万人減少
医療・福祉分野では、2040年に1070万人の就業者が必要になる。一方、確保できる人材は974万人にとどまり、96万人が不足する。9月16日の閣議に報告された厚生労働白書(令和4年版)が、このように指摘した。これは、日本の就業構造が、現在に比べて大きく変化することを意味する。「2040年を見据えた社会保障の将来見通し(議論の素材)-概要-」(内閣官房・内閣府・財務省・厚生労働省、2018年5月)によると、2040年時点の総就業者数は、5654万人と予測されている。医療・福祉が1070万人なので、それ以外の産業の就業者数は4584万人になる。
2021年の就業者数は6713万人で、うち医療・福祉の就業者数は891万人だ(上記白書による)。したがって、それ以外の産業の就業者は、5822万人だ。つまり、医療・福祉分野の総就業者数は2021年から2040年までの間に179万人増加するわけだ。
これに伴って、医療・福祉以外の分野の就業者数は1238万人減少する。これは、現在の製造業の総就業者数より多い。それを見ても、極めて大きな変化であることが分かる。
高齢者人口のピークは2042年
医療・福祉サービスに対する需要は、高齢者によるものが多い。特に介護はそうだ。だから、人口の高齢化が進み、高齢者の人口が増えれば、医療・福祉サービスへの需要は増える。医療・福祉分野で、2040年に膨大な就業人口が必要になるのは、増え続けていた高齢者人口がこの頃にピークを迎えるからだ。具体的には、次の通りだ。65歳以上人口数は、2020年においては3619万人である。それが、2040年には3921万人と、2020年の1.08倍になる(将来人口は国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口 2017年推計」より、出生中位、死亡中位ケースで算出)。65歳以上人口数は、その後も増え続けて2042年に3935万人となるが、ここがピークだ。これ以後は、2050年に3841万人、2060年に3540万人と減少を続ける。
医療・福祉分野での就業者数は、2021年から40年の間に1.20倍に増加する。これは、今見た高齢者数の増加率よりかなり高い。
中国や韓国も出生率が低く、しかも低下を続けている。したがって、いずれ日本と同じ問題に直面する可能性がある。しかし、2040年ごろに迎える日本の状態は、これまで世界のどの国も経験したことがないものだ。
だから、これが一体どのような問題を引き起こすのかについては、分からないところが多い。極端なことを言えば、こうした構造の経済がそもそも成り立つのかどうかさえ、定かでないところがある。
ここからは、この問題について検討することとしよう。
【次ページ】1人当たりGDPが減少せずとも「日本人が貧しくなる」ワケ
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